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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年長審第59号
件名

プレジャーボート敦丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年1月31日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平野浩三、亀井龍雄、河本和夫)

理事官
喜多 保

受審人
A 職名:敦丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
推進器翼の脱落、推進器軸の切断、舵板の曲損、船底外板の擦過傷

原因
水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が不十分で、水面下の干出岩に向かって進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年11月6日16時40分
 長崎県野母埼沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート敦丸
全長 10.56メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 95キロワット

3 事実の経過
 敦丸は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、同乗者3人を乗せ、船首0.15メートル船尾1.25メートルの喫水をもって、平成11年11月6日06時00分長崎県茂木港を発し、同県野母埼から北西3海里に位置する三ツ瀬沖合の釣り場に向かった。
 ところで野母埼沖合には、5メートルの等深線が陸岸から300ないし500メートル張り出し、その等深線内の上五島瀬及び下五島瀬には多数の干出岩が存在し、A受審人は、以前に野母埼沖合を航行したとき干出岩を見たことがあり、それらが距岸300メートル以内に存在するものと推測し、目測でそれより沖合を航行すれば大丈夫と思い、発航に当たって野母埼の陸岸からどの程度離せば安全に航行できるかを確かめることができるよう、海図など使用して水路調査を行っていなかった。
 07時00分A受審人は、釣り場に至って釣りを行い、16時30分三ツ瀬灯台から101度1,300メートルの地点において釣りを終え帰航することとし、野母埼沖合には干出岩が見えなかったことから、針路を163度に定めたが、同針路上の距岸450メートルの水面下に存在する上五島瀬の干出岩に気付かず、機関を前進にかけ、12.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 16時35分A受審人は、三ツ瀬灯台から138度1.5海里の地点において、同乗者が釣り道具の片付けが終わったことから、機関を全速力前進にかけ19.0ノットの対地速力とし、同針路のまま続航し、同時40分わずか前前路に漁船を認めて針路を右方に転じたところ16時40分大立神灯台から315度830メートルの地点において、水面下の干出岩を乗り切った。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、推進器翼の脱落、推進器軸の切断、舵板の曲損、船底外板の擦過傷などの損傷をそれぞれ生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、長崎県野母埼の干出岩が多数存在する海域を航行する際、水路調査が不十分で、上五島瀬の水面下の干出岩に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人が、長崎県野母埼の干出岩が多数存在する海域を航行する場合、野母埼沖合には干出岩が存在することを知っていたのであるから、発航に当たって野母埼付近について陸岸からどの程度離せば安全に航行できるかを確認できるよう、海図を使用するなど水路調査を行うべき注意義務があった。しかしながら同人は、目測による推測で陸岸から300メートル離して航行すれば大丈夫と思い、野母埼付近の水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、上五島瀬の水面下の干出岩に気付かないまま進行して乗揚を招き、推進器翼の脱落、推進器軸の切断、舵板の曲損、船底外板に擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項に規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 





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