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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年神審第6号
件名

プレジャーボート山一乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年4月10日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:山一船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船内外機を損傷、船底外板に亀裂、浸水

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年5月21日14時20分
 和歌山県沖ノ島南岸沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート山一
総トン数 6.6トン
全長 10.38メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 338キロワット

3 事実の経過
 山一は、FRP製プレジャーモーターボートで、A受審人が1人で乗り組み、長男1人を同乗させ、釣りの目的で、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成12年5月21日06時45分大阪港堺泉北第5区のマリーナを発し、兵庫県沼島南方沖合で釣りをしたのち、13時50分和歌山県沖ノ島南岸沖合の平碆(ひらばえ)南西方約80メートルの釣り場に移動した。
 A受審人は、機関を中立運転とし、西方に向首して漂泊し、釣りの準備を行ったのち、長男に右舷船尾で釣りをさせ、自らは付近の岩などに接近し過ぎないよう、操舵室や後部デッキにおいて周囲の見張りに当たった。
 14時19分半A受審人は、友ケ島灯台から135度(真方位、以下同じ。)810メートルの地点において、釣果がなかったことから沖ノ島北方の釣り場に向け移動することとしたが、船首方約100メートルのところに大きな岩と、その南方に小さな岩とを視認することができ、潮流の影響で普段より西方に流されていたのに、両岩から離れて航行すれば大丈夫と思い、持参していた海図により干出岩の存在を確認するなど、水路調査を十分に行わなかった。
 A受審人は、操舵室で立ったまま1人で操船に当たり、少し左転して小さな岩を右舷側に約20メートル離す237度に針路を定め、機関を半速力前進にかけ、5.0ノットの対地速力で移動を開始したところ、干出岩に向首している状況に気付かないまま続航し、14時20分友ケ島灯台から141度800メートルの地点の干出岩に、原針路、原速力のまま、乗り揚げ、これを乗り切った。
 当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果、船内外機を損傷したうえ、船底外板に亀裂を生じて浸水し、沈没を免れるため任意座礁したが、来援した漁船によりマリーナに引き付けられ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、和歌山県沖ノ島南岸沖合において、同島北方の釣り場に向け移動する際、水路調査が不十分で、同島南方の干出岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、和歌山県沖ノ島南岸沖合において、同島北方の釣り場に向け移動することとした場合、潮流の影響で船体が普段より西方に流されていたから、浅礁に乗り揚げないよう、持参していた海図により干出岩の存在を確認するなど水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、視認していた岩から離れて航行すれば大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、沖ノ島南方の干出岩に向首進行して同岩に乗り揚げ、船内外機を損傷させたうえ、船底外板に亀裂を生じて浸水させ、沈没を免れるため任意座礁するに至った。





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