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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第65号
件名

漁船第十八共栄丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年4月3日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:第十八共栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底板に擦過傷を伴う破口

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによるものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年9月27日02時10分
 長崎県度島西岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八共栄丸
総トン数 19トン
全長 24.05メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190

3 事実の経過
 第十八共栄丸(以下「共栄丸」という。)は、まき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか11人が乗り組み、あじ、さば漁の目的で、船首1.0メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成11年9月26日14時30分長崎県神崎漁港を発し、17時頃宇久島北東方約5海里の漁場に至って、魚群探索を行っていたところ、次第に時化模様となり、翌27日00時頃僚船と共に漁場を発進し、荒天避泊のため生月島、平戸島、度島及び的山大島に囲まれた海域に向かった。
 ところで共栄丸の操業形態は、僚船と共に夕方出航して、対馬及び五島列島付近の漁場において夜間操業を行い、翌朝最寄りの漁港において水揚げするもので、連日の操業を続け、操業中はA受審人が1人で操船に当たり、1日の睡眠時間を4ないし5時間としていた。
 01時00分A受審人は、前示の海域において馬ノ頭鼻灯台から193度(真方位、以下同じ。)2.5海里の地点に達し、乗組員を休息させ、漂泊を開始した。
 単独の船橋当直に当たっていたA受審人は、北東風を受けて南西方約3海里まで圧流されて生月島に近付いたことから、漂泊開始地点より更に北東方2海里ばかりの地点に移動して漂泊することにし、01時38分生月港北防波堤灯台から085度0.7海里の地点において、針路を044度に定め、機関を全速力前進にかけ、8.5ノットの対地速力で、いすに腰掛けて手動操舵により発進した。
 発進後A受審人は、連日の夜間操業で睡眠不足気味であったことから、眠気を催していたが、居眠りに陥ることがないと思い、いすから立ち上がるなどして居眠り防止措置をとらずに進行した。
 01時47分A受審人は、馬ノ頭鼻灯台から189度2.8海里の地点において、いすに腰掛けたまま急速に居眠りに陥り、その後次第に右転しながら度島の陸岸に向かっていることに気付かずに続航し、02時10分馬ノ頭鼻灯台から170度2.4海里の地点において、共栄丸は、船首が100度の方向に向いたとき、原速力のまま浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力4の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底板に擦過傷を伴う破口を生じたほか、舵頭材、推進器翼及び潮流計などを損傷し、僚船に救助されて神崎漁港に引きつけられ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、長崎県度島西方沖合において、居眠り運航の防止措置が不十分で、度島西岸の浅瀬に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人が、夜間、長崎県度島西方沖合において、単独の船橋当直に当たって北上中、眠気を催した場合、いすから立ち上がるなど居眠り運航の防止措置を取るべき注意義務があった。しかしながら同人は、居眠りに陥ることがないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、陸岸の浅瀬に向かって進行して乗揚を招き、船底板に擦過傷を伴う破口、舵頭材、推進器翼及び潮流計などの損傷を生じさせるに至った。





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