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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 安全・運航阻害事件一覧 >  事件





平成12年長審第57号
件名

プレジャーボート雄大丸運航阻害事件

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成13年1月23日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(河本和夫、亀井龍雄、平野浩三)

理事官
弓田

受審人
A 職名:雄大丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
航行不能

原因
蓄電池の充電不十分、船外機の手動始動措置不十分

主文

 本件運航阻害は、蓄電池の充電が不十分であったことと、船外機の手動始動措置が不十分であったこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年5月6日15時00分
 佐世保港沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート雄大丸
全長 7.00メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 36キロワット

3 事実の経過
 雄大丸は、平成8年6月に竣工した、航行区域を沿海区域とするFRP製プレジャーボートで、船外機として、R社製の6BO型と称する電気点火機関を装備していた。
 船外機は、電動始動式で、始動用の電動機、発電機などを備えるほか、始動用電動機が動かないときはフライホイールにロープをかけて引くことにより、手動で始動できるようになっていて、付属部品として応急始動用ロープを備えていた。
 蓄電池は、電圧12ボルト容量85アンペア時のものを2個備え、船外機始動用の電動機、照明、魚群探知器などの計器類及び揚錨機の電源となっており、船外機の運転中は同機付属の発電機によって充電されるようになっていたが、充電量を示す計器は装備されていなかった。
 A受審人は、雄大丸を新艇で購入して船長として乗り組み、長崎県相浦港を基地とし、佐世保港沖合での釣りを目的として月に1回ないし2回運航し、それ以外は基地に係留したままとしていた。雄大丸を運航するときは06時ごろ出港し、航走約1時間の釣り場に向かい、15時ごろ帰港しており、釣り場では移動するとき以外は船外機を停止するようにしていた。
 蓄電池は、1個で船外機を始動できるもので、船外機の始動や揚錨機運転などの放電量を考慮して2個並列使用とされていたが、船外機の運転時間が短かったので充電量が少なく、次第に電気量が減少して電圧が低下しており、このような取扱いが続けられるといつ放電終止電圧以下になるか不明で、同電圧以上であれば船外機の始動は可能であるが、始動による放電で同電圧以下となったとき、同電圧以上に回復する前に船外機が停止されると以後の電動始動が不能であった。
 A受審人は、雄大丸就航以来蓄電池による船外機の始動に問題を生じたことがなかったので、蓄電池を係留中に充電することも、釣り中に船外機を中立運転として充電することもしなかった。また、予備品として応急始動用ロープを備えていることを知っていたが、手動始動操作をしたことがなかった。
 平成12年5月6日A受審人は、1人で乗り組み、友人2人を同乗させ、釣りの目的で、船首0.5メートル船尾0.6メートルの喫水で、06時30分相浦港を発して黒島沖合に向かい、07時40分ごろ黒島沖合に至って船外機を停止し、投錨して釣りを開始したが釣果がなく、09時30分黒島沖合を発進して同時40分ヒロ曽根の海域に至り、同海域で3回移動し、船外機の始動、停止を繰り返して釣りを続けたが、なお釣果がないので伏瀬の海域に向かうこととして14時30分船外機を始動した。
 このとき蓄電池は、過放電状態となって放電終止電圧以下に低下し、航走中充電されたが、14時40分同海域に至って船外機が停止されたとき、まだ充電が不十分で、放電終止電圧以上に回復していなかった。
 A受審人は、同海域で釣りを終えたのち帰途に就く目的で、15時00分船外機を始動しようとして始動電動機のスイッチを入れたが船外機が始動せず、応急始動用ロープでの始動はしたことがないので不安に思い、手動始動措置をとることなく、救助を要請した。
 こうして雄大丸は、15時00分伏瀬灯標から真方位054度200メートルの地点において、航行不能となった。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、海上は穏やかであった。
 この結果、雄大丸は、来援した巡視艇により発航地に引き付けられた。

(原因)
 本件運航阻害は、平素、蓄電池の充電が不十分で、佐世保港沖合のヒロ曽根の海域で釣り場移動を繰り返したのち、伏瀬の海域に向け発した際、蓄電池が過放電状態となったことと、伏瀬の海域で船外機を停止して釣りののち、帰途に就く目的で、船外機の始動スイッチを入れても船外機が始動しなかった際、手動始動措置が不十分で、船外機が始動されなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、佐世保港沖合の伏瀬の海域で船外機を停止して釣りののち、帰途に就く目的で、船外機の始動スイッチを入れても船外機が始動しなかった場合、付属部品として応急始動用ロープを備えて手動で始動できるようになっていたのであるから、手動始動措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、応急始動用ロープでの始動はしたことがないので不安に思い、手動始動措置をとらなかった職務上の過失により、航行不能となり、巡視船によりえい航されるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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