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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第61号
件名

押船第三清丸被押バージニューウェーブ3乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月22日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(森田秀彦)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:第三清丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
左舷船首部船底外板に凹損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が不十分で、浅礁に向首進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年8月11日04時05分
 和歌山県田辺港港外

2 船舶の要目
船種船名 押船第三清丸 被押バージニューウェーブ3
総トン数 160トン 1,151トン
全長 33.25メートル 129.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 2,942キロワット  

3 事実の経過
 第三清丸は、航行区域を沿海区域とする鋼製引船兼押船で、A受審人ほか6人が乗り組み、船首3.4メートル船尾4.4メートルの喫水をもって、台車パレット29台を載せて船首3.1メートル船尾3.2メートルの喫水となった非自航の鋼製バージニューウェーブ3(以下「バージ」という。)の船尾凹部に船首部を嵌合させ、全長約150メートルの押船列(以下「清丸押船列」という。)とし、平成11年8月10日16時00分岡山県水島港を発し、愛知県衣浦港に向かった。
 22時20分A受審人は、孫埼灯台から088度(真方位、以下同じ。)0.6海里の、鳴門大橋中央部を過ぎた地点で針路を140度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.4ノットの対地速力で自動操舵とし、船橋当直を二等航海士に任せて降橋した。
 翌11日01時30分A受審人は次第に風波浪が大きくなってきたので、昇橋し、潮岬の気象状況を電話サービスで確かめたところ、潮岬では01時時点で南西の風15メートル、波は5という情報を入手し、その後更に動揺が激しくなってきたので、航行を続けることが無理と判断し、南西の風を避けて和歌山県田辺港に荒天避難することとした。
 03時05分A受審人は、田辺沖ノ島灯台(以下「沖ノ島灯台」という。)から228度5.0海里の地点で、針路を反転して045度に転じ、機関を極微速力前進に落として速力を5.0ノットに減じ、一等航海士と二等航海士を船首配置につけて投錨準備と見張りに当たらせ、自らは操舵を手動操舵に切り替えて単独で操船に当たり、田辺港に向けて進行した。
 ところで、A受審人は、田辺港への入港は初めてで、また同港の分図も備え付けていなかったことから、03時15分沖ノ島灯台から230度3.8海里の地点に達したとき、田辺海上保安部にVHFで連絡を取り、同保安部から同港への進入方法等について情報を得たものの、地名等その情報の内容を十分に理解できなかったが、備付けの小縮尺の海図によっても入港可能と思い、同保安部から同港の分図の一部をファックスで入手するなど同港入港に当たって水路状況を十分に調査することなく続航した。
 A受審人は、小縮尺の海図を見て沖ノ島灯台の北側を通航するつもりで、同針路、同速力で進行しているとき、田辺海上保安部から田辺港には導灯が設置されている旨の連絡を受け、03時58分同灯台から323度900メートルの地点で、導灯を探すため右回頭を始めたところ、同灯台東側の灘島南西部の浅礁域に著しく接近する進路となったが、水路状況を調査していなかったので、このことに気付かないまま続航中、04時05分清丸押船列は、船首が115度を向いたとき、沖ノ島灯台から043度750メートルの地点において、原速力のまま浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力4の南西風が吹き、和歌山県南部には大雨洪水警報及び雷、強風波浪注意報が発表されており、潮候は上げ潮の末期で視界は約800メートルであった。
 乗揚の結果、バージの左舷船首部船底外板に凹損を生じたが、自力で離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、田辺港に荒天避難の目的で、初めて入港する際、水路調査が不十分で、同港港外の浅礁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、田辺港に荒天避難の目的で、初めて入港する場合、同港の分図を備え付けていなかったのであるから、最寄りの海上保安部から分図の一部をファックスで入手するなど同港入港に当たって水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、備付けの小縮尺の海図によっても入港可能と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同港港外の浅礁に著しく接近して乗揚を招き、バージの左舷船首部船底外板に凹損を生じさせるに至った。





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