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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第73号
件名

油送船第三浅川丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月12日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(亀井龍雄)

副理事官
尾崎安則

受審人
A 職名:第三浅川丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
球状船首部に破口、船首外板に凹損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年2月28日23時55分
 長崎県平戸瀬戸

2 船舶の要目
船種船名 油送船第三浅川丸
総トン数 499トン
登録長 60.24メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第三浅川丸(以下、「浅川丸」という。)は、船尾船橋型鋼製ケミカルタンカーで、A受審人ほか5人が乗り組み、重油800.021キロリットルを積載し、船首2.6メートル船尾4.3メートルの喫水をもって、平成12年2月27日14時30分和歌山県和歌山下津港を発し、熊本県長州港に向かった。
 A受審人は、航海当直を0−6時直船長、6−12時直一等航海士の6時間単独2直体制とし、瀬戸内海、関門海峡、玄界灘を航行し、平戸瀬戸を自身で操船して通行するため、いつもより少し早かったが、同月28日23時40分同瀬戸北口から2海里ほど手前で当直を引き継いだ。
 A受審人は、当直に就いたとき機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で進行し、23時53分少し前広瀬導流堤灯台から280度(真方位、以下同じ。)210メートルの地点で、針路を185度に定めて手動操舵によって平戸瀬戸を南下した。
 定針直後A受審人は、左舷前方の南風埼の陰から現れた反航船の白、白、緑3灯を認め、同船の動静を監視していたところ、やがて同船は南風埼を通過したが右転の様子がなく、緑灯を見せたまま進行してくるので、左舷を対して航過するため、23時53分半広瀬導流堤灯台から231度290メートルの地点で右舵5度をとって徐々に右転を始めた。
 A受審人は、黒子島北東岸に浅瀬が存在することは知っており、23時54分針路が215度となって黒子島の北東岸付近に向首したとき、黒いシルエットとなって見える同島との距離が十分にあるものと思い、レーダーで同島との相対位置関係を確認するなど船位の確認を十分に行わなかったので、同浅瀬との距離が300メートルほどになっていることに気付かず、針路215度のまま同浅瀬に向かって続航した。
 A受審人は、23時54分少し過ぎ左舷前方の反航船が黒子島東岸沖合で右転し、自船が左転して前方の浅瀬から離れる針路としても反航船と安全に航過できる状況となったが、なおも同船との航過距離をあけようと、依然として船位の確認を十分に行わないまま、浅瀬に著しく接近する215度の針路で続航し、同時55分少し前左舵20度として左回頭中、23時55分広瀬導流堤灯台から210度740メートルの地点において、船首が176度を向いたとき、原速力のまま、黒子島北東岸の浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、潮流はほぼ憩流時であった。
 乗揚の結果、球状船首部に破口を、船底外板に凹損を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、平戸瀬戸において、黒子島北東方沖合を南下中、他船を避航するため予定針路から離れる際、船位の確認が不十分で、黒子島北東岸に拡延する浅瀬に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、平戸瀬戸において、黒子島北東方沖合を南下中、他船を避航するため予定針路から離れる場合、黒子島北東岸に拡延する浅瀬との相対位置関係を知ることができるよう、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、浅瀬との距離はまだ十分にあるものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、浅瀬に著しく接近して乗揚げを招き、球状船首部に破口を、また船底外板に凹損を生じさせるに至った。





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