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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 機関損傷事件一覧 >  事件





平成12年那審第5号
件名

漁船第一幸丸機関損傷事件

事件区分
機関損傷事件
言渡年月日
平成13年3月22日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(花原敏朗、金城隆支、清重隆彦)

理事官
上原 直

受審人
A 職名:第一幸丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
1番、4番及び6番シリンダのピストンとシリンダライナを焼損

原因
ゴムホースの整備不十分

主文

 本件機関損傷は、主機冷却清水系統に使用されていたゴムホースの整備が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年5月24日07時10分
 沖縄島南方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船第一幸丸
総トン数 15.32トン
登録長 14.30メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 308キロワット
回転数  毎分2,100

3 事実の経過
 第一幸丸(以下「幸丸」という。)は、昭和51年6月に進水したまぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、平成10年5月に主機がR社が製造した6NSF−M型と称する中古のディーゼル機関に換装され、船橋から主機の遠隔操作ができるようになっていた。
 主機は、A重油を燃料油とし、各シリンダに船尾側を1番として6番までの順番号が付され、清水による密閉加圧循環方式で冷却が行われ、清水冷却器を内蔵し、圧力キャップが付設された清水膨張タンクが1番シリンダの船尾側架構上に、冷却清水ポンプ(以下「清水ポンプ」という。)として、主機直結式の渦巻ポンプが主機左舷側に、また、潤滑油冷却器が主機右舷側にそれぞれ設置されていた。
 主機の冷却清水系統は、清水ポンプにより吸引加圧された清水が、主機入口主管から各シリンダのシリンダジャケット、シリンダヘッド及び排気マニホルドを冷却して清水膨張タンクに至り、清水冷却器で冷却された後、同タンクを出て空気冷却器及び潤滑油冷却器を冷却し、同ポンプ吸入側に環流するようになっていて、循環する冷却清水の総量が約44リットルであった。そして、冷却清水は、清水冷却器入口に設けられた高温側温度調整弁によって一部が同冷却器をバイパスして同ポンプ吸入側に環流し、さらに、同冷却器出口に設けられた低温側温度調整弁で同冷却器を通るものと、バイパスするものとに分かれ、同調整弁出口で再び合流して温度調整が行われるようになっていた。また、冷却清水温度が摂氏92度を超えると、冷却清水温度上昇警報装置が作動して、操舵室内のブザー及び表示灯で警報を発するようになっており、同装置用センサは、冷却清水遠隔温度計用センサとともに清水膨張タンク入口に取り付けられていた。
 ところで、前示冷却清水系統は、配管の随所にクロロプレンゴム製のゴムホースが用いられ、接続部が幅10ミリメートル(以下「ミリ」という。)の金属製のホースバンドで締め付けられていた。そして、潤滑油冷却器から清水ポンプ吸入側に至る配管には、2箇所にいずれも内径48ミリ厚さ6ミリで、潤滑油冷却器の出口から船尾方に向かって長さ270ミリの、また、清水冷却器の下方を右舷側から左舷側に向かって長さ370ミリのいずれも直管のゴムホースが使用されていた。しかし、両ゴムホースはいずれも経年劣化を生じて硬化し、ホースバンドの締め付けが十分に効かなくなって、冷却清水が漏洩するおそれがあった。
 A受審人は、昭和63年11月に中古の幸丸を購入して以来、自ら船長として乗り組み、操船のほか機関の運転管理にも当たり、平成10年12月に前示長さ370ミリのゴムホースが経年劣化を生じて同ホースの両端接続部から清水が漏洩し、主機が冷却阻害の状態になってピストンとシリンダライナが焼損する事態が発生して修理を行った。ところが、同人は、ゴムホースについて、ホースバンドを増締めしただけで漏洩が止まったことから、他のゴムホースについても同様に経年劣化のおそれのある状況であったが、これまで漏洩がなかったので大丈夫と思い、劣化のおそれがあった他のゴムホースを新替えするなどして主機冷却清水系統に使用されていたゴムホースの整備を十分に行うことなく、潤滑油冷却器出口に配管された前示長さ270ミリのゴムホースが継続使用され、同ホースの経年劣化が次第に進行する状況のまま主機の運転を続けていた。
 幸丸は、A受審人ほか4人が乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成11年5月15日13時00分和歌山県勝浦港を発し、沖縄島南方の漁場に向かった。
 A受審人は、20日05時00分北緯23度55分東経126度32分の漁場に至って操業を開始し、その後漁場を移動しながら操業を繰り返していた。
 こうして、幸丸は、A受審人が操舵室で操船に当たり、主機を回転数毎分1,650にかけて投縄中、前示長さ270ミリのゴムホースの経年劣化が進行し、同ホースの船首側接続部のホースバンドの締め付けが効かず、短時間のうちに多量の冷却清水が漏洩し、清水ポンプが空気を吸引して揚水しなくなり、冷却清水高温警報装置及び冷却清水遠隔温度計用の両センサとも清水温度の検出ができなくなり、同警報装置が作動しないまま、冷却阻害の状態で主機の運転が続けられるうち、1番、4番及び6番シリンダのピストンが膨張してシリンダライナに焼き付き、07時10分沖縄島南方沖の北緯25度36分東経128度20分の地点において、主機の回転が毎分500まで低下するとともに、主機クランク室ガス抜管から白煙が発生した。
 当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、海上は穏やかであった。
 A受審人は、主機の異状を認め、直ちに手動で主機を停止し、冷機後、主機のクランク室を点検して前示の損傷を認め、洋上で焼損部品を交換したものの、すり合わせ運転中に、前示シリンダのピストンとシリンダライナに再び焼損が生じ、僚船に救助を要請した。
 幸丸は、来援の僚船により沖縄県糸満漁港に引き付けられ、のち主機が換装された。

(原因)
 本件機関損傷は、主機冷却清水系統に使用されていたゴムホースが経年劣化を生じ、同ホースの接続部から冷却清水が漏洩して修理を行った際、同系統に使用されていたゴムホースの整備が不十分で、経年劣化していたゴムホースが継続使用され、同劣化が進行して冷却清水が漏洩し、冷却阻害の状態で主機の運転が続けられたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、主機冷却清水系統に使用されていたゴムホースが経年劣化を生じ、同ホースの接続部から冷却清水が漏洩して修理を行った場合、同系統に使用されていた他のゴムホースについても同様に劣化のおそれがあったのであるから、運転中に劣化が進行して冷却清水が漏洩することのないよう、劣化のおそれがあった他のゴムホースを新替えするなどして同系統に使用されていたゴムホースの整備を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、これまで漏洩がなかったので大丈夫と思い、経年劣化のおそれがあった他のゴムホースを新替えするなどして主機冷却清水系統に使用されていたゴムホースの整備を十分に行わなかった職務上の過失により、ゴムホースの劣化が進行し、冷却清水が漏洩して主機の冷却が阻害される事態を招き、1番、4番及び6番シリンダのピストンとシリンダライナを焼損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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