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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年神審第103号
件名

プレジャーボートやよい乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年6月29日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:やよい船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船底外板に亀裂、浸水

原因
気象・海象に対する配慮不十分

裁決主文

 本件乗揚は、圧流防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月1日14時00分
 兵庫県八木港港内

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートやよい
登録長 7.26メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 44キロワット

3 事実の経過
 やよいは、船体中央部に操舵室を備えたFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、いとこ1人を同乗させ、釣りの目的で、船首0.3メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成12年4月1日10時00分兵庫県姫路港網干区の係留地を発し、同港飾磨区などで釣りをしたのち、13時41分同県八木港港内の釣り場に向かった。
 13時58分A受審人は、姫路八木港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から109度(真方位、以下同じ。)180メートルに当たる、水深2メートルの目的地付近に到着し、風を船尾方から受けるよう、船首を付近の水上岩に向け000度とし、機関を停止回転まで下げ、クラッチを中立としたつもりで漂泊したのち左舷船尾に行き、2個装備していた錨のうち、重さ約10キログラムのステンレス製錨を投下し、合成繊維製で直径16ミリメートル、長さ約100メートルの錨索を、張力がかかれば伸出するよう甲板上にコイルしておき、操舵室に戻った。
 間もなく、A受審人は、周期的に何かが船底外板を打つ音を聞き、クラッチが後進側になっていたことから、プロペラに錨索が絡み錨が船底をたたいていると判断し、この錨索を取り外すこととしたが、絡んだ錨索を取り外せばすぐに航行できると思い、風下に水上岩の存在を知っていたのであるから、浅所に乗り揚げないよう、準備していた他の錨を投下するなど、圧流防止措置を十分にとることなく、機関を停止し、船尾に赴き錨索の取り外しを始めた。
 やよいは、A受審人が取り外しに専念し、折からの南風により前示の水上岩に向け圧流されていることに気付かず、14時00分西防波堤灯台から090度180メートルの地点において、000度に向首したまま、同岩付近の浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力4の南風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底外板に亀裂を生じて浸水したが、自然離礁し、来援した渡船により八木港に引き付けられ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、兵庫県八木港港内において、漂泊してプロペラに絡んだ錨索を取り外す際、圧流防止措置が不十分で、風下の浅所に向け圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県八木港港内において、漂泊してプロペラに絡んだ錨索を取り外す場合、風下に水上岩の存在を知っていたのであるから、浅所に乗り揚げないよう、準備していた他の錨を投下するなど、圧流防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、絡んだ錨索を取り外せばすぐに航行できると思い、圧流防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、風下の浅所に向け圧流されて同所に乗り揚げ、船底外板に亀裂を生じて浸水させるに至った。





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