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平成12年広審第66号
件名

漁船晃春丸漁船第5足友丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年4月13日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(中谷啓二、竹内伸二、工藤民雄)

理事官
上中拓治

受審人
A 職名:晃春丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第5足友丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
晃春丸・・・左舷船首部外板に亀裂
足友丸・・・船首部を破損、B受審人左上腕部を負傷

原因
晃春丸・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険・前路進出)不遵守

主文

 本件衝突は、晃春丸が、見張り不十分で、無難に替わる態勢にあった第5足友丸の前路に進出したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年7月8日04時30分
 鳥取県境港

2 船舶の要目
船種船名 漁船晃春丸 漁船第5足友丸
総トン数 4.9トン 2.69トン
登録長 11.99メートル 7.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 30 17

3 事実の経過
 晃春丸は、小型機船底引網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、えびけた網漁の目的で、船首0.5メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成11年7月7日17時00分境港第2区中野1号防波堤内の船だまりを発し、同時15分ごろ同区東部の漁場に至って操業したのち、翌8日04時ごろ所定の灯火を表示して帰途に就いた。
 04時26分半A受審人は、境港中野東防波堤灯台(以下「中野東灯台」という。)から107度(真方位、以下同じ。)920メートルの地点で、中野1号防波堤とその南側に位置する防波堤間の入口に向けて針路を285度に定め、機関を全速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で、操舵室の椅子に腰掛け手動操舵で進行した。
 ところで同防波堤入口付近は、可航幅が約120メートルあり、晃春丸程度の小型の船舶同士においては、安全に替わりゆく余地が十分あって無難に航過することができる海域であった。
 04時28分半A受審人は、中野東灯台から109度430メートルの地点に達したとき、左舷船首3度510メートルのところに、中野1号防波堤を替わって出航中の第5足友丸(以下「足友丸」という。)の白、紅2灯を視認できる状況となり、そのまま進行すれば互いに左舷を対し約40メートルの船間距離で無難に航過する態勢であったが、そのころ右舷正横付近に第3船の灯火を認め、同船が防波堤入口に向かい自船に近づく態勢であったことから、同船に気をとられ、前路の見張りを十分に行うことなく、足友丸に気付かず続航した。
 04時30分少し前A受審人は、中野東灯台から119度120メートルの地点に達したとき、足友丸が左舷船首31度80メートルのところに接近していたが、依然、見張り不十分で同船に気付かず、右方の第3船と衝突のおそれはなかったものの距離が近いように感じたことから、もう少し離れようと左舵一杯をとり、240度に転じたところ足友丸の前路に進出し、衝突のおそれのある態勢となって進行した。
 その直後A受審人は、船首方至近に足友丸を初認したもののどうすることもできず、晃春丸は、04時30分中野東灯台から148度100メートルの地点において、その船首が、原速力のまま、足友丸の左舷船首部に前方から75度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の初期であった。
 また、足友丸は、刺網漁業に従事する木製漁船で、B受審人と同人の妻が乗り組み、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日04時24分境港第2区の前示船だまりを発し、所定の灯火を表示して同区南部の漁場に向かった。
 B受審人は、中野1号防波堤に沿って南下し、04時28分半中野東灯台から253度100メートルの地点に達したとき、針路を110度に定め、機関を半速力前進にかけ、3.5ノットの対地速力で、操舵室に立って手動操舵により進行した。
 このときB受審人は、左舷船首8度510メートルのところに、晃春丸の白、紅2灯を初認し、同船の動静を監視していたところ、互いに左舷を対し無難に航過する態勢であることを知りそのままの針路で続航した。
 04時30分少し前B受審人は、晃春丸が、左舷船首35度80メートルとなったとき、突然左転して前路に衝突のおそれのある態勢で接近するのを認め、あわてて右舵一杯をとったが及ばず、足友丸は、135度に向首したとき前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、晃春丸は、左舷船首部外板に亀裂を生じ、足友丸は、船首部を破損したが、のちいずれも修理され、B受審人が左上腕部を、その妻が頭部をそれぞれ負傷した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、鳥取県境港において、入航中の晃春丸が、見張り不十分で、無難に替わる態勢にあった足友丸の前路に進出したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、鳥取県境港において入航中、防波堤入口に向け進行する場合、出航する足友丸を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷正横付近に認めた第3船に気をとられ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、足友丸に気付かず、無難に替わる態勢にあった同船の前路に進出して衝突を招き、晃春丸の左舷船首部外板に亀裂を生じさせ、足友丸の船首部を破損し、B受審人の左上腕部及びその妻の頭部を負傷させるに至った
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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