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海難審判庁裁決録(平成13年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配付
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




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平成11年広審第72号
件名

旅客船れいんぼう べる岸壁衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年1月11日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(釜谷奬一、竹内伸二、中谷啓二)

理事官
岩渕三穂

受審人
A 職名:れいんぼう べる船長 海技免状:一級海技士(航海)

損害
れ 号・・・右舷船尾部外板に破口を伴う凹損
東埠頭2号岸壁・・・損傷あり

原因
れ 号・・・操船不適切

主文

 本件岸壁衝突は、強風下の着岸に際し、タグボートの有効活用に対する措置が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成9年12月2日18時05分
 新潟県直江津港港内

2 船舶の要目
船種船名旅客船 れいんぼう べる
総トン数 13,597トン
全長 195.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 33,980キロワット

3 事実の経過
 れいんぼう べる(以下「れ号」という。)は、専ら、福岡県博多港と新潟県直江津港両港間の定期航路に就航する前部船橋型の2軸2舵の可変ピッチプロペラ、バウスラスター及びスタンスラスターを装備する旅客船兼自動車渡船で、A受審人ほか27人が乗り組み、旅客40人及び車両80台を乗せ、船首6.22メートル船尾6.50メートルの喫水をもって平成9年12月1日22時10分博多港を発し、直江津港に向かった。
 A受審人は、発航後対馬海峡を本土沿いに北東進して、隠岐海峡を東行していたが、発航以来北西から西よりの風浪が強く、翌2日11時ごろ経ヶ岬灯台の北方約58海里の地点に差し掛かったころには西南西風が風力10に達していたことから直江津港への入港にあたっては気象情報の収集に留意しながら航行することにした。
 当時、日本海は、大陸に1046ヘクトパスカルの卓越した高気圧の中心が停滞し、東北地方の太平洋岸には1002ヘクトパスカルの低気圧が北東進中で、この間はほぼ南北に延びる等圧線が集中する状況で、西高東低の冬型の気象配置となって気圧の谷を形成しており、新潟県の上、中、下越地方一帯には2日午前05時05分新潟地方気象台から雷、強風、波浪注意報が発表され、同日13時40分には暴風、波浪警報及び雷注意報に切り替えられていた。
 15時37分A受審人は、禄剛埼灯台の北方4.2海里の地点に差し掛かり、依然、風力10の西南西風が連吹する状況の下、無線室で気象情報を収集するほか、直江津港の九越フェリー株式会社の系列会社である東日本フェリーの岸壁に設置された風向・風速計の情報を得るなどして同港に駐在する副運航管理者に引船2隻の手配を要請する一方、同人と連絡をとりながら航行を続けた。
 こうして17時40分A受審人は、直江津港の北西方約2海里の地点に達したとき、入港に備えて機関用意とし、船首に一等航海士ほか3人を、船尾に二等航海士ほか3人を、船橋に三等航海士及び甲板員1人を見張りに、操舵手を操舵につけて自らの操船指揮のもと直江津港入口に向けて進行した。
 ところで直江津港は、北北東方に開いた港奥約2,000メートルの港で、その西側を直江津港西防波堤(以下「直江津港」と冠する防波堤名については防波堤名のみを表示する。)で、東側を東防波堤で挟まれており、西防波堤の北端には、直江津港西防波堤灯台(以下、「西防波堤灯台」という。)が設置され、同防波堤は、同灯台から221度(真方位、以下同じ。)約500メートルのところで196度の方向に向け屈曲し、ここから約2,700メートルの岸線まで延びており、東防波堤は、同灯台から163度約1,060メートルの地点を北端とし、ここから237度の方向に約750メートルのところまで延び、両防波堤間の水路は、その北側で可航幅が約1,050メートル、南側で約310メートルに狭まった形状になっていた。
 れ号の着岸岸壁は、東防波堤とほぼ平行に約360メートル隔てた対岸に構築された長さが1,100メートルの東埠頭の最西端部に位置する2号岸壁で、れ号は東防波堤及び同岸壁西側の西防波堤に囲まれた南北幅、東西幅共に約420メートルの海域で約180度の左回頭を行い、その後後退して右舷出船係留で着岸することになっていた。
 17時50分A受審人は、法定の灯火を表示し、西防波堤灯台から090度330メートルの地点に達したとき、針路を港奥の東防波堤と西防波堤によって狭められた海域のほぼ中央部に向首する210度に定め、機関を港内全速力に減じて12.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 このころA受審人は、自船の風向・風速計により、約15メートル毎秒の北北西風が連吹しているのを知り、これが前示東日本フェリーの岸壁に設置された風向・風速計から得ていた情報とほぼ一致しており、同社の運航管理規程に定める入港を中止する18メートル毎秒の風速の範囲内のものであったことから、あらかじめ強風下の着岸に備えて同港港内に待機させていたいずれも出力が約2,200キロワットのしらかば及びすず丸の両タグボートと自船の各スラスターを併用して着岸することにした。
 17時52分A受審人は、西防波堤灯台から183度660メートルの地点に達したとき機関を半速力前進に減じ、9.0ノットの速力とし、その後適宣行きあしを調整しながら同時55分東西両防波堤間の狭い水路に差し掛かったところで、しらかばを左舷船尾にとり、スラスターを併用しながら適宣同船の支援を受けて風向の急変と突風性の風が予想される当該気象状況の下、右舷後方から強い西風を受けながら着岸のため左回頭を開始することとなったが、バウスラスターとしらかばを併用すれば無難に回頭することが出来ると思い、大幅な風下への回頭に先立ち待機中のすず丸を船首部にとるなどして、強風下の着岸にあたり、タグボートの有効活用に対する措置を適切にとることなく左回頭を開始した。
 17時56分半A受審人は東防波堤南端の最狭部を航過し終え回頭中、突然、風向が北北西風から西南西風に急変して増強した強風をほぼ165度に向首した自船の右舷正横付近から受けるようになったのを知り、このため船首が風上に切りあがり気味となって回頭が遅れるとともに風下の東埠頭2号岸壁側に圧流されるのを認め、あわててすず丸を左舷船首にとり、その後機関、スラスターを種々併用して圧流防止に努め、しらかばとすず丸を真横に引かせたが及ばず、18時05分西防波堤灯台から185度1,860メートルの地点において、003度に向首したれ号の右舷船尾部が東埠頭の西端角に衝突した。
 当時、天候は雨で、突風を伴う風力7の西南西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 岸壁衝突の結果、れ号の右舷船尾部外板に破口を伴う凹損が、東埠頭2号岸壁に損傷が生じたが、いずれものち修理された。

(原因)
 本件岸壁衝突は、夜間、新潟県直江津港において低気圧性の強風が連吹する状況の下、タグボートの支援を得て同港内の狭い水路内で左回頭をして着岸するにあたり、回頭に先立ち、船首配置のため待機中のタグボートをとるなど、タグボートの有効活用に対する措置が不適切で、強風によって圧流され、同港東埠頭の岸壁角に衝突したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、新潟県直江津港において、低気圧性の強風が連吹する状況の下、タグボートの支援を得て同港内の狭い水路内で大幅な左回頭をして着岸する場合、風向が急変し突風性の風が吹くことを予想できたから、強風によって圧流されることのないよう、回頭に先立ち、船首配置のため待機中のタグボートをとるなどタグボートの有効活用に対する措置を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、バウスラスターと船尾に配置したタグボートを併用すれば無難に回頭できるものと思い、大幅な回頭に先立ち船首配置のため待機中のタグボートをとるなど、タグボートの有効活用に対する措置を適切にとらなかった職務上の過失により、岸壁との衝突を招き、れ号の右舷船尾部外板に破口を伴う凹損と東埠頭2号岸壁に損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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