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平成12年横審第130号
件名

プレジャーボートマックイーンプレジャーボートボッキーズ衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月28日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(向山裕則、半間俊士、西村敏和)

理事官
伊東由人

受審人
A 職名:マックイーン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:ボッキーズ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
マ 号・・・左舷側中央部に破損、同乗者1人が1箇月の入院加療を要する左大腿骨骨折
ボ 号・・・船底前部に擦過傷

原因
ボ 号・・・動静監視不十分、船員の常務(新たな危険)不遵守

主文

 本件衝突は、ボッキーズが、動静監視不十分で、停留中のマックイーンに向かって進行したことによって発生したものである。
 受審人Bの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年7月4日11時00分00秒
 愛知県東幡豆港

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートマックイーン プレジャーボートボッキーズ
全長   2.54メートル
登録長 2.64メートル 2.30メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 88キロワット 62キロワット

3 事実の経過
 マックイーン(以下「マ号」という。)は、ジェットポンプで推進する3人乗りFRP製水上オートバイで、A受審人が乗り組み、友人2人を同乗させ、上部に跨いで(またいで)乗ることができる、長さ約5メートル幅約1メートルの5人乗り用化学繊維製のバナナ状浮具(以下「バナナボート」という。)に友人3人を搭乗させ、同ボートを長さ約20メートルのロープで引き、遊走の目的で、0.2メートルの喫水をもって、平成11年7月4日10時45分愛知県東幡豆港の東幡豆港桑畑船だまり防波堤灯台の西南西方約400メートルに当たる小浜と称する砂浜を発し、東方に向かった。
 これより先、A受審人は、B受審人を含む友人9人と東幡豆港内において海上レジャーを行う計画を2週間前から立て、マ号及びボッキーズ(以下「ボ号」という。)の水上オートバイ2台を自動車で牽引(けんいん)し、4日10時ごろ小浜に到着していたもので、順次交替して滑走などを楽しむこととし、前示のとおり小浜を発して東方に向かったのが、A受審人にとって当日の初乗りであった。
 A受審人は、進路をジグザグに採ったり、速力を増減するなどして東幡豆港中央部に独立して東西方向に延びた長さ約540メートルの東幡豆港正面防波堤(以下「正面防波堤」という。)を時計回りに一周したのち、更にもう一周するつもりで、同防波堤の西端にある東幡豆港正面防波堤西灯台(以下「防波堤西灯台」という。)の西方約50メートルのところから北北東進中、10時58分半ごろバナナボートの搭乗者全員がバランスを崩して落水したことに気付き、直ちに機関を停止して停留を始めた。
 A受審人は、バナナボートへ乗ろうとしている友人達を見守っていたところ、10時59分17秒防波堤西灯台から353度(真方位、以下同じ。)110メートルの地点において、340度に向首するようになったとき、左舷正横後24度300メートルのところに、自船のわずか前方に向けて来航するB受審人が操縦するボ号を初認したが、同人は気心が知れた友人であるし、自船のことを当然視認しているであろうから、もし間近に接近したとしても自船を避けてくれるものと思い、引き続き同ボートの状況を見ていた。
 10時59分50秒A受審人は、ボ号が左舷正横後17度70メートルとなったとき、自船の10メートル前方を無難に替わって行く態勢であったので、自船に向かうことはあるまいと思っていたところ、同時59分54秒左舷正横後14度40メートルのところに接近したボ号が緩やかに右転を始め、同時59分56秒左舷正横後7度30メートルのところに迫って自船に向かって進行する態勢となり、B受審人が顔をバナナボートに向けたままであることを知って、衝突の危険を感じ、同乗者とともに大声でB受審人の名前を連呼したものの、効なく、11時00分00秒防波堤西灯台から353度110メートルの地点において、マ号は、340度に向首して停留したまま、その左舷中央部にボ号の船首が直角に衝突し、乗り切った。
 当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 また、ボ号は、ジェットポンプで推進する2人乗りFRP製水上オートバイで、B受審人が乗り組み、遊走の目的で、0.2メートルの喫水をもって、10時55分小浜を発し、南東方に向かった。
 B受審人は、小浜を発する前からマ号及びバナナボートが遊走しているのを認め、当日の初乗りとして、防波堤西灯台の南西約250メートル付近水域に至り、同水域において周回するなどしていたところ、北東方約300メートルのところにマ号及び同ボートの存在に改めて気付き、マ号に合流することとし、10時59分17秒防波堤西灯台から247度240メートルの地点において、アクセルレバーを引いて機関を中速力前進にかけ、針路をマ号のわずか前方に向かう045度に定め、時速25キロメートル(13.5ノット)の対地速力で進行した。
 10時59分50秒B受審人は、防波堤西灯台から315度97メートルの地点に至り、右舷船首8度70メートルのところにマ号を見るようになったとき、同船が停留していることに気付き、同船の南西方約20メートルのところにいるバナナボートに乗ろうとしている友人達の顔がはっきりしてきたことから、その後同ボートの方ばかりを注視し、マ号とは同船の10メートル前方を無難に替わる態勢であったので、更に接近しても大丈夫と思い、同船に対する動静監視が不十分となったまま、マ号の西方から同船を付け回して右転するつもりで続航した。
 10時59分54秒B受審人は、防波堤西灯台からの329度100メートルの地点に達し、マ号が右舷船首13度40メートルのところになったとき、緩やかに右転を始め、同船に向かって進行する状況となったが、顔を右方のバナナボートに向けたままで、この状況に気付かず、左転するなどしてマ号を避けることなく続航し、同時59分57秒右舷側約10メートルのところにバナナボートを見て航過したのち、ボ号は、070度に向いたとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、マ号は左舷側中央部に破損を生じ、ボ号は船底前部に擦過傷を生じ、のち両船とも修理され、A受審人は身体をハンドル側に寄せ、マ号の最後尾にいた同乗者はとっさに海に飛び込んでそれぞれ難を逃れたが、中央にいた同乗者は1箇月の入院加療を要する左大腿骨骨折及び肋骨骨折等を負った。

(原因)
 本件衝突は、愛知県東幡豆港において、北東進中のボ号が、停留しているマ号及び同船とロープで繋がれたバナナボートに接近した際、動静監視不十分で、マ号に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、愛知県東幡豆港において、停留しているマ号及び同船とロープで繋がれたバナナボートに合流するために北東進中、マ号及び同ボートを右舷前方に見る状況となって接近した場合、マ号に向かって進行しないよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、同船の前方を無難に替わる態勢であったので、更に接近しても大丈夫と思い、落水した友人達が乗ろうとしている同ボートの方ばかりを注視し、マ号の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、マ号に向かって緩やかに右転して同船との衝突を招き、マ号の左舷側中央部に破損を、ボ号の船底前部に擦過傷をそれぞれ生じさせ、マ号の同乗者1人に左大腿骨骨折及び肋骨骨折等を負わせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:51KB)





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