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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年那審第35号
件名

貨物船平和丸漁船祐久丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年1月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(清重隆彦、金城隆支、花原敏朗)

理事官
長浜義昭

受審人
A 職名:平和丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:祐久丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
平和丸・・・左舷船首に擦過傷
祐久丸・・・右舷船尾に破損、B受審人が右前胸部打撲傷等

原因
平和丸・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
祐久丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、平和丸が、動静監視不十分で、停留中の祐久丸を避けなかったことによって発生したが、祐久丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年1月12日11時25分
 鹿児島県奄美大島曽津高埼南方海上

2 船舶の要目
船種船名 貨物船平和丸 漁船祐久丸
総トン数 409トン 2.3トン
全長 66.25メートル  
登録長   8.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット 125キロワット

3 事実の経過
 平和丸は、鋼製の砂利採取運搬船で、A受審人ほか6人が乗り組み、空倉のまま、船首1.3メートル船尾3.4メートルの喫水で、平成12年1月12日10時20分鹿児島県湯湾港を発し、同県奄美群島の請島南方の砂利採取海域に向かった。
 A受審人は、発航後、単独で船橋当直に就き、機関を全速力前進に掛け、11.0ノットの対地速力で進行し、11時00分曽津高埼灯台から270度0.5海里の地点で針路を149度に定め、自動操舵で続航した。
 そして、A受審人は、11時17分曽津高埼灯台から157度3.0海里の地点に達し、針路を200度に転じたところ、左舷船首5度1.6海里のところに、祐久丸を初めて認め、しばらく同船の様子をうかがっていたが、同船がスパンカを掲げて停留中であったことから、このまま左舷側に替わるものと思い、引き続きコンパスでその方位変化を測定するなどして動静監視を行わず、同時20分ごろから操舵室左舷側後部の海図台で船尾方を向き、到着時刻の計算等を始めた。
 平和丸は、同じ針路及び速力で続航中、11時25分少し前海図台での作業を終えたA受審人が、正船首わずか左至近に祐久丸のトローリング用の竿を認め、機関のクラッチを中立としたが効なく、11時25分曽津高埼灯台から171度4.2海里の地点において、原針路、原速力のまま、その左舷船首が祐久丸の右舷船尾に後方から42度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力5の南南東風が吹き、潮侯は下げ潮の初期であった。
 また、祐久丸は、一本釣り漁に従事するFRP製漁船で、B受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.1メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、同日09時00分鹿児島県芝漁港を発し、同県加計呂麻島西方の漁場に至って一本釣り漁を開始した。
 B受審人は、10時30分ごろ曽津高埼灯台の南方5.0海里付近に移動して船尾に白色のスパンカを展帆し、長さ約12メートルのトローリング用竿を立てたまま、南南東風を船首に受けて停留し、操舵室の右舷側に立ち、機関の回転数を毎分500として左手をクラッチに添え中立から時々前進に操作し、右手で釣糸を持って一本釣り漁を再開した。
 11時17分B受審人は、曽津高埼灯台から170度4.4海里の地点に達したとき、左舷船尾38度1.6海里のところに南下中の平和丸を視認することができたが、時化模様で周囲に他船が見あたらなかったことから、後方の見張りを十分に行っていなかったので、同船の存在に気付かなかった。
 祐久丸は、折からの南南東風により、158度に向首して338度方向に圧流され、B受審人が平和丸との方位が変わらず衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かないまま、クラッチを前進にするなどして衝突を避けるための措置がとられず、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、平和丸は左舷船首に擦過傷を、祐久丸は右舷船尾に破損をそれぞれ生じたが、のち、いずれも修理され、B受審人が右前胸部打撲傷等を負った。

(原因)
 本件衝突は、加計呂麻島西方沖合において、南下中の平和丸が、動静監視不十分で、停留して一本釣り漁に従事中の祐久丸を避けなかったことによって発生したが、祐久丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、加計呂麻島西方沖合を南下中、左舷船首方に停留中の祐久丸を視認した場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、同船に対する動静監視を行うべき注意義務があった。ところが、同人は、祐久丸がスパンカを掲げて停留しているのでこのまま替わるものと思い、コンパスでその方位変化を測定するなどして同船の動静監視を行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けずに進行して衝突を招き、平和丸の左舷船首に擦過傷を、祐久丸の右舷船尾に破損をそれぞれ生じさせ、B受審人に右前胸部打撲傷等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、加計呂麻島西方沖合において、スパンカを掲げ停留して一本釣り漁に従事する場合、衝突のおそれがある態勢で接近する平和丸を見落とすことのないよう、後方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、時化模様で、周囲に他船が見あたらなかったことから、後方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれのある態勢で接近する平和丸に気付かず、クラッチを前進にするなどして衝突を避けるための措置をとらずに漁を続けて衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、自身が右前胸部打撲傷等を負うに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:51KB)





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