(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年5月16日04時44分
平戸島東岸
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船大峯丸 |
総トン数 |
499トン |
全長 |
72.82メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
882キロワット |
3 事実の経過
大峯丸は、航行区域を沿海区域とする鋼製貨物船で、舶用ディーゼル部品350トンを積載し、A受審人、B受審人ほか2人が乗り組み、船首2.2メートル船尾3.9メートルの喫水をもって、平成11年5月16日00時00分長崎港を発し、香川県丸亀港に向かった。
A受審人は、航海当直を自らとB受審人との2人による単独6時間交替の2直制とし、11時から5時までをB受審人に、5時から11時までを自ら行うこととし、出入港時、主要な狭水道においては操船の指揮をとり、B受審人に対しては、平素から眠気を催した際には報告するよう指示していた。
A受審人は、出航操船の指揮をとって離岸したのち、出航部署を解き、単独で長崎港内の操船に当たり、00時40分平瀬灯標の北東方0.4海里の地点で、昇橋してきたB受審人と船橋当直を交替して降橋した。
こうして、B受審人は、単独で船橋当直に就き、転針点では海図上で位置を確かめながら九州西岸を北上し、04時08分青砂埼灯台からから199度(真方位、以下同じ。)5.3海里の地点に達したとき、針路を016度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。
ところで、B受審人は、6時間交替の単独の船橋当直などで日頃の疲労が蓄積しており、また前夜は21時ごろ就寝し、出航スタンバイで23時30分に起き出した。
定針後B受審人は、操舵スタンド後方の背もたれの付いたいすに腰掛けて船橋当直に当たり、04時18分青砂埼灯台から200度3.4海里の地点に達したころ、疲労が蓄積していたことと、周囲に他船を見掛けなくなって気が緩んだことにより、眠気を催すようになったが、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとることなく続航しているうち、いつしか居眠りに陥った。
04時37分B受審人は、青砂埼灯台から286度0.2海里の地点の、平戸瀬戸への転針予定地点に達したが、依然として居眠りに陥っていてこのことに気付かず進行中、04時44分大峯丸は、青砂埼灯台から008度1.4海里の地点において、平戸島東岸に原針路、原速力のまま、乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
A受審人は、乗揚の衝撃で目覚め、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、球状船首及び船首から中央部にかけての船底外板に凹損を生じ、巡視艇の援助を受けながら自力で離礁し、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、九州西岸を北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、平戸島東岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
B受審人は、夜間、九州西岸を単独で船橋当直に就いて北上中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、いすから立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、平戸島東岸に向首進行して乗揚を招き、球状船首及び船首から中央部にかけての船底外板にそれぞれ凹損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。