(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年1月18日14時50分
長崎県福江島南東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船生進丸 |
漁船ドン ユー2009 |
総トン数 |
4.9トン |
197トン |
全長 |
14.30メートル |
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登録長 |
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33.20メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
80 |
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出力 |
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478キロワット |
3 事実の経過
生進丸は、FRP製漁船で、たいはえ縄漁を行う目的で、A受審人が1人で乗り組み、船首0.4メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成11年1月17日23時30分長崎県茂木港を発し、同県福江島南東方約6海里の漁場に向かった。
翌18日02時30分A受審人は、漁場に至って操業を始め、13時40分たい75キログラムを獲たところで操業を終えて帰途に就き、同時50分黄島灯台から072度(真方位、以下同じ。)5.5海里の地点において、針路を084度に定め、機関を半速力前進にかけ、14.0ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。
定針後、A受審人は、周囲に他船がいないことを確かめたのち、前部甲板上で膝をついた姿勢で漁獲物の選別作業を始めた。
14時46分半A受審人は、黄島灯台から081度18.5海里の地点に達したとき、左舷船首10度1.4海里のところに前路を右方に横切る態勢のドン ユー2009(以下「ド号」という。)を視認でき、その後同船が衝突のおそれのある態勢で接近する状況であったが、選別作業に気をとられ、見張りを十分に行っていなかったので同船の接近に気付かないまま続航した。
A受審人は、ド号が避航の様子なくさらに接近したものの、依然として見張りを行うことなく、漁獲物の選別作業に気をとられ、衝突を避けるための協力動作をとらないまま進行中、14時50分わずか前同作業を終えて左舷前方を見たとき、初めて左舷船首至近に迫ったド号を認めたが、どうすることも出来ず、14時50分生進丸は、黄島灯台から080度19.9海里の地点において、原針路、原速力のまま、その左舷船首とド号の船首とが衝突した。
当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、視界は良好であった。
また、ド号は、鋼製鮮魚運搬船で、船長E、一等航海士Gほか11人が乗り組み、調味料6トン、段ボール箱1トンを載せ、船首1.63メートル船尾3.00メートルの喫水をもって、同月18日11時50分長崎県三重式見港を発し、中華人民共和国浙江省舟山港に向かった。
E船長は、出航操船の指揮を執り、13時00分大蟇島大瀬灯台から167度7.7海里の地点において、針路を242度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.4ノットの対地速力とし、甲板手を手動操舵につけて船橋当直を次席一等航海士に委ねて降橋した。
14時30分G一等航海士は、黄島灯台から078度22.5海里の地点で昇橋し、次席一等航海士と当直を交替し、レーダーを休止状態として通信長を操舵につけて航海当直に当たった。
14時46分半G一等航海士は、黄島灯台から080度19.9海里の地点に達したとき、右舷船首12度1.4海里のところに前路を左方に横切る態勢の生進丸を初めて認めたが、その内に同船が避航するものと思い、その後同船との衝突のおそれの有無を判断できるよう、コンパスで方位の変化を確認するなどの同船の動静を監視することなく進行した。
G一等航海士は、生進丸と互いに方位に変化なく接近したが、その進路を避けないまま続航中、14時50分わずか前右舷船首至近に迫った同船を認め、右舵一杯を令し、機関を微速力後進にかけたが、効なく、原針路、原速力のまま前述のとおり衝突した。
衝突の結果、生進丸は、左舷側アンカーローラーを破損し、船橋左舷側ブルワーク及び同外板に破口をそれぞれ生じたが、のち修理され、ド号は、船首材に凹損を生じた。
(原因)
本件衝突は、長崎県福江島南東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、西進するド号が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る生進丸の進路を避けなかったことによって発生したが、東進する生進丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、福江島南東方沖合を帰港のため東進する場合、左舷前方のド号を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、漁獲物の選別作業に気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、ド号の接近に気付かず、衝突を避けるための協力動作をとらないまま進行して同船との衝突を招き、生進丸の左舷側アンカーローラーを破損、船橋左舷側ブルワーク及び同外板に破口をそれぞれ生じさせ、ド号の船首材に凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。