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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年函審第78号
件名

漁船第五吉進丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年4月19日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(大石義朗、織戸孝治、酒井直樹)

理事官
東 晴二

受審人
A 職名:第五吉進丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船体各所に損傷が著しく、のち廃船

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年10月11日08時00分
 北海道様似港東方海岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五吉進丸
総トン数 3.30トン
登録長 8.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 30

3 事実の経過
 第五吉進丸(以下「吉進丸」という。)は、刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的をもって、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水で、平成12年10月11日02時30分北海道様似港を発し、03時半ごろ同港の南南西方10海里ばかりの漁場に至り、刺し網2連を設置したのち操業を打ち切り、06時45分様似港外東防波堤灯台から202度(真方位、以下同じ。)10.0海里の地点を発進し、帰途に就いた。
 漁場発進時A受審人は、針路を様似港外東防波堤灯台の少し左方を向く020度に定め、機関を8.0ノットの全速力前進にかけ、海潮流の影響で右方に7度圧流されながら8.5ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 定針後間もなく、A受審人は、周囲に他船がいなかったこともあって操舵室後部の長椅子に横になったままレーダー見張りにあたっているうち、07時30分様似港外東防波堤灯台から195度3.8海里の地点に達したとき、気の緩みから眠気を催した。しかし、同人は、もう少しで入港のため転針するから居眠りに陥ることはあるまいと思い、手動操舵に切り替えるとか操舵室外に出て冷気にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとることなく、長椅子に横になったままレーダー見張りを続けているうち、いつしか居眠りに陥った。
 その後、吉進丸は、入港のための転針が行われず、様似港東方の海岸に向かって進行中、08時00分少し前ふと目覚めたA受審人が目前に海岸の砂浜を認め、急ぎ機関を後進にかけたが、間に合わず、08時00分様似港外東防波堤灯台から078度1,720メートルの地点において、原針路、原速力のまま、海岸の砂浜に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で、風力2の北風が吹き、潮候は低潮時で、東方への潮流があった。
 乗揚の結果、他船により引き下ろされ、様似港に引き付けられたが、船体各所の損傷が著しく、廃船処分された。

(原因)
 本件乗揚は、北海道様似港南方沖合の漁場から同港に向け帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同港東方の海岸に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、北海道様似港南方沖合の漁場から同港に向け単独で船橋当直に当たって自動操舵により帰航中、周囲に他船がいなかったこともあって操舵室後部の長椅子に横になったままレーダー見張りにあたっているうち、気の緩みから眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、手動操舵に切り替えるとか操舵室外に出て冷気にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、もう少しで入港のため転針するから居眠りに陥ることはあるまいと思い、手動操舵に切り替えるとか操舵室外に出て冷気にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、操舵室後部の長椅子に横になったままレーダー見張りを続けて居眠りに陥り、同港東方の海岸に向け進行して乗揚を招き、船体各所に著しい損傷を生じさせ、廃船処分させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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