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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成11年神審第124号
件名

貨物船第二御崎丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年2月15日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(西田克史、須貝壽榮、小須田敏)

理事官
清水正男

受審人
A 職名:第二御崎丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
球状船首及び船首船底部にそれぞれ凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年5月22日03時55分
 兵庫県明石海峡

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二御崎丸
総トン数 199トン
全長 57.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 588キロワット

3 事実の経過
 第二御崎丸は、主に瀬戸内海において飼料輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか1人が乗り組み、空倉のまま、船首0.5メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成11年5月21日17時40分愛媛県新居浜港を発し、神戸港に向かった。
 これより先、A受審人は、同日02時10分新居浜港で錨泊し、08時岸壁にシフト後、陸上のクレーンにより揚荷が開始されたが、午前中は自室で休息を取るなどして過ごし、午後から機関長とともに倉内に入り、揚荷しやすいように倉内の隅に残った飼料の掻き出し作業に従事したものの、過重な作業ではなかったので、荷役終了直後の発航時において、疲労が蓄積している状況ではなかった。
 そして、A受審人は、船橋当直を機関長と2人による単独6時間交替制とし、出航操船を終えたところで、いつものように18時から24時までの時間帯を担当する機関長に当直を引き継ぎ降橋した。その後、A受審人は、20時に就寝して22時45分に起床し、コーヒーを飲んだり、甲板に出て外気に当たるなどして眠気を覚ましてから、23時45分小豆島南方沖合で昇橋し、機関長と交替して東行を続けた。
 翌22日00時45分A受審人は、大角鼻灯台から094度(真方位、以下同じ。)5.4海里の地点で、針路を播磨灘の推薦航路線に沿う067度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.1ノットの対地速力で、立ったまま見張りに当たって進行した。
 03時20分A受審人は、江埼灯台から260度3.4海里の地点に達したとき、船首少し左に見える、次の転針目標である明石海峡航路中央第1号灯浮標をレーダーで3.2海里に確認したのち、少し楽な姿勢をとるつもりで、胸の高さに当たるレーダーの頂部を両手で抱え込むようにして寄り掛かり、折から微弱な南南西流に抗して9.8ノットの対地速力で続航した。
 間もなく、A受審人は、海上平穏で視界も良く、周囲に他船が見当たらなかったことから気が緩み、眠気を催すようになったが、転針地点まであとわずかなので、まさか居眠りすることはないと思い、ウイングに出て外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとることなく、依然、レーダーに寄り掛かっているうち、いつしか居眠りに陥った。
 こうして、A受審人は、03時39分半明石海峡航路西口に至り、航路に沿って航行する針路に転じる地点であったものの、居眠りしていたので転針することができず、同航路を斜めに横断して進行し、同時55分少し前ふと目を覚まし、船首至近に陸岸を視認して驚き、右舵をとったが効なく、03時55分江埼灯台から049度2.5海里の地点で、第二御崎丸は、兵庫県明石港東方の陸岸沿いに設置された消波堤に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、球状船首及び船首船底部にそれぞれ凹損を生じたが、手配したサルベージ船によって引き下ろされ、のち修理され、消波堤の一部が欠損した。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、明石海峡航路西口に向かって東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、予定の転針が行われないまま、兵庫県明石港東方の陸岸沿いに設置された消波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就いて明石海峡航路に向かって東行中、レーダーの頂部を両手で抱え込むようにして寄り掛かっているうち、眠気を催すようになった場合、居眠り運航とならないよう、ウイングに出て外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、航路西口の転針地点まであとわずかなので、まさか居眠りすることはないと思い、ウイングに出て外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、航路に沿って航行する針路に転じることができず、航路を斜めに横断し、明石港東方の陸岸沿いに設置された消波堤に向かって進行して乗揚を招き、球状船首及び船首船底部にそれぞれ凹損を生じさせ、同堤の一部を欠損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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