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平成12年神審第62号
件名

漁船豊漁丸プレジャーボートドルフィン衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年5月15日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:豊漁丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:ドルフィン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
豊漁丸・・・損害ない
ド 号・・・左舷前部外板に破口を伴う損傷、浸水、のち廃船

原因
豊漁丸・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
ド 号・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、豊漁丸が、動静監視不十分で、錨泊中のドルフィンを避けなかったことによって発生したが、ドルフィンが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年6月13日09時30分
 兵庫県明石市江井ケ島港南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船豊漁丸 プレジャーボートドルフィン
総トン数 4.98トン  
登録長 10.07メートル 3.76メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
漁船法馬力数 90  
出力   18キロワット

3 事実の経過
 豊漁丸は、FRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、すずきはえ縄漁の目的で、船首0.3メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成11年6月13日09時25分兵庫県江井ケ島港を発し、同港沖合の漁場に向かった。
 09時26分A受審人は、江井ケ島港西防波堤灯台から090度(真方位、以下同じ。)20メートルの地点に達したとき、針路を188度に定め、機関を対地速力7.0ノットの前進にかけて手動操舵により進行した。
 定針時、A受審人は、正船首方800メートルにドルフィンを認め、同船が静止模様であることを知ったが、近づいてから避航すればよいと思い、同船への接近模様が分かるよう、同船の動静監視を十分に行うことなく、自船の直進模様を確かめて舵輪から手を放し、後方を向き舵輪後方の踏み台に腰を下ろし操業準備作業を始めた。
 こうして、豊漁丸は、A受審人が同じ姿勢のまま、時折直進模様となるよう舵輪を微調整しながら続航し、依然としてドルフィンの動静監視を行わなかったので、同船への接近模様に気付かず、同船を避けずに進行中、09時30分江井ケ島港西防波堤灯台から187度800メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首部が、ドルフィンの左舷船首部に対し、直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんど無く、視界は良好で、微弱な東流があった。
 また、ドルフィンは、船外機装備のFRP製プレジャーボートで、錨泊中の船舶が表示する形象物無装備のまま、B受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.15メートル船尾0.25メートルの喫水をもって、同日08時00分兵庫県明石市大久保町八木付近の海岸を発し、衝突地点付近の釣り場に向かった。
 08時10分B受審人は、目的地に達して機関を停止し、ダンホース型錨を投じ、錨索に長さ40メートル径10ミリメートルの合成繊維索を用い、同索を15メートル延出して右舷船尾のクリートに係止し、操縦席に後方を向いて腰を掛け、4本の竿を船尾方に出し釣りを始めた。
 釣りを続行中のB受審人は、09時26分船首が098度を向いていたとき、左舷正横800メートルに、自船に向首進行中の豊漁丸を認め得る状況であったが、航行中の船舶が静止模様の自船を避航するので大丈夫と思い、見張りを十分に行うことなく、豊漁丸を見落としたまま釣りを続けた。
 こうして、ドルフィンは、B受審人が豊漁丸の接近模様に気付かず、同船が接近したとき、錨索を放ち船外機を使用して、衝突を避けるための措置をとらずに釣りを続け、09時30分わずか前ふと右方を向いたとき、至近に迫った同船を認め急ぎ携帯ホーンを吹鳴したが間に合わず、海に飛び込んだ直後、船首を同じ方向に向けた状態で、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、豊漁丸は損傷がなく、ドルフィンは左舷前部外板に破口を伴う損傷を生じて浸水し、B受審人共々救助されたが、のち廃船となった。

(原因)
 本件衝突は、兵庫県江井ケ島港南方沖合において、南下中の豊漁丸が、動静監視不十分で、錨泊中のドルフィンを避けなかったことによって発生したが、ドルフィンが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県江井ケ島港南方沖合に向け南下中、定針したとき正船首方にドルフィンを認め、同船が静止模様であることを知った場合、同船への接近模様が分かるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、近づいてから避航すればよいと思い、後方を向いて操業準備作業を続け、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、ドルフィンへの接近模様に気付かず、同船を避けないまま進行してドルフィンとの衝突を招き、同船の左舷前部外板に破口を伴う損傷を生じさせるに至った。
 B受審人は、兵庫県江井ケ島港南方沖合において、錨泊して釣りを行う場合、豊漁丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、航行中の船舶が静止模様の自船を避航するので大丈夫と思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、自船に向首進行中の豊漁丸に気付かず、同船との衝突を避けるための措置をとらずに錨泊を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図
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