(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年1月23日23時20分
青森県大畑港
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第三十一進漁丸 |
総トン数 |
14トン |
全長 |
19.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
433キロワット |
3 事実の経過
第三十一進漁丸(以下「進漁丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、受審人Aが1人で乗り組み、船首1.20メートル、船尾2.40メートルの喫水をもって、平成12年1月23日18時00分青森県大畑港を出港し、同港北東ないし北方約5海里沖合の漁場で操業していたが、漁模様が悪かったうえ天候が悪化するとの情報があったことから操業を中止し、22時45分大畑港第1東防波堤灯台(以下、大畑港を冠する灯台及び防波堤の名称については「大畑港」を省略する。)から349度(真方位、以下同じ。)4.8海里の地点を発し、帰途に就いた。
漁場発航時A受審人は、針路を168度に定め、機関を全速力前進にかけ、自動操舵として操舵室内左舷寄りのところで操船に当たり、9.0ノットの対地速力で進行した。
23時11分A受審人は、第1東防波堤灯台から353度2,240メートルの地点に達したとき、同灯台の灯火を正船首少し右方に認めるとともに、海面付近に立ち上る低い霧堤が前方に広がっているのを認め、操舵を遠隔の手動に切り替え、同時13分第1東防波堤灯台から355度1,660メートルの地点に達したとき、霧堤に入り、降雪もあって視界が著しく制限される状況となったことから速力を落とし、作動中のレーダーにより第2外北防波堤を船首方向に認めながら6.0ノットの対地速力で続航した。
A受審人は、このまま第2外北防波堤に近付いたうえ、同防波堤を視認したのちこれを左舷側に見て通過するよう右転し、適宜防波堤入口に向けるつもりでいたところ、霧堤の上方に薄くかすんで見えていた第1東防波堤灯台の灯火の様子から、このまま進行しても第2外北防波堤は左舷側にかわると思い、また、大畑港の出入航に慣れていたことによる油断もあって、レーダーにより第2外北防波堤への接近状況を把握するなどの船位の確認を十分に行うことなく進行中、23時20分少し前船首至近のところに黒く同防波堤を認めたが、どうすることもできず、23時20分第1東防波堤灯台から017度420メートルの地点において、原針路、原速力のままの進漁丸の船首部が、第2外北防波堤の東側部分に衝突した。
当時、天候は雪で風力3の西北西風が吹き、潮候は低潮時で、海面付近に霧堤があって視程は約10メートルであった。
防波堤衝突の結果、船首部及び球状船首を圧壊したほか、錨索用ローラーなどを損傷し、のち修理された。
(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、霧堤に入って視界が著しく制限されたなか、青森県大畑港に入航中、レーダーにより第2外北防波堤への接近状況を把握するなどの船位の確認が不十分で、同防波堤に向首する針路のまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、霧堤に入って視界が著しく制限されたなか、大畑港に入航する場合、レーダーにより船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、霧堤の上方に薄くかすんで見えていた第1東防波堤灯台の灯火の様子から第2外北防波堤は左舷側にかわると思い、レーダーにより船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同防波堤に向首する針路のまま進行して衝突を招き、進漁丸の船首部及び球状船首に圧壊を、錨索用ローラーなどに損傷をそれぞれ生じさせるに至った。