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平成12年神審第40号
件名

貨物船第一有明丸貨物船第一あかつき衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月13日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(阿部能正、黒岩 貢、小須田 敏)

理事官
橋本 學

受審人
A 職名:第一有明丸一等航海士 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:第一あかつき一等航海士 海技免状:六級海技士(航海)

損害
有明丸・・・右舷側後部外板に凹損
あかつき・・・左舷船首ブルワークが曲損

原因
有明丸・・・追い越しの航法(避航動作)不遵守(主因)
あかつき・・・動静監視不十分、警告信号不履行、追い越しの航法 (協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第一あかつきを追い越す第一有明丸が、動静監視不十分で、第一あかつきの進路を避けなかったことによって発生したが、第一あかつきが、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年6月26日04時00分
 和歌山県潮岬西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第一有明丸
総トン数 3,692トン
全長 114.54メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 7,060キロワット

船種船名 貨物船第一あかつき
総トン数 480トン
全長 77.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,103キロワット

3 事実の経過
 第一有明丸(以下「有明丸」という。)は、ロールオンロールオフ式の船首船橋型自動車運搬船で、A受審人ほか11人が乗り組み、乗用車など225台を積載し、船首3.5メートル船尾5.5メートルの喫水をもって、平成10年6月25日12時20分千葉港を発し、大阪港に向かった。
 翌26日03時45分A受審人は、潮岬灯台から233度(真方位、以下同じ。)4.8海里の地点において、前直の二等航海士から針路及び速力をそのまま引き継いだのち、甲板手1人とともに船橋当直に就き、法定灯火を表示して、針路292度及び18.0ノットの対地速力(以下、速力は対地速力である。)で、自動操舵により進行した。
 A受審人は、03時50分潮岬灯台から247度5.7海里の地点に達したとき、右舷船首35度1.3海里のところに、先航する第一あかつき(以下「あかつき」という。)の船尾灯を初めて認めたが、右舷側に離れていることから、いちべつしただけで、無難に航過できるものと思い、衝突のおそれの有無を判断できるよう、コンパスの方位変化を確かめるなどして、その動静監視を十分に行うことなく、間もなく操舵室左舷側の海図台に赴き、可動式自動車甲板の調子が悪いので、その取扱説明書を出して見ながら続航した。
 A受審人は、その後、あかつきに衝突のおそれがある追い越し態勢で接近したが、海図台で取扱説明書に見入り、依然動静監視不十分で、このことに気付かず、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けないまま、同一針路、速力で進行し、また、同直の甲板手も操舵室後部でお茶を入れていて、あかつきの接近に気付かなかった。04時00分わずか前A受審人は、あかつきの紅灯と船体を右舷正横間近に視認し、衝突の危険を感じ、手動操舵に切り替えて左舵を取ったが、時既に遅く、04時00分潮岬灯台から262度8.0海里の地点において、有明丸は、原針路、原速力のまま、その右舷後部が、あかつきの左舷船首に、後方から22度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力3の南南西風が吹き、視界は良好であった。
 また、あかつきは、船尾船橋型の貨物船で、B受審人ほか4人が乗り組み、飼料600トンを載せ、船首2.5メートル船尾3.9メートルの喫水をもって、同月25日12時00分清水港を発し、鹿児島港に向かった。
 B受審人は、翌26日03時20分潮岬灯台から180度1.1海里の地点において、単独の船橋当直に就き、法定灯火を表示して、針路を270度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.9ノットの速力で、自動操舵により進行した。
 03時34分半B受審人は、潮岬灯台から248度3.1海里の地点に達したとき、左舷船尾56度3.5海里のところに、6海里レンジとしたレーダーで有明丸の映像を探知し、少しの間これを見守り、同航船であることを知って肉眼で確かめたところ、ほぼ同方位に同船の白、白、緑3灯を初めて認めた。そして、同受審人は、その灯火模様から大型船で速力が速いと感じたが、見え具合から有明丸が左舷側を無難に通過して行くものと思い、衝突のおそれの有無を判断できるよう、コンパスの方位変化を確かめるなどして、その動静監視を十分に行うことなく、操舵室中央部の操舵輪後方のいすに腰を下ろし、前方の見張りに当たりながら続航した。
 B受審人は、03時50分有明丸の方位がほとんど変わらないまま1.3海里に近づき、その後同船が自船を追い越し、衝突のおそれがある態勢で接近する状況で、同時58分350メートルに迫ったが、依然動静監視不十分で、このことに気付かず、有明丸に対して警告信号を行うことも、衝突を避けるための協力動作をとることもしないまま進行中、04時00分少し前左舷側間近に同船の船尾灯と船体を認め、衝突の危険を感じ、手動操舵に切り替えて右舵一杯を取ったが、時既に遅く、あかつきは、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、有明丸は右舷側後部外板に凹損を、あかつきは左舷船首ブルワークが曲損したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、和歌山県潮岬西方沖合において、あかつきを追い越す有明丸が、動静監視不十分で、あかつきの進路を避けなかったことによって発生したが、あかつきが、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、船橋当直に就き、和歌山県潮岬西方沖合を西行中、右舷前方に先航する他船の船尾灯を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、コンパスの方位変化を確かめるなどして、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷側に離れていることから、いちべつしただけで、無難に航過できるものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、あかつきに衝突のおそれがある追い越し態勢で接近していることに気付かず、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けないまま進行して衝突を招き、自船の右舷側後部外板に凹損を、あかつきの左舷船首ブルワークに曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、夜間、船橋当直に就き、和歌山県潮岬西方沖合を西行中、左舷後方から接近する他船を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、コンパスの方位変化を確かめるなどして、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、見え具合から有明丸が左舷側を無難に通過して行くものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、有明丸が衝突のおそれがある追い越し態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも、衝突を避けるための協力動作をとることもしないまま進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:40KB)





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