(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成12年7月24日07時45分
沖縄県池間島北方さんご礁
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートモッピー2 |
総トン数 |
13トン |
全長 |
11.79メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
419キロワット |
3 事実の経過
モッピー2は、2基2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、船舶所有者等4人を乗せ、巡航の目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成12年7月24日07時08分沖縄県平良港を発し、同県久米島に向かった。
ところで、A受審人は、三重県鳥羽市に住居を構え、船舶の回航業務等に従事していて、空路沖縄県石垣市に入り、同年7月17日同県石垣港でモッピー2に船長として乗船し、その後台湾基隆港及び石垣港を経由して同月23日平良港に入港した。
発航に先立って、A受審人は、宮古島西方を北上し、航行経験のない池間島と八重干瀬との間を通過し、フデ岩の南方を経て久米島に至る航海計画を立てたが、GPSプロッターに付近の地形の概略が入力されており、小型船用簡易港湾案内「南西諸島」の104,105ページ「宮古列島」には池間島北方立標が記載されていたものの、同立標が記載されていない同港湾案内の102,103ページ「平良港その1」を一瞥(いちべつ)して、陸上の物標を目視して航行すれば大丈夫と思い、小型船用簡易港湾案内「南西諸島」の104,105ページや備付けの海図第1281号にあたるなどして、航路標識の設置状況やさんご礁の張り出し状況など同水域の水路調査を十分に行わなかった。
A受審人は、発航時からフライングブリッジで操縦にあたり、平良港を出航後、機関を全速力前進に掛け、20.0ノットの対地速力で、手動操舵により北北西方に向かって進行した。
07時36分A受審人は、池間島灯台から259度(真方位、以下同じ。)2.5海里の地点に達したとき、右舷正横後15度ばかりのところに池間島北方立標を双眼鏡で視認したものの、発航前に付近の水路調査を十分に行っていなかったので、池間島の北方約1,200メートル沖合までさんご礁が拡延していてその北端に同立標が設置されていたことに気付かず、全速力で走りながら開いていた小型船用簡易港湾案内「南西諸島」の102,103ページで確認したところ、同ページに池間島北方立標の記載がなかったため、同立標の北東方2.6海里ばかりのところに設置されている八重干瀬南立標と思い込み、その立標に向けて針路を067度に定めて続航した。
モッピー2は、A受審人が池間島北方に拡延するさんご礁に向って進行していることに気付かないまま、同じ針路及び速力で続航中、07時45分池間島灯台から028度1,500メートルの地点において、同さんご礁の北端に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、右舷推進器が脱落し、両舷推進器軸及び左舷推進器翼に曲損を生じたが、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、巡航の目的で、初めて池間島と八重干瀬との間を航行する際、水路調査が不十分で、池間島北方を東行中、同島北方沖合に拡延しているさんご礁北端に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、巡航の目的で、池間島と八重干瀬との間を航行する場合、これまで同海域を航行した経験がなかったのであるから、あらかじめ小型船用簡易港湾案内や備付けの海図にあたるなどして、航行予定海域の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、GPSプロッターに付近の地形の概略が入力されており、小型船用簡易港湾案内の一部を一瞥して、陸上の物標を目視して航行すれば大丈夫と思い、小型船用簡易港湾案内や備付けの海図にあたるなどして、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、池間島の北方約1,200メートル沖合までさんご礁が拡延していて、その北端に池間島北方立標が設置されていたことに気付かないまま、同島北方を東行中、双眼鏡で認めた同立標をその北東方2.6海里ばかりのところに設置されている八重干瀬南立標と思い込み、その立標に向けて定針し、池間島の北方沖合に拡延しているさんご礁北端に向首進行して乗揚を招き、右舷推進器の脱落並びに両舷推進器軸及び左舷推進器翼に曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。