日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成12年横審第109号
件名

プレジャーボート竜徳丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成13年1月23日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(西村敏和)

理事官
小金沢重充

受審人
A 職名:竜徳丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底部に凹損、両舷推進器軸、同翼及び左舷舵に損傷

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年4月23日10時00分
 浦賀水道笠島

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート竜徳丸
総トン数 10トン
全長 14.93メートル
登録長 11.96メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 419キロワット

3 事実の経過
 竜徳丸は、2基2軸を備えた最大搭載人員13人のFRP製交通船兼作業船で、A受審人が1人で乗り組み、知人3人と子供2人を乗せ、釣りの目的で、船首0.85メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、平成12年4月23日06時00分定係地である横須賀港第7区浦賀のマリーナを発し、千葉県富津岬南方約2海里の釣場に向かい、同釣場において約20分間釣りを行ったが、釣果がなかったので、神奈川県金田湾三ツ磯付近の釣場に移動し、07時20分同釣場において漂泊して釣りを始めた。
 A受審人は、ここでも釣果が上がらなかったことから、再度釣場を移動することにし、南西風が強くなったので、浦賀水道を北上して横須賀港第5区の大津湾に向かうことにして、09時50分海獺島灯台から245度(真方位、以下同じ。)4,200メートルの地点を発進し、操舵室右舷側の操縦席に腰を掛けて手動操舵にあたり、針路を093度に定め、機関回転数毎分2,200のほぼ全速力前進にかけ、20.0ノットの対地速力で進行し、同時55分少し前、海獺島灯台から227度2,700メートルの海獺島西方に向ける転針地点に達し、転針方向の状況を確認したところ、海獺島南西方に釣船2隻が漂泊しているのを認めたので、これを避けて海獺島東側海域を北上することにして、転針せずにそのまま続航した。
 ところで、浦賀水道の海獺島東側海域は、海獺島灯台から108度210メートルのところに、略最低低潮面で0.9メートル干出する笠島が存在し、また、同灯台から090度150メートルのところには、略最低低潮面で水深0.8メートルの暗岩が存在するなど、船舶の航行に危険な海域となっていることから、笠島から108度140メートルのところに東方位標識である笠島灯浮標が設置され、同灯浮標の東方に安全な海域が存在することが示されていた。
 A受審人は、平成8年からプレジャーボートで釣りに出かけるようになり、同11年に竜徳丸を購入して以来、同船で横須賀港から城ケ島沖合にかけての神奈川県沿岸や富津岬から館山湾沖合にかけての千葉県沿岸に釣りに出かけ、海獺島付近を頻繁に航行していたが、いつも同島と久里浜湾との間を航行し、同島東側海域を航行したことはなかった。
 A受審人は、海獺島東方に向けて転針するに当たり、同島東側海域の水路事情をよく知らなかったので、GPSプロッタの表示を確認したところ、同プロッタには海獺島と笠島灯浮標は表示されていたものの、干出岩である笠島が表示されておらず、目視によっても航行上の障害となるような物は視認できなかったことから、海獺島と笠島灯浮標との間を航行しても大丈夫と思い、備付けの海図第1062号(東京湾中部)により、同海域の水路調査を十分に行わなかったので、笠島の存在に気付かず、09時56分半、海獺島灯台から205度2,100メートルの地点に達し、東京電力横須賀火力発電所防波堤東端を左舷正横1,800メートルに見て、徐々に左転を始めた。
 こうして、A受審人は、09時57分少し過ぎ、海獺島灯台から194度1,650メートルの地点において、針路を021度に転じ、海獺島灯台と笠島灯浮標のほぼ中間に向けたところ、水没中の笠島に向首することになったが、転針後もGPSプロッタの表示に頼り、海図によって水路調査を十分に行わなかったので、このことに気付かないまま進行中、10時00分海獺島灯台から108度210メートルの地点において、原針路、原速力のまま、笠島に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力5の南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、潮高は約90センチメートルであった。
 A受審人は、離礁したものの、両舷推進器などを損傷して航行不能となり、直ちにBAN(ボート アシスタンス ネットワーク)に対して救助を要請し、漂流していたところを巡視艇に救助された。
 乗揚の結果、竜徳丸は、船底部に凹損を生じたほか、両舷推進器軸、同翼及び左舷舵に損傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、浦賀水道の海獺島東側海域を北上する際、水路調査が不十分で、水没中の干出岩である笠島に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、浦賀水道の海獺島東側海域を北上する場合、同海域を航行するのは初めてであり、同海域の事情をよく知らなかったのであるから、備付けの海図により水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、GPSプロッタの表示を確認したところ、海獺島の東側海域には笠島灯浮標が表示されていたものの、その間には他に表示がなかったことから、航行上の障害となる物は存在しないものと思い、海図により水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、前路に水没中の干出岩である笠島が存在することに気付かないまま進行して乗り揚げ、竜徳丸の船底部に凹損及び両舷推進器などに損傷を生じさせるに至った。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION