日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年横審第113号
件名

遊漁船プレアデスV橋脚衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月9日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(西村敏和、勝又三郎、向山裕則)

理事官
伊東由人

受審人
A 職名:プレアデスV船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
右舷船首部に亀裂を伴う損傷、A受審人が右顔面挫傷、釣客1名が左足関節腓骨骨折、釣客2名が打撲傷

原因
見張り不十分

主文

 本件橋脚衝突は、見張り不十分で、橋脚を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年11月27日22時15分
 京浜港川崎第2区

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船プレアデスV
登録長 6.39メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 51キロワット

3 事実の経過
 プレアデスVは、船外機を備えた最大搭載人員8人のFRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣客3人を乗せ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成11年11月27日19時30分東京都大田区多摩川左岸の定係地を発し、京浜港横浜第4区扇島西方の釣場に向かった。
 A受審人は、法定の灯火を表示し、多摩川を下って京浜港川崎区浮島西方の水路を南下した後、京浜運河を西航して、20時00分ごろ扇島西岸壁製品バース(以下「製品バース」という。)沖の釣場に到着し、機関を適宜使用して同バース付近を移動しながらルアーによるすずき釣りを行い、その後大黒ふ頭周辺の釣場に移動し、21時30分ごろ再び製品バース付近の釣場に戻り、同バースから約10メートル隔てたところを、これに沿って南東方に向けてゆっくりと移動しながらルアーフィシングを続けた。
 A受審人は、釣果が上がらなかったことから、釣場を移動することにし、22時05分鶴見第2信号所(以下「信号所」という。)から324度(真方位、以下同じ。)900メートルの地点を発進して、京浜港川崎第2区の扇島東岸壁原料バース付近の釣場に向かい、船体中央部にある操縦席の後方に立って手動操舵に当たり、釣客3人を船首甲板上に座らせ、機関回転数を徐々に上げながら製品バース南東端を左回りに替わした後、同時10分少し過ぎ、信号所から180度120メートルの地点において、針路を062度に定め、機関回転数毎分4,000の18.0ノットの対地速力で、扇島南護岸(以下「南護岸」という。)を約80メートル隔てて、これに沿って進行した。
 ところで、南護岸北東端の沖合約500メートルのところには、大型LNG船が離着桟する東電扇島LNGバース(以下「LNGバース」という。)があり、同バース中央部には、LNGの荷役を行うワーキングプラットホームがあって、そこから、自動車道とLNG輸送配管との併用橋となっている長さ約425メートル幅約15メートルの東電扇島LNGバース自動車配管橋(以下「自動車配管橋」という。)が001度方向に延びて、南護岸の沖合約100メートルのところに設置されたP9橋脚と称する大型橋脚のところまで架設され、更に同橋脚から自動車橋と配管橋とに分岐してそれぞれ南護岸に架設されていた。
 自動車配管橋下には、P9橋脚のほか、ワーキングプラットホーム側から順にP1からP8橋脚と称する鋼管杭を使用した大小8基の橋脚が、51メートル間隔で交互に設置され、偶数番号の橋脚が長さ約29メートル幅約5メートルの大型橋脚で、奇数番号の橋脚が長さ約17メートル幅約5メートルの小型橋脚となっていて、P1からP8各橋脚間の水路の幅員は、約46メートルとなっていた。また、夜間照明設備として、P2−P3、P5−P6及びP8−P9各橋脚間の3箇所に、自動車配管橋防護用照明灯が海面に向けて設置されていたほか、自動車道を照明するナトリウム灯が35メートル間隔で設置されていた。
 A受審人は、これまで夜間に何度も自動車配管橋下を航行したことがあったので、同橋梁下には、大小の橋脚が交互に存在し、大型橋脚は遠方から視認できるものの、小型橋脚は照明設備の関係などで約100メートルに接近するまで視認することができないことなど、橋梁下の水路事情をよく知っており、夜間に橋脚間の水路を航行する場合には、大型橋脚が視認できたところで、一旦大型橋脚間に向けた針路とし、小型橋脚が視認できるようになったところで、針路を大型橋脚と小型橋脚との間に転じることにしていた。
 A受審人は、自動車配管橋を船首方に見て続航し、22時13分半東電扇島LNGバース灯(南側)(以下「LNGバース灯」という。)から277度740メートルの地点において、自動車配管橋までの距離が740メートルとなったとき、P6及びP8両大型橋脚が視認できたことから、針路を069度に転じたところ、その中間にあるP7橋脚に向首することになり、そのころ左舷船首7度800メートルのところに小型船舶の灯火を認め、同船がP9橋脚の西側付近にほぼ停留していたので、知人の遊漁船ではないかと思い、その様子を見ながら進行した。22時14分半A受審人は、LNGバース灯から329度360メートルの地点に達し、P7橋脚まで200メートルとなり、左舷船首24度240メートルのところとなった小型船舶が、知人の遊漁船であることが分かり、自船と同様にルアーフィシングをしていたので、その釣れ具合を確かめようとして機関回転数毎分2,500の12.0ノットの速力に減じ、その後も同船の方を向いたまま続航した。
 こうして、A受審人は、22時15分少し前、LNGバース灯から344度360メートルの地点に至り、P7橋脚が正船首約100メートルのところとなり、橋梁照明灯の余光によって同橋脚を視認し得る状況となったが、知人の遊漁船での釣れ具合を確かめることに気を取られ、前路の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、同橋脚を避けずに進行し、22時15分LNGバース灯から000度380メートルの地点において、プレアデスVは、原針路、原速力のまま、その船首部がP7橋脚西端に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 衝突の結果、プレアデスVは、右舷船首部に亀裂を伴う損傷を生じたが、のち修理され、A受審人が右顔面挫傷を負ったほか、釣客1人が左足関節腓骨骨折及び釣客2人が打撲傷などを負った。

(原因)
 本件橋脚衝突は、夜間、京浜港川崎第2区において、東電扇島LNGバースと扇島南護岸とを連絡する自動車配管橋下を航行する際、見張り不十分で、前路に存在する橋脚を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、京浜港川崎第2区において、東電扇島LNGバースと扇島南護岸とを連絡する自動車配管橋下を航行する場合、橋脚などの橋梁構造物を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、左舷船首方で遊漁中の釣船に気をとられ、前路の見張りを十分に行っていなかった職務上の過失により、前路に橋脚が存在することに気付かず、これを避けないまま進行して衝突を招き、プレアデスVの右舷船首部に亀裂を伴う損傷を生じさせ、自身が右顔面挫傷を負ったほか、釣客3人に骨折や打撲傷などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION