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平成12年仙審第76号
件名

漁船第五八幡丸防波堤衝突事件
二審請求者〔理事官熊谷孝徳〕

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年5月25日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(喜多 保、東 晴二、大山繁樹)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:第五八幡丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士(5トン限定)

損害
八幡丸・・・船体右舷側を大破、のち廃船、A受審人が骨盤骨折、同乗者が脳挫傷、脳内血腫等の傷

原因
船位確認不十分

主文

 本件防波堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年7月26日22時30分
 岩手県崎浜漁港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五八幡丸
総トン数 0.8トン
登録長 7.11メートル
機関の種類 電気点火機関
漁船法馬力数 30

3 事実の経過
 第五八幡丸(以下「八幡丸」という。)は、船首部に操縦スタンドを設けた航海灯設備のない遊漁兼用のFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、同乗者2人を乗せ、船首0.1メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、平成11年7月26日22時28分陸中崎浜港東防波堤灯台(以下「崎浜港灯台」という。)から097度(真方位、以下同じ。)150メートルの岩手県崎浜漁港北側泊地の係留地点を発し、同漁港南側泊地に向かった。
 これより先、A受審人は、同日夕食前に焼酎を2合ほど飲んだ後、18時ごろ犬2匹を連れて散歩に出かけ、同時10分ごろ崎浜漁港の岸壁を通りかかったとき、男女2人連れに話し掛けられ、その場で3人で飲酒しながら話し込んでいるうち、女性から船に乗ってみたい旨の申出があったので、500ミリリットル入りの缶ビールを2缶飲んでいたものの、以前から懇意にしている船舶所有者から無断で八幡丸を借用して、同漁港内の遊覧をすることにした。
 ところで、崎浜漁港は、防波堤で仕切られた南北2つの泊地があり、北側泊地は、先端に崎浜港灯台が設置されている防波堤、同灯台の北方約130メートルから南南東方に伸びる長さ約70メートルの防波堤及び陸地に、南側泊地は、崎浜港灯台の東方約120メートルから南方に伸びる長さ約350メートルの南第1防波堤、同灯台の南南東方約600メートルから北西方へかぎ型に伸びる全長約290メートルの南第2防波堤及び陸地にそれぞれ囲まれ、南北各泊地の入口幅は、北側泊地が約50メートル、南側泊地は約70メートルとなっており、A受審人は、北側泊地を出航して南第1防波堤を大きく離して迂回して南側泊地に入ってから係留地点に戻る遊覧を予定していた。
 A受審人は、発航してから、同乗者の男性を甲板中央部右舷側に、同女性を同部左舷側にそれぞれ座らせ、自らは立って操舵操船に当たり、八幡丸の乗船が初めてであったことから、同船の操縦性能を確認するため低速力で蛇行しながら航行したのち、22時28分半崎浜港灯台を左舷側35メートルばかり離して並航したとき、全速力前進として20.0ノットの対地速力で緩やかに左回頭をしながら進行した。
 A受審人は、22時29分少し過ぎ崎浜港灯台から226度315メートルの地点に達したとき、南側泊地の入口に向ける地点に来ていたが、同入口まで距離は十分あるものと思い、速力を減じて南第2防波堤先端部との相対位置関係を目測するなどして船位の確認を十分に行うことなく続航した。
 22時29分半A受審人は、崎浜港灯台から200度350メートルの地点で、105度の針路としたところ、南第2防波堤北西端に向首することになったものの、依然として船位の確認を十分に行っていなかったので、このことに気付かないまま進行中、22時30分八幡丸は、原針路、原速力のまま、その右舷船首部が崎浜港灯台から162度415メートルの同防波堤北西端に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期で、視界は良好であった。
 防波堤衝突の結果、八幡丸は船体右舷側を大破し、のち廃船となり、A受審人が骨盤骨折、右鎖骨骨折等、同乗者の男性が脳挫傷、脳内血腫等の傷をそれぞれ負った。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、岩手県崎浜漁港内を遊覧中、同漁港南側泊地に向けて進行する際、船位の確認が不十分で、南第2防波堤北西端に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、崎浜漁港内を遊覧中、同漁港南側泊地に向けて進行する場合、速力を減じて南第2防波堤先端部との相対位置関係を目測するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同泊地入口まで距離は十分あるものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同防波堤北西端に向首進行して衝突を招き、船体右舷側を大破させ、同乗者の男性に脳挫傷、脳内血腫等の傷を負わせ、自らも骨盤骨折、右鎖骨骨折等の傷を負うに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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