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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第15号
件名

漁船第十八日吉丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年6月6日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(織戸孝治)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:第十八日吉丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板に破口、推進器翼に曲損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月12日04時45分
 北海道立待岬

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八日吉丸
総トン数 19トン
全長 19.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 253キロワット

3 事実の経過
 第十八日吉丸(以下「日吉丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾2.1メートルの喫水をもって、平成12年8月11日04時00分青森県八戸港を発し、同港北東方20海里ばかりの漁場に至って操業を繰り返し、真いか900キログラムを漁獲したのち、17時30分同漁場を発進し、水揚と乗組員の休養を兼ねて北海道函館港に向かった。
 ところで、A受審人は、同年3月山口県沖で操業開始以来、北上を続け、同8月6日からは八戸港を基地として連日昼いか漁に出漁しており、漁場への往復航の操船を自ら行い、漁場では休息をとらずに操業の指揮に当たることから、疲労が蓄積し、睡眠不足の状態になっていた。
 A受審人は、発進後、青森県尻屋埼から沿岸沿いに同県大間埼に至り、同埼沖から単独の船橋当直に就き、甲板員を休息させ、津軽海峡を横断し、函館半島大鼻岬に向けて航行した。
 翌12日04時18分半、A受審人は、渡島住吉港東防波堤灯台から147度(真方位、以下同じ。)4.0海里の地点に達したとき、前路に漁船群を視認したので、同漁船群と函館半島との間の水域を航行するつもりで、針路を自動操舵装置のまま同半島の立待岬に向く322度に定め、機関を全速力前進にかけ8.0ノットの対地速力で進行した。
 定針後、A受審人は、連日の操業による疲労と睡眠不足から眠気を催したが、入港まであと少しだから居眠りすることはあるまいと思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとることなく、操舵室に設けられた椅子に腰を掛けたまま当直を続けているうち居眠りに陥った。
 こうして、日吉丸は、居眠り運航となり、函館港に向け転針がなされず、立待岬に向首したまま続航し、04時45分渡島住吉港東防波堤灯台から181度1,060メートルの岩礁に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底外板に破口や推進器翼に曲損を生じたが、自力離礁して函館港に入港し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、漁場から函館港に向け津軽海峡を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、立待岬に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就き、漁場から函館港に向け航行中、連日の操業による疲労と睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航になるおそれがあったから、休息中の甲板員を見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、入港まであと少しだから居眠りすることはあるまいと思い、休息中の甲板員を見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、椅子に腰を掛けたまま当直を続けているうち居眠りに陥り、居眠り運航となって、立待岬に向首進行して乗揚を招き、日吉丸の船底外板などに損傷を生じさせるに至った。





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