(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年9月22日22時45分
兵庫県淡路島南西岸
2 船舶の要目
船種船名 |
油送船眞和丸 |
総トン数 |
237トン |
登録長 |
46.00メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
眞和丸は、船尾船橋型油送船で、A受審人ほか2人が乗り組み、食用油400トンを載せ、船首2.5メートル船尾3.3メートルの喫水をもって、平成11年9月22日17時30分水島港を発し、千葉港に向かった。
A受審人は、船橋当直を自らと機関長及び一等航海士による単独の4時間3直輪番制に定め、休息をとったのち、20時00分単独で船橋当直に就き、同時20分地蔵埼灯台から206度(真方位、以下同じ。)1.2海里の地点で、針路を111度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で進行した。
ところで、A受審人は、以前、本船で船橋当直者が居眠りして乗揚事故を起こしたことから、乗組員が居眠りに陥った際に警報ブザーで目覚めることを目的としてではなく、あくまでも居眠りに陥らないよう、乗組員に注意を促すつもりで、一定時間毎に警報ブザーが鳴る方式の居眠り防止装置を操舵室に設置し、同ブザーが30分間隔に鳴るよう作動時間を設定して使用していた。
定針後、A受審人は、操舵輪の後方の背もたれと肘掛けのついたいすに座り、居眠り防止装置の警報ブザーが鳴ると就寝中の乗組員が目を覚ますおそれがあるので、同ブザーが鳴る前に右舷側後方の壁にあるリセットボタンを押し、これを繰り返しながら当直に当たった。
A受審人は、22時24分孫埼灯台から320度2.8海里の地点に達したとき、いすから立ち上がり、手動操舵に切り替えて反航船を替わし、レーダーで船位が予定針路上にあることを確かめたうえ、同一針路に戻して自動操舵とし、居眠り防止装置の警報ブザーのリセットボタンを押したのち、再びいすに座って当直を続けた。
22時30分ごろA受審人は、前路に支障となる通航船や操業中の漁船が見当たらないことから、気が緩み、眠気を催すようになったが、鳴門海峡への予定転針地点まであと少しなので、まさか居眠りすることはあるまいと思い、外気に当たったり、顔を洗ったりするほか、居眠り防止装置の警報ブザーの作動時間を短縮するなどして、居眠り運航の防止措置をとることなく続航し、いつしか、居眠りに陥った。
A受審人は、22時34分予定転針地点に達したものの、依然として居眠りしていたので、鳴門海峡に針路を転じることができずに淡路島南西岸に向かって進行し、22時45分孫埼灯台から061度1.7海里の地点に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力1の東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首部船底外板に破口を伴う凹損及び擦過傷を生じたが、来援したタグボートによって引き下ろされ、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、播磨灘を鳴門海峡に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、予定の転針が行われないまま淡路島南西岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就き、播磨灘を鳴門海峡に向けて航行中、眠気を催した場合、外気に当たったり、顔を洗ったりするほか、居眠り防止装置の警報ブザーの作動時間を短縮するなどして、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、予定の転針地点まであと少しなので、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、予定転針地点で針路を転じることができずに淡路島南西岸に向首進行して乗揚を招き、眞和丸の船首部船底外板に破口を伴う凹損及び擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して、同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。