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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年函審第77号
件名

漁船萬漁丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年3月14日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(織戸孝治、大石義朗、大山繁樹)

理事官
熊谷孝徳

受審人
A 職名:萬漁丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板に破口し浸水、のち廃船処分

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年9月8日01時15分
 北海道紋別港港外

2 船舶の要目
船種船名 漁船萬漁丸
総トン数 19.30トン
登録長 16.74メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190

3 事実の経過
 萬漁丸は、かすべ固定式刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか3人が乗り組み、操業の目的で、船首0.8メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成11年9月6日23時00分北海道紋別港を発し、同港北北東方50海里ばかりの漁場に向かい、翌7日06時00分同漁場に到着して操業を行い、かすべ約2,300キログラムを漁獲したところで操業を打ち切り、帰途に就くため、同日18時00分紋別灯台から015度(真方位、以下同じ。)53海里の地点を発進し、南下を開始した。
 A受審人は、紋別港から漁場までの航海の大部分を船橋当直に当たり、また、操業中も揚網、かすべの取り外し及びかすべの切割作業に当たっていたが、他の乗組員の方が疲労していると思い、漁場発進時からも単独の船橋当直に就き、翌8日00時15分紋別灯台から055度7.8海里の地点に至り、針路を紋別港港外に向く221度に定め、機関を全速力前進にかけ8.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 定針後A受審人は、前路に他船を視認しなくなったので、操舵室内左舷寄りの床にあぐらをかいて座り、同室後壁に背中をもたせかけながらレーダーを監視して見張りに当たっていたところ、00時35分ごろ紋別灯台から062度5.2海里の付近で、睡眠不足などのため眠気を催したが、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、船員室で休息中の甲板員を起こして操舵室での見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとらないでいるうち、いつしか床にあぐらをかいて座ったまま居眠りに陥った。
 こうして萬漁丸は、A受審人が居眠りに陥ったため転針がなされず、紋別港港域外の同港第3防波堤外海離岸堤基部の消波ブロックに向首したまま続航し、01時15分紋別灯台から144度3,575メートルに設置してある前示消波ブロックに原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力3の南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船底外板に破口を生じて浸水し、サルベージ船により紋別港に引き付けられたが、のち廃船処分とされた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、漁場から紋別港に帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同港第3防波堤外海離岸堤基部の消波ブロックに向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就き、漁場から紋別港に帰航中、睡眠不足などにより眠気を催した場合、居眠り運航となるおそれがあったから、休息中の甲板員を起こして操舵室での見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに同受審人は、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、休息中の甲板員を起こして操舵室での見張りに立てるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥って、居眠り運航となり、同港第3防波堤外海離岸堤基部の消波ブロックに向首進行して乗揚を招き、船底外板に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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