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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年横審第9号
件名

プレジャーボートスーパームーン乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年6月22日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(半間俊士、長谷川峯清、小須田 敏)

理事官
酒井直樹

受審人
A 職名:スーパームーン船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
両舷のプロペラ軸等を曲損

原因
針路選定不適切

主文

 本件乗揚は、針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月23日07時25分
 東京湾海獺島東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートスーパームーン
総トン数 19トン
全長 17.37メートル
登録長 11.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 654キロワット

3 事実の経過
 スーパームーンは、2基2軸及び2枚舵を装備した最大搭載人員14人のFRP製プレジャーボートで、A受審人ほか1人が乗り組み、知人6人を乗せ、海水浴など海洋レジャーの目的で、船首尾とも1.22メートルの喫水をもって、平成12年7月23日06時30分京浜港横浜第1区内瑞穂橋北西端近くの係留地を発し、伊豆大島波浮港に向かった。
 ところで、A受審人は、プレジャーボートによる東京湾内及び浦賀水道の航行経験が豊富で、神奈川県久里浜湾沖合の海獺(あしか)島周辺に干出岩を含む暗礁が拡延していることを知っていた。
 発航後、A受審人は、フライングブリッジにある操縦席で見張りと操船にあたり、横浜ベイブリッジ下、南本牧運河を経て南下し、07時19分観音埼灯台から166度(真方位、以下同じ。)0.9海里の地点で、針路を三浦半島沿いに浦賀水道西側を南下する190度に定め、機関を全速力前進にかけ、19.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 A受審人は、定針後間もなく前路に多数の遊漁船を認め、この遊漁船群を避けて航行することとし、07時21分少し前観音埼灯台から176度1.4海里の地点で、針路を海獺島灯台と東方標識である笠島灯浮標との間に向首する201度に転じ、同遊漁船群の西側を、同じ速力で続航した。
 07時23分わずか前A受審人は、海獺島灯台から030度0.7海里の地点で、前示遊漁船群の西端に達し、笠島灯浮標の東方に向かう水域が安全に航行出来る状況となったが、同灯台と同灯浮標の間に暗礁があることを知っていたものの、前方を同灯台と同灯浮標の間に向けて航行する漁船がいたので、その後を航行すれば、その暗礁を避けることができるものと思い、同灯浮標の東側に針路を転じるなど、適切な針路の選定を行うことなく、同じ針路、速力のまま同漁船に後続して進行中、スーパームーンは、07時25分海獺島灯台から098度0.1海里の地点において、原針路、原速力のまま、折から水面下となっている干出岩に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮侯は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、両舷のプロペラ軸及び同プロペラ翼並びに右舷舵板にそれぞれ曲損を生じたが、巡視船の来援を得て離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、浦賀水道西側を南下する際、針路の選定が不適切で、海獺島灯台と笠島灯浮標との間の暗礁に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、浦賀水道西側を南下する際、前路に認めた遊漁船群を避けて、同遊漁船群の西側を航行するよう海獺島灯台と笠島灯浮標との間に向く針路とし、同遊漁船群の西端に達して同灯浮標の東方に向かう水域が安全に航行できる状況となった場合、海獺島周辺に干出岩など暗礁が存在することを知っていたのであるから、同暗礁に向首進行しないよう、同灯浮標の東側に針路を転じるなど、適切な針路の選定を行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、前方を同灯台と同灯浮標との間に向けて航行する漁船の後を航行すれば暗礁を避けることができるものと思い、適切な針路の選定を行わなかった職務上の過失により、海獺島東方の干出岩に向首進行して乗揚を招き、両舷のプロペラ軸及び同プロペラ翼並びに右舷舵板にそれぞれ曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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