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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成11年広審第126号
件名

漁船第一事代丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年2月20日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(竹内伸二)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:第一事代丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
プロペラ、同シャフト及び舵に曲損、船底外板に破口と凹損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年12月21日05時00分
 島根県隠岐郡島後西岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船第一事代丸
総トン数 18トン
全長 19.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 529キロワット

3 事実の経過
 第一事代丸は、まき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首1.5メートル船尾2.2メートルの喫水をもって、平成10年12月20日17時00分島根県西郷港を出航し、僚船5隻とともに島後西岸の御埼南西方6海里ばかり沖合の漁場に向かい、灯船として魚群の探索にあたりながら操業に従事したのち、翌21日02時ごろ島後北岸の久見埼北方3ないし4海里沖合に移動して操業を続けた。
 04時20分A受審人は、久見埼北方3.3海里の地点で操業を終え、僚船とともに西郷港に向けて帰途につき、海図を備えていなかったものの、平素島後周辺を頻繁に航行して海岸の状況を熟知していたので、操舵室左舷側に設置されたレーダーやGPSプロッタを見て陸岸との接近模様を確かめ、あまり接近するようであれば適宜海岸から離すつもりで、ときどきレーダーを見ながら島後西岸沖合を南下した。
 04時49分A受審人は、隠岐福浦埼灯台(以下「福浦灯台」という。)から293度(真方位、以下同じ。)1.0海里の地点に達したとき、針路を167度に定めて自動操舵とし、機関を回転数毎分1,500の前進にかけ、15.0ノットの対地速力で竜ケ埼沖に向けて進行した。
 定針後A受審人は、操舵室右舷側の椅子に腰掛けて前路の見張りにあたり、竜ケ埼付近には夜標や人家などの明かりが無く、危険な岩礁が約300メートル沖合まで拡延していることを知っていたので、3海里レンジで使用中のレーダーを見ながら南下し、陸岸に近づいたら適宜沖に向けるつもりで続航した。
 04時56分A受審人は、福浦灯台から201度1.4海里の地点に達し、竜ケ埼まで1海里ばかりに接近したが、前方を見てまだ竜ケ埼まで距離があると思い、レーダーまたはGPSプロッタによって船位を十分確認することなく、原針路、原速力のまま進行中、05時00分第一事代丸は、福浦灯台から186度2.3海里の地点において竜ケ埼沖の岩礁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、プロペラ、同シャフト及び舵に曲損などを生じたほか、船底外板に破口と凹損を生じて機関室に浸水し、主機等に濡損が生じ自力航行不能となったが、起重機船によって引き下ろされ、西郷港に引き付けられたのち、いずれも新替または修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、島根県島後西岸沖合において、操業を終えて漁場から西郷港に帰航するため、竜ケ埼沖を航行する際、船位の確認が不十分で、同埼沖の岩礁に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、島根県島後西岸沖合において、操業を終えて漁場から西郷港に帰航するため、竜ケ埼沖を航行する場合、同埼沖の岩礁に接近しないよう、使用中のレーダーなどによって船位を十分確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、まだ竜ケ埼まで距離があると思い、使用中のレーダーなどによって船位を十分確認しなかった職務上の過失により、同埼沖の岩礁に向首進行して乗揚を招き、プロペラなどに損傷を生じさせたほか、船底外板に破口と凹損が生じて機関室に浸水し、主機等に濡損を生じさせるに至った。





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