日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成13年横審第5号
件名

プレジャーボートひろみプレジャーボート海勇丸II衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年5月16日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(葉山忠雄)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:ひろみ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
ひろみ・・・損害ない
海勇丸II・・・船首両舷ガンネルに擦過傷、B船長が右肩甲冑部に 打撲傷

原因
ひろみ・・・見張り不十分

裁決主文

 本件衝突は、ひろみが、前路の見張り不十分で、海勇丸IIに向け進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年8月27日11時40分
 横須賀港第5区

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートひろみ プレジャーボート海勇丸II
全長   4.22メートル
登録長 6.27メートル  
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 84キロワット 7キロワット

3 事実の経過
 ひろみは、FRP製のプレジャーボートで、A受審人が友人から賃貸料を支払って借り受け、船長として単独で乗り組み、友人など7人を同乗させ、船首0.2メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、平成12年8月27日08時ごろ横須賀市田浦町の日立機械エンジニアリング株式会社構内の岸壁を発し、浦賀水道航路西方の海獺島付近の魚釣り場に向かった。
 A受審人は、09時ごろ海獺島灯台から090度(真方位、以下同じ。)100メートルばかりの魚釣り場に着き、魚釣りを行っていたところ、船酔いする者があったので、11時ごろ同釣り場を発進して発航地に戻ることとした。
 ところで、ひろみは、操舵席において前方を見ると、船首から7ないし8メートルの範囲で前方に死角が生じる構造であった。
 A受審人は、横須賀市旗山埼沖合を航行中、ボートによる魚釣りをしている友人を見つけて、釣り模様を調べようと同船に近づき、11時38分横須賀港走水物揚場防波堤灯台から053度370メートルのところで機関を中立として漂泊を始め、その後、折からの南東風により北西方に圧流される状況となった。
 A受審人は、11時40分わずか前発航地に向かうこととしたが、漂泊を始めたときには、船首前方近くに他船を認めなかったので大丈夫と思い、いすから腰を上げて眼高を高くし、前方の死角部分に他船の存在がないことを調べるなど、前路の見張りを十分に行うことなく、漂泊している間の圧流で船首前方の死角内に海勇丸IIが存在するようになったことに気付かないまま、船首を225度に向け、直ちに機関を前進に掛け航海を続けたところ、11時40分横須賀港走水物揚場防波堤灯台から045度350メートルの地点において、同船首方向、3ノットの速力で、ひろみの船首が海勇丸IIの左舷船首部に、ほぼ直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 また、海勇丸IIは、FRP製のプレジャーボートで、Bが貸し船業者から賃貸料を支払って借り受け、船長として単独で乗り組み、船首尾とも0.1メートルの喫水をもって、魚釣りの目的で、同日08時ごろ横須賀港走水物揚場防波堤灯台から289度290メートルの海岸を発し、同海岸北西方のカナマル瀬付近の魚釣り場に向かった。
 B船長は、釣果がなかったので魚釣り場を変えることとして、11時ごろカナマル瀬付近の魚釣り場を発進し、旗山埼沖で機関を止め、船首から錨索を40メートルばかり延出して錨泊し、折からの南東風により船首を135度に向け、前示衝突地点において魚釣りを始めた。
 B船長は、11時40分わずか前至近のところでひろみが自船に近づくのを知ったものの、どうすることもできず、錨泊したまま同船首方向で前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ひろみに損傷はなかったが、海勇丸IIは船首両舷ガンネルに擦過傷を生じ、B船長が右肩甲骨部に打撲傷を負った。

(原因)
 本件衝突は、横須賀港第5区において、ひろみが、漂泊して他船の釣り模様を調べたのち、発航地に戻ることとした際、前路の見張り不十分で、前方の死角範囲内に存在した海勇丸IIに向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、横須賀港第5区において、漂泊して友人の釣り模様を調べたのち、発航地に戻ることとした場合、漂泊中に他船が船首の死角内に入ってきていることがあるから、他船を見落とさないよう、いすから腰を上げて眼高を高くし、前方の死角部分に他船の存在がないことを調べるなど、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、漂泊を始めたときには、船首前方近くに他船を認めなかったので大丈夫と思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、直ちに機関を前進に掛けて海勇丸IIとの衝突を招き、同船の船首両舷ガンネルに擦過傷を生じさせ、また、B船長に右肩甲骨部の打撲傷を負わせるに至った。


参考図
(拡大画面:49KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION