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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年広審第55号
件名

貨物船第十八大栄丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年2月15日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(中谷啓二)

理事官
前久保勝己

受審人
A 職名:第十八大栄丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
船首部から中央部にかけての船底外板に凹損及び擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年11月15日00時20分
 瀬戸内海水島港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十八大栄丸
総トン数 199トン
全長 56.47メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 625キロワット

3 事実の経過
 第十八大栄丸(以下「大栄丸」という。)は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、鋼材607トンを積載し、船首2.5メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成11年11月13日01時00分茨城県鹿島港を発し、岡山県水島港に向かった。
 翌14日17時30分ごろA受審人は、紀伊水道を北上中、前直の甲板長から引き継ぎを受けて単独で船橋当直に就き、鳴門海峡から備讃瀬戸を西進し、翌15日00時11分ごろ下津井瀬戸西口を通過して水島港港界まで約1海里となったとき、徐々に北西方に針路をとり、同港界からほぼ北北西方に延び、予定錨地に続いている幅約250メートルの、灯浮標で示された水路(以下「水路」という。)に向かって続航した。
 ところで同水路の灯浮標設置模様は、その東側端を示すため、港界付近の水路入口にあたるところに、灯質が群閃赤光である水島港東第2号灯浮標(以下、灯浮標の名称については「水島港東」を省略する。)が、同灯浮標の北北西1,100メートルばかりに灯質が単閃赤光の第6号灯浮標がそれぞれ設けられ、水路西側端には、これに沿って灯質が緑光の各灯浮標が配置されているというものであった。
 A受審人は、これまで第2号灯浮標を左舷側に航過したのち左転して水路に入り、水路中央部を第6号灯浮標を右方に見て北上することとしていたが、第6号灯浮標の東側至近には浅所を伴う干出岩が存在しており、同人は、このことを平素から知っていた。
 00時13分半A受審人は、六口島灯標から067度(真方位、以下同じ。)1,650メートルの地点に達し、船首方1.1海里に単閃赤光の灯火を視認したとき、これが第6号灯浮標の灯火であったが、慣れた海域であったので、灯質を確かめるとか、レーダーを使用するとかして十分に船位を確認することなく、視認した灯火を第2号灯浮標の灯火と思い込み、いつものように同灯火を左舷側に航過してから水路に入ろうと針路を340度に定めて自動操舵とし、第6号灯浮標東側の浅所に向首することとなって、機関を全速力前進にかけ、9.8ノットの対地速力で進行した。
 00時16分半A受審人は、第2号灯浮標を左舷正横220メートルに航過したものの、折りから入港に備えて昇橋していた甲板長と専ら右方の陸岸の灯火を見ながら雑談をかわすなどしていて、左方の各灯浮標の状況を確かめるなどせず、依然、第6号灯浮標を第2号灯浮標と誤認していることに気付かず続航中、大栄丸は、00時20分六口島灯標から019度1.4海里の地点で、原針路、原速力のまま浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 その結果、船首部から中央部にかけての船底外板に凹損及び擦過傷を生じ、曳船により引き降ろされ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、水島港において、予定錨地に向け北上中、船位の確認が不十分で、可航水路を示す灯浮標を誤認し、浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、水島港港界付近を予定錨地に向け北上する場合、浅所に乗り揚げることのないよう、十分に船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、慣れた海域であったことから、十分に船位の確認を行わなかった職務上の過失により、可航水路を示す灯浮標を誤認して浅所に向首進行し、乗揚を招き、船首部から中央部にかけての船底外板に凹損及び擦過傷を生じさせるに至った。





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