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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年門審第12号(第1)
平成12年門審第104号(第2)
件名

(第1)プレジャーボートダイリュウ乗揚事件
(第2)プレジャーボートダイリュウ転覆事件

(第1)(第2)
事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月15日

審判庁区分
(佐和 明、供田仁男、相田尚武)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:ダイリュウ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

(第1)
損害
船尾船底部に長さ20センチの亀裂

原因
係留時の荒天対策不十分

(第2)
損害
沈没

原因
発航前の検査不適切

主文

(第1)
 本件乗揚は、係留時における荒天対策が不十分で、係留索が切断して漂流したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
(第2)
 本件転覆は、発航前の検査が不十分で、船底部に亀裂を生じたまま発航したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
(第1)
 平成10年7月4日11時55分
 山口県青海島北岸
(第2)
 平成11年7月24日05時50分
 山口県青海島北岸沖合

2 船舶の要目
(第1)(第2)
船種船名 プレジャーボートダイリュウ
全長 8.00メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 102キロワット

3 事実の経過
(第1)
 ダイリュウは、船外機を装備したFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人3人を乗せ、山口県青海島の青海島自然公園内において、勤務先関係者数十人が行う海水浴やバーベキューパーティーに参加する目的で、船首0.3メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成10年7月4日10時00分同県仙崎港沖第1防波堤南灯台の南東方1.2海里ばかりにあるマリーナ(フィッシャリーナ小島)を発し、11時00分同島の山島山三角点から251度(真方位、以下同じ。)1,950メートルの、同公園内に設けられている突堤の南面に至り、入船左舷付けで着岸した。
 ところで、同突堤は、青海島北岸の、日本海に面して西北西に開口する幅約130メートル奥行き約100メートルの小湾北岸に接し、湾奥からほぼ280度に向けて築造されており、その幅が3.6メートル長さが約40メートルであった。また、突堤の南側部分は1.0メートルの幅で、突堤上面から0.9メートル下がっており、その西端から0.3メートルのところにリングプレートが1個、同端から約4.0メートルと約7.3メートルのところにアイプレートがそれぞれ1個取り付けられ、小型船係留用の岸壁(以下「係船岸壁」という。)となっていた。
 係船岸壁前の海面は、その西端部から東側約20メートルまでの間は小型船の係留に適した水深があったが、そこから突堤基部にかけては浅礁と洗岩が存在しており、また、同基部から南南西方には長さ約60メートルの砂浜が広がっていた。
 A受審人は、直径25ミリメートルの化学繊維製索を係留索として用い、左舷船首部クリートから突堤基部寄りのアイプレートにほぼ正横方向に、左舷船尾クリートからリングプレートに正横より少し後方に向けて、それぞれ2メートル前後延出して係留した。そして、当時下げ潮の末期で、ダイリュウのブルワーク上部の位置は、係船岸壁上縁より0.5ないし0.6メートル低く、発航時に比べて強くなってきた西からの風で、係船岸壁に打ち寄せる波も高くなってきており、船体が前後に約1メートル、上下に約0.5メートル移動し、船体の動揺に伴って緊張した係留索が岸壁上縁角で擦れる状態となっていた。
 A受審人は、このことに気付いていたが、公園売店から軽トラックのタイヤ2本を借用してフェンダーとして用いただけで、まさか係留索が切断に至ることはないものと思い、船体の前後動を止めるためにスプリングラインの増し取りをしたり、係留索に擦れ止めの布を巻いたりするなど、荒天対策を十分に行うことなく、マリーナで積み込んだ食料や飲物を陸揚げし、砂浜で行われていたバーベキューパーティーに加わるため、11時30分同乗者3人とともにダイリュウを離れた。
 間もなくダイリュウは、船体の移動に伴って係留索が2本とも擦れて切断し、波に押されて係船岸壁沿いに漂流し、11時55分山島山三角点から250.5度1,920メートルの浅礁に船首をほぼ100度に向けた状態で乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力5の西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 12時00分ごろA受審人は、ダイリュウが乗り揚げているのを認め、知人約10人と海に入って同船を引き下ろし、12時30分ごろ係船岸壁に出船右舷付けの状態で再び係留するなど事後の措置あたった。
 乗揚の結果、船尾船底部に長さ20センチの亀裂などを生じた。
(第2)
 ダイリュウは、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人3人を乗せ、平成10年7月4日10時00分仙崎港沖第1防波堤南灯台の南東方1.2海里ばかりのマリーナを発し、11時00分山島山三角点から251度1,950メートルの、青海島自然公園内に設けられている係船岸壁に係留中、折からの風浪で係留索が切断して漂流、突堤基部付近の浅磯に乗り揚げたが、間もなく引き下ろされて再び同岸壁に出船右舷付け状態で係留された。
 ところで、ダイリュウは、船首前端から船尾方に向けて0.70メートルが瀬渡し台で、その後方3.00メートルがキャビンとなっており、キャビン後壁から後方2.92メートルの間に中央甲板が設けられ、同甲板部端部からその後方0.65メートルの間は同甲板上から一段高くなった船倉となっており、船倉後部から船尾端までの0.73メートルが船尾甲板で、同甲板後部はブルワークがなく、船外機が備え付けられていた。
 そして、キャビンの後壁には、操舵スタンド、船外機遠隔操縦装置などが取り付けられ、中央甲板前部右舷側にいすを設けて操縦席とし、同壁中央部には中央甲板からキャビンへ出入口のプラスチック製扉が設けられていた。
 中央甲板は、幅が1.9メートルで、キャビン後壁、両舷側のブルワーク及び船倉によって囲まれ、同甲板からブルワーク上縁までの高さが0.62メートル、船倉上面までの高さが0.42メートルで、同甲板後部両舷側にはそれぞれ船倉内を貫通して船尾甲板に至る水抜きがあった。
 また、キャビンの床は板を敷いた単底構造であったが、中央甲板と船倉及び船尾甲板の下は二重底構造で空所となっていたほか、両舷ブルワークの内張と外板との間にも空所がそれぞれ設けられていた。
 A受審人は、ダイリュウを係船岸壁に再び係留したものの、このころ更に波が高まって同岸壁にしぶきが打ち上がるようになっていたのでマリーナに戻ることとし、乗揚時に波による上下動で船体が損傷を受けたおそれがあったが、外見上異常が認められなかったことから大丈夫と思い、船底部の損傷や空所への海水の浸水の有無を確認するなど、発航前の検査を十分に行うことなく、船尾船底部に亀裂が生じて浸水していることに気付かず、発航を中止して浸水を止めたり、船体を近くの砂浜に引き揚げるなどの措置をとらなかった。
 こうして、A受審人は、機関を始動しようとしたところ、乗揚時に船外機吸気口にしぶきが侵入したものか、機関がなかなか始動せず、13時00分ようやく始動したので、知人1人を同乗させ、長さ3メートルの曳航索によって水上オートバイ1台を船尾に曳き、機関及び水上オートバイの状態に気を取られて、浸水により船体が沈下し始めていることに気付かないまま、喫水不詳の状態で同岸壁を発しマリーナに向かった。
 A受審人は、操縦席に腰を掛けて機関を微速力前進にかけ、沖合に多数存在する水上岩のうち北西端のものを目標にその西側に向かい、13時03分少し前山島山三角点から258度2,050メートルの地点に達したとき、同水上岩を右舷側30メートルばかり離してつけ回したのち、針路を030度に定め、引き続き機関を微速力前進にかけて3.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 13時05分少し前A受審人は、山島山三角点から261度1,950メートルの地点に差し掛かったころ、曳航していた水上オートバイの船首部分が水没しているのを認めて機関回転数を毎分1,000の極微速力前進としたところ、ダイリュウは、浸水により船体が沈下していたうえ、水上オートバイの前部が水没したことによる抵抗で負荷がかかって機関を自停した。
 A受審人は、機関の再始動を試みているうち、船尾に曳航している水上オートバイの影響で船首が風に落とされて東に向首したとき、高さ約1.5メートルの波が幾度か後方から船倉を越えて中央甲板に打ち込み、開放されていたキャビン後壁の出入口からキャビン内にも浸水し、ダイリュウは水船状態になって復原力を喪失し、13時15分前示の機関が停止した地点付近において右舷側に転覆した。
 当時、天候は晴で風力5の西風が吹き、波高は約1.5メートルで、潮候は下げ潮の末期であった。
 転覆の結果、間もなくダイリュウは沈没し、電気系統及び機関に濡れ損を生じたが、のち引き揚げられて修理された。

(原因)
(第1)
 本件乗揚は、山口県青海島北岸の日本海に面した小湾に設けられた係船岸壁に係留した際、荒天対策が不十分で、係留索が岸壁上縁角で擦れて切断し、漂流したことによって発生したものである。
(第2)
 本件転覆は、山口県青海島北岸から発航する際、発航前の検査が不十分で、船尾船底部の亀裂から浸水して船体が沈下したまま航行し、機関が停止したとき、船内に波が打ち込み、水船状態となって復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
(第1)
 A受審人は、日本海に面した青海島北岸の小湾に設けられた突堤南面の係留岸壁にダイリュウを係留して同船から離れる場合、西風が強まり波が高くなって船体が前後及び上下に移動しており、係留索が岸壁上縁角で擦れている状態であったから、スプリングラインを増し取りしたり、係留索に擦れ止めの布を巻くなど荒天対策を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、古タイヤをフェンダーとして用いただけで、まさか係留索が切断に至ることはないと思い、荒天対策を十分に行わなかった職務上の過失により、船体の前後動によって係留索が切断し、漂流して乗り揚げる事態を招き、船尾船底部に亀裂などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
(第2)
 A受審人は、山口県青海島北岸から発航する場合、発航少し前に船体が浅磯に乗り揚げていたのであるから、船底部の損傷や浸水の有無を確認するなど、発航前の検査を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、外見上異常が認められなかったことから大丈夫と思い、発航前の検査を十分に行わなかった職務上の過失により、船尾船底部の亀裂から浸水して船体が沈下し始めたことに気付かないまま発航し、機関が停止したとき船尾から波を受けて更に浸水し、復原力を喪失して転覆を招き、電気系統及び機関に濡れ損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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