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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年長審第60号
件名

交通船まるぜん浮防波堤衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月30日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(亀井龍雄、森田秀彦、河本和夫)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:まるぜん船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
まるぜん・・・船首下部を圧壊、A受審人が頭部割創、胸部打撲、 乗客1人が頭部打撲
浮防波堤・・・擦過傷

原因
見張り不十分

主文

 本件衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年11月3日13時50分
 熊本県横浦漁港

2 船舶の要目
船種船名 交通船まるぜん
総トン数 5.7トン
登録長 11.01メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 220キロワット

3 事実の経過
 まるぜんは、熊本県の横浦島にある横浦漁港を基地とし、天草上島南岸、御所浦島、牧島等の諸港を回るFRP製海上タクシーで、A受審人が1人で乗り組み、船首0.35メートル船尾1.30メートルの喫水をもって、平成11年11月3日13時40分横浦漁港の係留地を発し、乗客が待っている横浦島南岸に向かった。
 A受審人は、操舵室右舷側の操縦席に腰掛けて操船にあたり、13時48分少し前横浦島198メートル頂(以下、「198メートル頂」という。)から231度(真方位、以下同じ。)460メートルの地点で、同島防潮堤に船首を付けて乗客2人を乗せ、同時48分天草上島南岸の棚底港に向けて発進した。
 A受審人は、後退して離岸の後、船尾を右に振って左回頭し、13時49分少し前198メートル頂から227度510メートルの地点において、針路を、右舷前方300メートルほど離れたところにある鋼製浮防波堤の10メートルほど沖合に向く298度に定め、機関を半速力前進にかけ8.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 13時49分少し過ぎA受審人は、操縦席の左側に立っていた乗客と料金のやりとりを始め、左横を向いて右手で舵輪を操作しながら進行したところ、やがて針路が少しずつ右に振れ、次第に浮防波堤に向首する状況となったが、前方の見張りがおろそかになっていたのでこのことに気付かないまま続航した。
 A受審人は、操縦席の左斜め前にある小銭入れから左手で釣銭を取り出しながら進行中、13時50分198メートル頂から254度640メートルの地点において、302度に向首した船首が、原速力のまま浮防波堤南東面に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好であった。
 衝突の結果、浮防波堤に擦過傷を生じ、まるぜんは船首下部を圧壊したうえ操舵室が倒壊し、A受審人が頭部割創、胸部打撲、乗客の1人が頭部打撲、顔面、右下腿等挫創を負い、他の1人が前額部挫創、右肩、左膝等打撲を負った。

(原因)
 本件衝突は、熊本県横浦漁港において、離岸回頭後直進する際、前方の見張りが不十分で、浮防波堤に向首して進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、熊本県横浦漁港において、乗客を乗せて離岸回頭後直進する場合、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、乗客との料金の授受に気を取られ、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、浮防波堤に向首していることに気付かないまま進行して衝突を招き、船首部を圧壊させたうえ操舵室を倒壊させ、自身が割創、打撲傷等を負ったほか、乗客2人に挫創、打撲傷等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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