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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成11年門審第98号
件名

プレジャーボートジェミニ乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月22日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(供田仁男)

副理事官
新川政明

受審人
A 職名:ジェミニ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
バラストキールと舵板に曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年8月9日14時04分
 福岡湾長浜海岸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートジェミニ
総トン数 7.0トン
登録長 8.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 17キロワット

3 事実の経過
 ジェミニは、船底からの深さが1.25メートルのバラストキールを有し、補助機関を装備したFRP製ヨットで、A受審人が1人で乗り組み、福岡湾長浜海岸沖合に錨泊して海水浴に興じる目的で、知人4人を乗せ、船首尾とも0.5メートルの喫水をもって、平成10年8月9日11時00分福岡県博多港を発し、同港西側港界付近に位置する毘沙門山ふもとから西方に延びた同海岸の沖合に向かった。
 A受審人は、船内に海図第190号(福岡湾)を備えており、これには長浜海岸の海岸線に沿ってその100メートル、200メートル及び450メートル沖合に、それぞれ2メートル、5メートル及び10メートルの等深線が描かれていたものの、同海図に目を通したことがなかったので、このような水深状態を知らなかったが、以前に長浜海岸の近くで錨泊して不安を感じなかったことから問題ないものと思い、海図記載の水深を調べるなどの水路調査を十分に行うことなく、いったん毘沙門山の北方1海里付近まで北上したのち、長浜海岸を目指して福岡湾を南下した。
 12時00分A受審人は、折しも大潮の満潮時から1時間45分を経過して未だ潮位が高いころ、毘沙門山201メートル樹頂(以下「毘沙門山頂」という。)から288.5度(真方位、以下同じ。)565メートルの地点で、長浜海岸の波打ち際までおおよそ80メートルに接近し、投錨することとして漂泊したが、依然として海図に目を通さず、船位付近に2メートル等深線が走り、バラストキールを有する自船にとって低潮時の水深に余裕がないことに気付かないまま、直ちに友人の1人に命じ、船首から錨を投入させた。
 A受審人は、投錨後、友人達と昼食をとって全員で昼寝をし、14時00分ふと目を覚ましたところ、潮が引いて波打ち際が近くなっているのを認め、沖出しすることとし、友人を起こして錨を揚げさせ、同時04分少し前北西風を右舷方から受け、船首が204度に向いたとき、機関を半速力前進にかけ、右舵をとったものの、ジェミニは、舵効が現れないうち、14時04分毘沙門山頂から284度570メートルの地点において、原針路のまま、バラストキールが砂底質の海底に接触した。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、バラストキールと舵板に曲損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、福岡湾において、長浜海岸沖合で投錨するにあたり、水路調査が不十分で、低潮時の水深に余裕がないまま錨泊したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、福岡湾において、長浜海岸沖合で投錨する場合、同海岸付近の水深状態を知らなかったから、海図記載の水深を調べるなどの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、以前に長浜海岸の近くで錨泊して不安を感じなかったことから問題ないものと思い、海図記載の水深を調べるなどの水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、低潮時の水深に余裕がないことに気付かないまま錨泊し、潮位が下がったのを認めて沖出し中、砂底質の海底への乗揚を招き、バラストキールと舵板に曲損を生じさせるに至った。





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