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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年神審第14号
件名

プレジャーボートマイデス・タッチ乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月27日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(黒岩 貢)

理事官
橋本 學

受審人
A 職名:マイデス・タッチ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船外機の推進器翼が欠落、船底外板に破口を伴う擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年8月16日21時30分
 福井県鋸埼沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートマイデス・タッチ
登録長 6.79メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 128キロワット

3 事実の経過
 マイデス・タッチ(以下「マ号」という。)は、船体中央部に操舵室を備える船外機付FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、子供4人を乗せ、夜釣りの目的で、船首0.50メートル船尾0.60メートルの喫水をもって、平成11年8月16日17時00分福井県和田港を発し、同県鋸埼北西方3.3海里にある水深10メートルの高手礁(たかてぐり)付近の釣場に向かった。
 ところで、A受審人は、マ号にレーダーもGPSも装備しておらず、夜間における船位の確認には、灯台の灯光や陸地の見え具合に頼るしかなかったうえ、夜間航行の経験も少なかったが、日中、高手礁付近の釣場には何回も行っており、途中の鋸埼付近の地形や同埼沖合に拡延する険礁の存在もよく知っていたことから、高手礁付近の夜釣りに出かけたものであった。
 17時30分釣場に到着したA受審人は、鋸埼灯台から305度(真方位、以下同じ。)3.3海里の地点に投錨して魚釣りを始め、21時ごろ錨を揚げて帰途につくこととし、同時10分針路を鋸埼灯台の灯光とその東方1.3海里隔てた松ケ埼の黒い山影との中間に向首する119度に定めて発進し、機関を半速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 A受審人は、鋸埼と松ケ埼の中間地点で右転して小浜湾内に入るつもりで続航したところ、21時28分半右舷船首68度に見るようになった鋸埼灯台の灯光がかなり離れているように感じたため、予定の針路線より沖合に出ているものと判断し、小浜湾内に向けて転針することとしたが、同埼周辺の地形は熟知しているから大丈夫と思い、同灯台の灯光の方位や松ケ埼の見え具合などから船位を十分に確認していなかったので、このときすでに鋸埼灯台から009度650メートルの地点に達し、このまま転針すると、鋸埼沖合の険礁に著しく接近することに気付かなかった。
 こうしてA受審人は、針路を162度に転じたところ、鋸埼沖合の干出岩に向首することとなり、21時30分マ号は、鋸埼灯台から060度300メートルの地点において、原針路、原速力のまま同岩に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、マ号は、船外機の推進器翼が欠落し、船底外板に破口を伴う擦過傷を生じたが、のち修理され、A受審人ほか同乗者4人は、来援した船艇により救助された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、福井県鋸埼北西方の釣場から帰港する際、船位の確認が不十分で、同埼沖合の干出岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、福井県鋸埼北西方の釣場から帰港中、小浜湾内に向け転針する場合、同埼沖合に拡延する険礁に接近しないよう、鋸埼灯台の灯光の方位や松ケ埼の見え具合などから船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、鋸埼周辺の地形は熟知しているから大丈夫と思い、船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、同埼沖合の干出岩への乗揚を招き、船外機の推進器翼を欠落させ、船底外板に破口を伴う擦過傷を生じさせるに至った。





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