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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年那審第40号
件名

漁船第2宮原丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年2月7日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、花原敏朗)

理事官
長浜義昭

受審人
A 職名:第2宮原丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底に破口

原因
錨地の選定不適切

主文

 本件乗揚は、錨地の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年5月29日01時50分
 鹿児島県横当島南岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第2宮原丸
総トン数 3.93トン
登録長 9.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 29キロワット

3 事実の経過
 第2宮原丸(以下「宮原丸」という。)は、一本釣り漁に従事するFRP製漁船で、A受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成12年5月27日13時00分鹿児島県思勝港を発し、同県横当島周辺の漁場に向かった。
 ところで、A受審人の操業形態は、日中横当島周辺の水深150メートルから200メートルの海域に、重さ55キログラムの5爪錨に長さ約5メートル直径9ミリメートル(以下「ミリ」という。)のワイヤをつけ、同ワイヤに長さ20メートル直径14ミリの合成繊維索と更に長さ400メートル直径12ミリの合成繊維の錨索とを結び、それを投じて一本釣り漁を行い、夜間には漁場付近に錨泊して休息をとりながら5日間ほど操業するものであった。また、同受審人は、横当島南側の水深20メートル以内の海底は切り立った岩で風向の変化とうねりとにより船体が振れ回り錨索が海底の岩に擦れて切断しやすい海域であることと、海上が平穏であれば水深150メートルほどの曽根に投錨して休息をとることができ、その海域では錨索が切断したことがないこととを知っていた。
 こうして、A受審人は、同日17時30分ごろ漁場に着き、横当島北方にある上ノ根嶼東側で錨泊して休息をとったあと、翌28日朝から操業を開始し、同日15時ごろ錨を根掛りして失い、以後、重さ40キログラムの予備錨に長さ3メートル直径9ミリのワイヤをつけ、同ワイヤに直径12ミリの合成繊維索を結んで使用して漁を続けた。
 A受審人は、28日の操業を終え、南寄りのうねりがあるものの海上が平穏な状況で、同日夜から翌日にかけて南西のち北のち南東の風が吹くとの天気予報を入手し、横当島の南側海域は錨索が切断しやすいことを知っていたが、北寄りの風を避けて島陰に錨泊すれば大丈夫と思い、水深が150メートルほどの曽根に投錨するなど、錨地の選定を適切に行うことなく、19時30分横当島495メートル頂から236度(真方位、以下同じ。)900メートルの水深8メートルの地点に、予備錨を投じ、錨索を約10メートル延出して錨泊を開始し、20時30分ごろ風向が北に変わったのを確認して船室に入り休息をとることにした。
 宮原丸は、A受審人が休息中、風向の変化とうねりとによって船体が振れ回り、錨索が海底の岩に擦れて切断し、南寄りのうねりにより横当島南岸に打ち寄せられ、翌29日01時50分横当島495メートル頂から236度850メートルの地点に、南東に向首して乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の南南東風が吹き、海上には南西からの短かくて弱いうねりがあり、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船底に破口を生じ、のち、救助船により引き下ろされて修理され、A受審人は、海上保安庁のヘリコプターによって救助された。

(原因)
 本件乗揚は、横当島周辺の漁場において、南寄りのうねりがあるものの海上が平穏な夜間、翌日にかけて南西のち北のち南東の風が吹くとの天気予報を入手し、休息のため錨泊する際、錨地の選定が不適切で、南寄りのうねりが打ち寄せる同島南側の海底が切り立った岩で錨索が切断しやすい地点に錨泊中、風向の変化とうねりとにより船体が振れ回り、錨索が海底の岩に擦れて切断し、うねりによって同島南岸に打ち寄せられたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、横当島周辺の漁場において、南寄りのうねりがあるものの海上が平穏な夜間、翌日にかけて南西のち北のち南東の風が吹くとの天気予報を入手し、休息のため錨泊する場合、同島南側の海底が切り立った岩で、風向の変化とうねりとにより船体が振れ回り錨索が海底の切り立った岩に擦れて切断しやすい地点であることと、海上が平穏であれば水深150メートルほどの曽根に錨泊することができその海域では錨索が切断したことがないこととを知っていたのであるから、水深が150メートルほどの曽根に錨泊するなど、錨地の選定を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、北寄りの風を避けて島陰で錨泊をすれば大丈夫と思い、水深が150メートルほどの曽根に投錨するなど、錨地の選定を適切に行わなかった職務上の過失により、錨索が切断しやすい同島の南側に錨泊して休息中、風向の変化とうねりとにより船体が振れ回り、海底の切り立った岩に錨索が擦れたことによって錨索を切断させ、うねりにより同島南岸に打ち寄せられて乗揚を招き、船底に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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