(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年12月17日02時10分
鳴門海峡
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第二十八宝運丸 |
総トン数 |
499トン |
全長 |
69.40メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
第二十八宝運丸(以下「宝運丸」という。)は、船尾船橋型の貨物船兼砂利運搬船で、船長B及びA受審人ほか2人が乗り組み、海水バラスト500トンを張り、船首2.4メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成11年12月16日16時00分広島県蒲刈港を発し、京浜港に向かった。
B船長は、船橋当直を8時から12時の間を同人が、0時から4時の間をA受審人が、4時から8時の間を一等航海士がそれぞれ単独で行う4時間3直体制に定め、狭水道等を航行するときなど自ら在橋し、日頃から、居眠り運航を防止するための指示を乗組員に与えていた。
B船長は、出航操船に当たった後、船橋当直体制として瀬戸内海を東行し、23時55分備讃瀬戸東航路東側出口で、次直のA受審人に船橋当直を引き継ぎ、鳴門海峡に達する15分前に起こすよう指示して、自室で休息した。
A受審人は、時々手動操舵に切り替えて漁船を避航しながら鳴門海峡に向けて東行を続け、翌17日01時00分門埼灯台から292度(真方位、以下同じ。)12.4海里の地点に達したとき、針路を112度に定め、機関を回転数毎分230にかけ、10.5ノットの対地速力で、舵輪の前に置いた背もたれとひじ掛けの付いたいすに座り、自動操舵により進行した。
01時30分A受審人は、門埼灯台から292度7.1海里の地点に達したとき、適温に暖房された船橋で当直に当たり、鳴門海峡に接近したが、船長を起こす地点まであと20分ほどの航程で、よもや居眠りすることはないと思い、いすに座り続けていると、海上平穏で視界もよく、前路に他船が見当たらないなど気の緩み易くなる状況であったから、居眠りすることのないよう、いすから立ち上がるなど居眠り運航の防止措置をとることなく、前示の姿勢を続けているうち、いつしか居眠りに陥り、門埼の海岸に向首接近していることに気付かないまま続航中、02時10分門埼灯台から315度100メートルの地点において、宝運丸は、原針路原速力のまま、門埼北側の海岸に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力3の南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首船底に亀裂を伴う損傷を生じたが、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、備讃瀬戸から鳴門海峡へ向け東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、鳴門海峡東方の門埼の海岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、備讃瀬戸から鳴門海峡に向け東行中、適温に暖房された船橋で当直に当たり、同海峡に接近した場合、いすに座り続けていると、海上平穏で視界もよく、前路に他船が見当たらないなど気の緩み易い状況であったから、居眠りすることのないよう、いすから立ち上がるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、船長を起こす地点まであと20分ほどの航程で、よもや居眠りすることはないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、門埼の海岸に向首したまま進行して乗揚を招き、船首船底に亀裂を伴う損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。