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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年横審第83号
件名

遊漁船仲丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月21日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(半間俊士)

理事官
古川 隆一

受審人
A 職名:仲丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底中央部外板に亀裂を伴う擦過傷

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年10月24日09時38分
 静岡県伊東港東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船仲丸
全長 10.57メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 125キロワット

3 事実の経過
 仲丸は、最大搭載人員10人のFRP製遊漁船で、A受審人が知人から借用して1人で乗り組み、友人と釣りを行うため、その友人を乗せる目的で、船首0.4メートル船尾0.9メートルの喫水をもって、平成11年10月24日09時30分静岡県伊東市川奈の定係地を発し、同県伊東港に向かった。
 ところで、伊東港第1防波堤灯台から東方約2,000メートルのところには手石島があり、同島とその南西方陸岸との間には浅瀬が拡延し、干出岩であるモジ根や同島から南南西方約500メートルのところに積石根と称する、大潮のときわずかに頂部が現れる浅所が存在したが、同島の北側及び東側は、同島から東南東方約500メートルに位置する水上岩である尾根を除いて、水深の深い安全な水域となっており、A受審人は、これまでに同島周辺で釣りをしていたので、同島周辺の浅瀬については知っていた。
 離岸後A受審人は、手動操舵で操船にあたり、09時31分少し前川奈東防波堤を右舷側至近に見る、川奈埼灯台から252度(真方位、以下同じ。)1,050メートルの地点で、尾根と手石島との間を航行する予定で、針路を尾根に向かう009度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力として進行した。
 A受審人は、09時34分少し前川奈埼灯台から307度1,050メートルの地点に達したとき、左舷船首24度1,200メートルのところで、手石島から南方約400メートルのところに潜水遊泳者の船を認め、同船から大きく離れて航行することとし、同島と尾根との間は潜水遊泳者が潜水していることが多い水域であったので、同水域を避けることとしたが、同島と陸岸との間には浅瀬が存在していたものの、これまでに3回ほど通航したことがあったことから無難に航行できるものと思い、尾根の東側から同島の北側を航行するなど、適切な針路を選定せず、積石根と陸岸との間を航行することとし、同時34分少し過ぎ川奈埼灯台から314度1,150メートルの地点で、針路を328度に転じたところ、積石根に向首することとなったが、このことに気付かず続航中、09時38分川奈埼灯台から321度2,250メートルの地点において、原針路、原速力のまま、積石根に乗り揚げ、航過した。
 当時、天候は晴で風力3の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
A受審人は、積石根を航過後、機関の警報音を聞き、機関室を見たところ浸水を認め、乗り揚げたことを知り、錨を投下したうえ事後の措置にあたった。
 乗揚の結果、船底中央部外板に亀裂(きれつ)を伴う擦過傷を生じて浸水し、錨泊後転覆して、来援した漁船に曳航(えいこう)されて伊東港に引き付けられ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、伊東港東方沖合の手石島付近を同港に向けて北上中、針路の選定が不適切で、同島と陸岸との間の積石根など浅所が存在する水域に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、伊東港東方沖合の手石島付近を同港に向けて北上中、同島の南方に潜水遊泳者の船を認め、予定針路である尾根と同島との間を航行することをやめた場合、同島の東側から北側を航行するなど適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、同島と陸岸との間には浅瀬が拡延し、干出岩や積石根など浅所が存在していたものの、これまでに3回ほど通航したことがあったことから無難に航行できるものと思い、同島の東側から北側を航行する適切な針路を選定しなかった職務上の過失により、積石根に向首進行して同根に乗り揚げ、船底中央部外板に亀裂を伴う擦過傷を生じさせて転覆させるに至った。





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