(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月14日06時15分
鹿児島県大島郡竜郷港
2 船舶の要目
船種船名 |
押船瑞穂丸バージ |
第808住吉丸 |
総トン数 |
117トン |
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全長 |
23.95メートル |
58.50メートル |
幅 |
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13.00メートル |
深さ |
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4.10メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
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出力 |
735キロワット |
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3 事実の経過
瑞穂丸は、鋼製押船で、A受審人ほか5人が乗り組み、船首2.0メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、空倉で喫水船首1.0メートル船尾1.5メートルの第808住吉丸(以下「バージ」という。)を押し、平成10年7月14日04時30分鹿児島県名瀬港を発し、同県大島郡竜郷港の通称石切場岸壁(以下「岸壁」という。)に向かった。
A受審人は、05時45分今井埼灯台から110度(真方位、以下同じ。)970メートルの地点に達したとき、針路を210度に定め、機関を半速力前進にかけて5.2ノットの対地速力で進行し、同時55分同灯台から177度1,720メートルの地点で機関を停止し、その後乗組員を入港配置につけ、ゆっくり右転しながら惰力で続航した。
ところで、A受審人は、岸壁近くに浅瀬があって回頭水域が狭いことから、風が強いときは岸壁に並んだころ右舷錨を2.5節投入し、180度右回頭して出船左舷付けで接岸することにしていた。
06時10分A受審人は、岸壁を右舷側100メートルに見て並び、折から南西風が強く圧流されるおそれがあったが、回頭を終えたころ投錨すれば大丈夫と思い、速やかに投錨して圧流を減殺するなど、風圧に対する配慮を十分に行うことなく、その後、舵と機関を種々に使用して右回頭中、突然左舷側に圧流され、06時15分今井埼灯台から197度1,900メートルの地点で、船首が087度に向いたとき、バージの左舷側船首が岸壁に衝突した。
当時、天候は晴で風力4の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
衝突の結果、瑞穂丸は損傷なく、バージは船首部左舷側外板に凹損を生じたが、のち修理された。
(原因)
本件岸壁衝突は、強い南西風が吹いている状況下、鹿児島県竜郷港において、空倉のバージを押して着岸する際、風圧に対する配慮が不十分で、岸壁に向けて圧流されたことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、強い南西風が吹いている状況下、鹿児島県竜郷港において、空倉のバージを押して着岸する場合、投錨して圧流を減殺するなど、風圧に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、回頭を終えたころ投錨すれば大丈夫と思い、投錨して圧流を減殺するなど、風圧に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、回頭中に圧流されて岸壁との衝突を招き、バージの船首部左舷側外板に凹損を生じさせるに至った。