日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第39号
件名

貨物船第五山根丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年2月28日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三、森田秀彦、河本和夫)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:第五山根丸船長 海技免状:三級海技士(航海)

損害
右舷船首外板に破口、浸水、転覆のち解撒

原因
水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年12月8日18時28分
 北海道釧路港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第五山根丸
総トン数 546トン
全長 76.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット

3 事実の経過
 第五山根丸(以下「山根丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、平成10年12月8日05時30分北海道釧路港西区第1ふ頭東側第2号岸壁に着岸し、パルプ1,590トンを積載し、船首3.6メートル船尾4.6メートルの喫水をもって、同日17時50分同岸壁を発し、山口県岩国港に向けて出航した。
 ところで、釧路港東区の航路西端付近では、同港東区南副防波堤灯台から293度(真方位、以下同じ。)380メートルの地点と同方位430メートル地点間に平成10年6月から開始された築造中の長さ150メートル幅14メートル水面上高さ6メートルの防波堤が存在し、その周囲に工事区域を示す黄色点滅標識灯が約100メートル間隔で6個設置されており、このことについては、山根丸が船舶所有者から定期的に受け取っていた平成10年水路通報第27号7月10日発行及び第44号11月6日発行に掲載されていた。
 出航に先立つ同日13時00分A受審人は、天気予報により、北海道西方の日本海に中心を持つ低気圧から延びる寒冷前線が根室半島付近まで延び、その影響を受けて釧路地方では南西風が強くなることを知って、積荷終了が夕方であったことから、離岸後釧路港西区の防波堤の入口を出てから時化模様であれば、1年前に入港経験のある同港東区の防波堤内で避泊する予定であった。
 しかしながらA受審人は、出航に当たって使用海図が新造乗出しの平成10年3月に最新版を購入していたこと及び1年前の東区入港時には防波堤の築造工事が行われていなかったことから、同区の水路状況が1年前に入港したときと変化がないと思い、所有の水路通報により同区の水路調査を行っていなかったので、築造中の防波堤の存在に気付かなかった。離岸後A受審人は、自らが操舵操船に当たり、機関長を機関操作に当たらせ、18時00分釧路港西区防波堤入り口を通過し、船首配置を解き、210度の針路で機関を全速力前進にかけて機関回転数を徐々に上げながら進行中、南西風による高さ4ないし5メートルの波浪により動揺が大きくなってきたので、このまま航行することが困難と判断し、同港東区防波堤内で荒天避泊することとした。
 A受審人は、機関を半速力前進にかけて、左転し、同時13分半釧路港西区南防波堤西灯台から181度1,250メートルの地点において、東区航路西端に向けて築造中の防波堤に著しく接近した091度の針路に定め、機関を微速力前進にかけて7.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 18時19分少し前A受審人は、船首方1,700メートルのところに築造中の防波堤の工事区域を表示する黄色点滅標識灯3個を視認し、2海里レンジとしたレーダーによって確認したものの、海面反射で白くなったレーダー画面の中心近くに防波堤の映像が紛れ込んでいたことと操舵中に操舵輪から手を離して画面の調整が出来なかったこととにより防波堤の映像を識別できず、前示の黄色点滅標識灯を漁業用ボンデン標識の灯火と思い、荒天で築造中の防波堤が波間に見え隠れして防波堤を視認できないまま、同針路、同速力で続航した。
 18時24分少し過ぎA受審人は、釧路港東区南副防波堤灯台から280度1,040メートルの地点で、黄色点滅標識灯の間を通過するつもりで針路を092度に転じ、同時25分半前機関を極微速力前進に減速して、4.0ノットの対地速力で進行し、同時27分同標識灯を確認するつもりで前照灯を点灯して双眼鏡で確認したところ、ボンデンとしては間隔が狭く、船首至近に白い障害物らしきものを認め、異状を感じて機関中立、左舵一杯としたが、18時28分釧路港東区南副防波堤灯台から294度490メートルの地点において、原針路、原速力で右舷船首が水面下の防波堤消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力7の南西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、消波ブロック2個が損壊し、山根丸は、右舷船首外板に破口が生じたまま防波堤内に投錨し、19時12分船倉内に浸水して釧路港東区南副防波堤灯台から122度460メートル地点において復原力を喪失して転覆し、積荷は全損となり、船体は引き揚げられて解撤された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、釧路港において、荒天避泊のため同港東区に向かう際、水路調査が不十分で、築造中の防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、釧路港西区出航後、荒天避泊のため同港東区に向かう場合、当時東区では防波堤の築造工事が行われており、出航前には同区防波堤内での荒天避泊を考慮していたのであるから、出航に当たって水路通報などで水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は同港東区の水路状況が1年前に入港したときと変化がないと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、築造中の防波堤の存在に気付かないまま進行して乗揚を招き、右舷船首に破口を生じさせ、浸水して復原力を喪失し、転覆して船体及び積み荷を全損とさせるに至り、また防波堤の消波ブロックを損壊させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対して、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION