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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成13年函審第3号
件名

漁船第三十八豊漁丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月30日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(酒井直樹)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:第三十八豊漁丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
後部付近の船底外板が損傷し沈没、A受審人が両足指に凍傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月9日03時10分
 北海道稚内港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十八豊漁丸
総トン数 7.59トン
全長 11.75メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 第三十八豊漁丸(以下「豊漁丸」という。)は、かれい刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、操業の目的でA受審人が1人で乗り組み、船首0.40メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、平成11年12月9日03時00分北海道稚内港第1副港岸壁を発し、野寒布岬の北方7海里ばかりの漁場に向かった。
 発航時A受審人は、操舵室前面窓ガラスに薄氷が張って前方の見通しが妨げられる状況であったことから、操舵室右舷側通路の後部に立ったまま同室右舷側後部の出入口から、操舵室内前部中央の磁気コンパスの自動操舵ダイヤルに左手を差し伸べて操船に当たったが、、この操船場所からは、操舵室の外壁により左舷船首5度から左舷船尾方にかけて見通しが妨げられる状況であった。
 A受審人は、発航後間もなく機関を約6ノットの微速力前進にかけて第1副港水路を北上したのち副港防波堤入口を出航し、03時05分少し前、稚内港第2副港防波堤灯台から128度(真方位、以下同じ。)100メートルの地点に達したとき、針路を稚内港北防波堤灯台の南方24メートルの地点に向く074度に定めて自動操舵とし、機関を半速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で進行した。
 ところで稚内港は、北海道宗谷湾西側の野寒布岬の東岸に設けられ、同港の北部から東方に約500メートル延びたのち南東方に屈曲して約540メートル延び、更に東方に屈曲して約150メートル延びる北防波堤と、その突端の南方沖合約370メートルのところから南東方に約210メートル延びたのち東方に約900メートル延びる東防波堤及び北防波堤の南東方向屈曲部の東方沖合約200メートルのところから東方に約950メートル延びる北副防波堤とに囲まれて港口を東方に開いていた。
 また、北防波堤の突端には、稚内港北防波堤灯台が設置され同突端から東南東方18メートル沖合にかけて水深0.9メートルの消波ブロックの浅所が拡延していた。
 A受審人は、係留場所の第1副港岸壁から日本海漁場に向け出航する際は、副港防波堤入口出航したのち、北防波堤突端の南方に向け東行し、同突端を左舷側に航過したとき、大角度に左回頭して北防波堤の南東方向屈曲部と北副防波堤西端との間の水路を出航する近回りの進路をとっており、稚内港北防波堤灯台直下に消波ブロックの浅所が拡延していることを知っていたので、夜間は同灯台に接近することのないよう、転針目標の同灯台と稚内港北副防波堤東灯台との見通し線と稚内港東防波堤西灯台の方位などにより船位の確認を行っていた。
 A受審人は、出航を急いでいたので、稚内港北防波堤灯台に接航する前示針路のまま続航中、03時09分、同灯台が左舷船首5度235メートルに接近したとき、その灯光が操舵室の外壁に妨げられて視認できない状況となった。しかし、同人は、右舷前方に視認している稚内港東防波堤西灯台の距離を目測しただけで稚内港北防波堤灯台から十分離れているものと思い、操舵室左舷側通路に移動して転針目標の同灯台とその後方の稚内港北副防波堤東灯台とを見通したり、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行わなかったので、稚内港北防波堤灯台直下の消波ブロックの浅所に接航していることに気付かず、03時10分わずか前、同灯台から180度24メートルの地点に達したとき、自動操舵のまま左舵をとって左回頭を開始したところ、03時10分、稚内港北防波堤灯台から115度15メートルの地点において、015度に向いた豊漁丸の船底後部付近が半速力のまま同灯台直下の消波ブロックの浅所に乗り揚げ、これを擦過した。
 A受審人は、乗揚の衝撃で機関を停止する暇もなく操舵室右舷側通路から海中に投げ出された。
 当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は下げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
 乗揚の結果、豊漁丸は後部付近の船底外板に損傷を生じたが、無人のまま自動操舵により北上して北副防波堤の西部付近に衝突し、船体前部を圧壊して沈没し、A受審人は、北防波堤に泳ぎ着いて帰宅し、同業船の船長に豊漁丸の捜索を依頼したが、両足指に凍傷を負った。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、操舵室前面窓ガラスに薄氷が張って操舵室右舷側通路後部で操船されて北海道稚内港副港防波堤入口から稚内港北防波堤灯台南方の転針地点に向け東行中、操舵室の外壁により転針目標の同灯台の視認が妨げられた際、船位の確認が不十分で、同灯台に接航したまま左回頭し、同灯台直下の消波ブロックの浅所に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、操舵室前面窓ガラスに薄氷が張って操舵室右舷側通路後部で操船に当たって北海道稚内港副港防波堤入口から稚内港北防波堤灯台南方の転針地点に向け東行中、操舵室の外壁により転針目標の同灯台の視認が妨げられた場合、同灯台直下の消波ブロックの浅所に接航することのないよう、操舵室左舷側通路に移動して同灯台と、その後方の稚内港北副防波堤東灯台とを見通したり、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷前方に視認している稚内港東防波堤西灯台の距離を目測しただけで稚内港北防波堤灯台から十分離れているものと思い、操船場所を移動するなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同灯台に接航していることに気付かないまま左回頭し、同灯台直下に拡延する消波ブロックの浅所に向かって進行して乗揚を招き、豊漁丸の後部船底外板に損傷を生じさせ、その衝撃で自身が海中に投げ出されて両足指に凍傷を負い、無人となった豊漁丸を北副防波堤の西部付近に衝突させ、船体前部を圧壊、沈没させるに至った。





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