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平成12年神審第96号
件名

漁船宝丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年2月14日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正、黒岩 貢、西林 眞)

理事官
高橋昭雄

受審人
A 職名:宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:宝丸甲板員

損害
船首下部、船体中央部船底及び船尾下部にそれぞれ破口、B指定海難関係人が頭部打撲及び挫創

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年8月14日05時00分
 兵庫県坊勢島東岸

2 船舶の要目
船種船名 漁船宝丸
総トン数 10トン
全長 17.50メートル
機関の種 ディーゼル機関
出力 364キロワット

3 事実の経過
 宝丸は、まき網漁業の漁獲物運搬に従事するFRP製漁船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか1人が乗り組み、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成10年8月14日04時40分兵庫県相生港を発し、同県坊勢漁港に向かった。
 これより先、A受審人は、13日19時00分相生港に入港して漁獲物の水揚げ作業を行い、23時00分同作業を終え、B指定海難関係人と甲板員を伴い、相生市街に出かけて飲食したのち、翌14日03時00分全員が帰船して眠りに就き、04時30分起床し、出航準備のため同指定海難関係人と甲板員を起こしたものの、自らを含めて全員の睡眠時間が不足し、極度の眠気を感じていた。しかしながら、A受審人は、今日は休漁日なので帰港してから休息を取ると告げ、操舵室で、みんなで雑談しながら航行すれば、居眠り運航となることはあるまいと思い、出航を延期するなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 こうして、A受審人は、04時44分少し過ぎ蔓島灯台から017度(真方位、以下同じ。)1,020メートルの地点において、自らは操舵室左舷側後部の台に船首を向いて腰を下ろして指揮を執り、B指定海難関係人を操舵に、甲板員を見張りに就かせ、針路を161度に定め、機関を全速力前進にかけ、27.0ノットの対地速力で進行した。
 04時54分A受審人は、3人で雑談しながら南下するうち、いつしか話が途切れるようになり、坊勢港長井4号防波堤灯台(以下、灯台の名称は「坊勢港」を省略する。)から324度3,150メートルの地点に達したとき、針路を坊勢島の坊埼沖合に向かう142度に転針して続航したところ、操舵室右舷側後部の台に座って見張りに当たっていた甲板員が居眠りを始めた様子を見て、自らも眠気を堪えきれず、まもなく、居眠りに陥った。
 B指定海難関係人は、A受審人と甲板員の2人が居眠りしている様子を見ながら、いすに座って操舵に当たり原針路のまま南下し、04時57分少し過ぎ坊埼沖合に達したとき、眠気を生じて、これを堪えることができなくなったが、A受審人にこのことを報告して交替せず、同時58分少し前長井4号防波堤灯台から094度200メートルの地点で、針路を166度に転じて南下を続け、同時59分少し過ぎ西ノ浦西1号防波堤灯台から066度400メートルの地点に達したとき、坊勢漁港に向けるため右舵を取っているうち、いつしか居眠りに陥った。
 宝丸は、適切な操舵がされないまま坊勢島東岸に向かって進行し、05時00分西ノ浦西1号防波堤灯台から207度400メートルの地点において、船首を233度に向けて、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風はなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
 A受審人は、衝撃を感じて目覚め、事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、船首下部、船体中央部船底及び船尾下部にそれぞれ破口を生じたが、クレーン船により吊り下げられて坊勢漁港に運ばれ、のち修理され、また、B指定海難関係人が、頭部打撲及び挫創を負った。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、兵庫県相生港を出航し、同県坊勢漁港に向け帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、同漁港出入り口南側の陸岸に向首する針路のまま進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは、船長が出航を延期しなかったことと、操舵を任された甲板員が眠気を生じた際、船長に報告しなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
 A受審人は、夜間、兵庫県相生港を出航する場合、相生市街で長時間飲食したことにより睡眠時間が不足し、極度の眠気を感じていたのであるから、居眠り運航とならないよう、出航を延期するなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、操舵室で、みんなで雑談しながら航行すれば、居眠り運航となることはあるまいと思い、出航を延期するなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、相生港を出航して南下中、自らも、また、操舵を任せていたB指定海難関係人も居眠りに陥り、坊勢島東岸に向首する針路のまま進行して乗揚を招き、船首下部、船体中央部船底及び船尾下部にそれぞれ破口を生じ、B指定海難関係人に頭部打撲及び挫創を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B指定海難関係人は夜間、操舵を任されて、兵庫県坊勢漁港出入り口付近に向って航行中、眠気を催した際、そばで寝ている船長に報告して交替しなかったことは、本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては、勧告しない。

 よって主文のとおり裁決する。 





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