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平成12年神審第124号
件名

プレジャーボートシー エイチ ケイII護岸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月23日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(西田克史、阿部能正、小須田 敏)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:シー エイチ ケイII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
船首部に破口を伴う損傷、同乗者1人が歯槽骨骨折

原因
針路選定不適切

主文

 本件護岸衝突は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年7月13日21時30分
 三重県四日市港第3区

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートシー エイチ ケイII
全長 9.8メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 154キロワット

3 事実の経過
 シー エイチ ケイII(以下「シー号」という。)は、操舵室上方にフライングブリッジを有し、レーダーを装備しないFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同僚3人を乗せ、改修工事の目的で、船首0.35メートル船尾0.55メートルの喫水をもって、平成10年7月13日14時00分三重県四日市港第3区北部の、富州港と呼ばれる港奥の船だまりを発し、同県鳥羽港に向かった。
 ところで、四日市港第3区では、霞ヶ浦南ふ頭北西壁面に接続して同ふ頭北方沖合に霞ヶ浦北ふ頭を建設するため、埋立地の造成工事が行われており、その外周の護岸がすでに完成し、富洲原灯台から105度(真方位、以下同じ。)870メートルの地点が護岸の北東端に当たり、同端から205度680メートルに亘って東側の護岸(以下「東護岸」という。)が築造されていた。そして、東護岸前面には消波ブロックが敷かれ、ブロック頂部から護岸までの高さは360センチメートルで、低潮時にはブロック頂部がわずかに海面に露出する状況であった。
 また、埋立地北側の護岸と船だまりのある陸岸との間が幅約300メートルで、維持水深7.5メートルの堀下げ水路(以下「水路」という。)が通り、水路は、護岸北東端辺りから幅約200メートルとなって東南東方に向かって約1,200メートル延び、その左右両側及び東口付近には右舷及び左舷標識の各灯浮標が設置されていた。
 A受審人は、船だまりを発進し、その入口近くに架かった富州原橋の下を通り抜け、水路に入ってこれに沿って東行し、いつものように水路東口から出て南下ののち、15時30分鳥羽港に到着して修理家屋の点検を終え、20時00分帰途に就いた。
 A受審人は、フライングブリッジの操縦席に腰を下ろし、操舵と見張りに当たり、四日市港港界を越えて間もなく、21時13分四日市港昭和四日市石油第1号シーバース灯から122度950メートルの地点に達したとき、数個の紅色灯火が垂直に取り付けられた中部電力川越火力発電所の2本の煙突の間を船首目標に、針路を347度に定め、機関を全速力前進にかけ、20.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 21時23分A受審人は、富洲原灯台から134度2.1海里の地点に至り、霞ヶ浦防波堤東端の東南東方1,000メートルのところに差し掛かったとき、左舷前方に街路灯に照らし出された青色の橋を視認し、船だまり近くの富州原橋であることが分かり、近道をするつもりでこれに向けることを思い立った。この時点で、同人は、富州原橋に向けるとやがて東護岸に接近する状況となることを知っていたが、同護岸に接近したところで右転して水路に入ればよいと思い、平素のように水路東口から入航する安全な針路を選定することなく、316度の針路に転じて続航した。
 21時26分少し前A受審人は、富洲原灯台から130度1.2海里の地点で、用心のため10.0ノットの対地速力に減じて進行したけれども、東護岸に気付かないで進行するうち、船首部に衝撃を受け、21時30分富洲原灯台から126度880メートルの地点に当たる、護岸北東端から300メートル南方の東護岸に、シー号は、原針路、原速力のまま、その船首が69度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で、風力2の北北東風が吹き、潮候は高潮時に当たり、潮高は238センチメートルであった。
 衝突の結果、船首部に破口を伴う損傷を生じたが、のち修理され、同乗者1人が歯槽骨骨折を負った。

(原因)
 本件護岸衝突は、夜間、三重県四日市港第3区の船だまりに帰航する際、針路の選定が不適切で、東護岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、四日市港第3区の船だまりに帰航中、霞ヶ浦防波堤東端の東南東方1,000メートルのところに差し掛かった場合、船だまり近くの富州原橋に向けるとやがて東護岸に接近する状況となることを知っていたのであるから、平素のように水路東口から入航する安全な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、東護岸に接近したところで右転して水路に入ればよいと思い、平素のように水路東口から入航する安全な針路を選定しなかった職務上の過失により、近道をするつもりで富州原橋に向けて転針し、東護岸に向首進行して衝突を招き、船首部に破口を伴う損傷を生じさせ、同乗者1人に歯槽骨骨折を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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