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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第47号
件名

油送船栄信丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月15日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(森田秀彦、平野浩三、河本和夫)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:栄信丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
指定海難関係人
B 職名:栄信丸機関長

損害
船首部から船体中央部の外板に凹損、船首水倉船底に亀裂

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年10月11日07時45分
 佐賀県加部島北東岸

2 船舶の要目
船種船名 油送船栄信丸
総トン数 199トン
全長 48.02メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 625キロワット

3 事実の経過
 栄信丸は、船尾船橋型鋼製油タンカーで、A受審人、B指定海難関係人ほか1人が乗り組み、A重油500キロリットルを積載し、船首2.60メートル船尾3.50メートルの喫水をもって、平成11年10月10日10時20分香川県坂出港を発し、長崎港に向かった。
 ところで、栄信丸の船橋には、居眠り警報装置が船橋操舵スタンド左横のレーダーの下部に装備されていて、船橋当直者が、同装置から船尾方向に発せられている1本の赤外線センサーを一定の時間内に遮らなければ音声表示が出され、さらにその音声表示が10回出る間にセンサーを遮らなければ警報ベルが鳴るようになっていた。また、同装置の電源は、操舵を自動操舵に切り替えると自動的に入り、自動操舵を解除するまではその電源を解除することができず、音声表示の設定時間間隔は12分毎に作動するように設定されていたが、操舵スタンド後方のいすに腰掛けた状態でもこのセンサーに手が届いた。
 A受審人は、船橋当直を同人が0時から4時、B指定海難関係人が4時から8時、甲板員が8時から12時の各時間帯とする単独4時間の三直制とし、出入港時、狭水道においては自ら操船に従事し、また、B指定海難関係人に対しては、平素から漁船が多いとき、視界が悪くなったとき、危険を感じたときなどには報告するよう指示していたが、船橋当直者の居眠り防止については、居眠り警報装置の取り付けにより、それまで指示していた眠気を催した際の報告について指示する必要がなくなった。
 翌11日04時00分A受審人は、倉良瀬灯台の北東約2.5海里の地点で、B指定海難関係人と船橋当直を交替するに当たり、周囲に危険な船舶がいないことを確かめて降橋した。
 B指定海難関係人は、前夜の当直終了後寝付かれず、00時ごろ就寝したことから十分に眠気が取れないまま船橋当直に入り、昇橋したころから眠気を覚えていたが、操舵スタンド後方のいすに腰掛けて見張りに当たり、要所では、いすに腰掛けたままで操舵を手動に切り替えて転針していた。
 06時30分B指定海難関係人は、灯台瀬灯標から138度(真方位、以下同じ。)1.0海里の地点に達したとき、針路を248度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.6ノットの対地速力で、自動操舵によって進行した。
 やがてB指定海難関係人は、周囲に他船を見かけなくなったことから、気が緩み次第に眠気が強くなってきたが、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、立ち上がって手動操舵とするなど居眠り運航の防止措置を取らないまま、依然いすに腰掛けて見張りに当たっているうち、いつしか居眠りに陥り、居眠り警報装置が音声表示を出していたが、無意識のうちにセンサーに手を触れて同器の警報を止めていた。
 07時36分半B指定海難関係人は、呼子平瀬灯台から158度0.6海里の、転針予定地点に達したが、依然居眠りに陥っていてこのことに気付かずに進行中、07時45分栄信丸は、肥前立石埼灯台から138度600メートルの地点において、原針路、原速力のまま、加部島北東岸に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は、乗揚の衝撃で目覚め、事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、船首部から船体中央部の外板に凹損及び船首水倉船底に亀裂を生じたが、巡視艇の救助を得て離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、唐津湾沖合を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、加部島北東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人等の所為)
  B指定海難関係人が、単独で船橋当直に就き、唐津湾沖合を航行中、眠気を催した際、立ち上がって手動操舵とするなど居眠り運航の防止措置をとらなかったことは本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては、本件後船橋当直を行わないとしている点に徴し、勧告しない。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。





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