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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第16号
件名

漁船第八忠吉丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年6月8日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(織戸孝治、安藤周二、工藤民雄)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:第八忠吉丸機関長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船首船底部損傷、推進器翼曲損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年11月5日05時30分
 北海道石狩湾

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八忠吉丸
総トン数 16トン
全長 19.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 573キロワット

3 事実の経過
 第八忠吉丸(以下「忠吉丸」という。)は、いか釣り漁業に従事するFRP製漁船で、船長B及びA受審人の2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成11年11月4日12時00分小樽港を発し、同港北西方40海里ばかりの漁場において、いか約2,600キログラムを漁獲したのち、翌5日02時ごろ帰航の途に就いた。
 ところで、忠吉丸は、同年7月20日から小樽港を基地とし、12時ごろ出港して夜間操業を行い翌日06時ごろ入港する操業形態をとっており、魚市場の定休日や荒天日を除き連日操業を行っていた。また、A受審人は、B船長の女婿(じょせい)で、操業計画の立案や操船指揮を行って実質的な船長兼漁労長の業務を執っており、船橋当直についても、遠距離航海時を除いてそのほとんどを自ら行っていたが、同船長から当直中に眠気を感じた場合には起こすよう指示を受けていた。
 A受審人は、漁場発進時から単独の船橋当直に就き、B船長を休息させ、GPSプロッターに入力した石狩湾高島岬北西方のほたてがいの養殖施設を目標にして、自動操舵装置により、機関を全速力前進にかけ、11.5ノットの対地速力で南東進した。
 04時30分A受審人は、日和山(ひよりやま)灯台から310度(真方位、以下同じ。)12.8海里の地点に達したころ連日の操業による疲労などから眠気を催したが、入港まであと少しだから眠気を我慢できると思い、B船長と船橋当直を交代するなど居眠り運航の防止措置をとることなく、05時10分同灯台から302度5.2海里の地点に達したとき、前示養殖施設と高島岬との間の水域を航行するつもりで、針路を自動操舵のまま同施設西方の海岸に向く138度に定め、舵輪後方の板に腰を掛けたまま続航しているうち居眠りに陥った。
 こうして忠吉丸は、居眠り運航となり、小樽港に向け転針がなされず、前示海岸に向首したまま進行し、05時30分日和山灯台から269度1.9海里の岩礁に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力3の南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 A受審人は、乗揚の衝撃により目が覚め、B船長とともに事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、船首船底部破損及び推進器翼曲損などを生じたが、自力離礁し目的港に向かったのち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、漁場から小樽港に向け帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、石狩湾高島岬西方海岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就き、漁場から小樽港に向け帰航中、連日の操業による疲労などから眠気を催した場合、居眠り運航になるおそれがあったから、休息中の船長と当直を交代するなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに同受審人は、入港まであと少しだから眠気を我慢できると思い、休息中の船長と当直を交代するなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、舵輪後方の板に腰を掛けたまま当直を続けているうち居眠りに陥り、居眠り運航となって、高島岬西方海岸に向首進行して乗揚を招き、船首船底部破損及び推進器翼曲損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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