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福井被害者支援センター広報誌
with you
あなたと ともに
第3号2002.11.
関わるようになって・・・はや一年
福井被害者支援センター
副理事長 弁護士
川上賢正
 
 年のたつのは早いもので、福井被害者支援センターも設立して一年を超えます。今回は、私が福井での被害者支援のためのボランティア団体に関わるようになった経緯について、お話したいと思います。
 平成13年の初夏だったでしょうか、大阪で池田小学校の児童殺傷事件がおき、私自身、ショックを受けていた頃です。
 東京に行く新幹線の車中、松原六郎さん(センター理事長)から、電話がかかってきました。「今度、福井でも、犯罪の被害にあった人のためのボランティア団体を立ち上げるんだけど、福井弁護士会もなんか協力してくれない。」との話でした。
 最初、私は福井弁護士会から誰か人を出せばいいのかな〜と考えていたところ、彼は誰でもいいというわけではないと真剣な眼差しで(電話だから、見えるわけではないが、そのように感じた)私に白羽の矢を立てたのです。池田小学校の事件の後、弁護士として、なにかできないものかと、自分でも自問自答していた時期でしたので、一も二もなく、私も協力させていただくことになりました。その結果、私も福井被害者支援センターの副理事長という肩書きをいただいたわけです。被害者支援センターでは特段なにかをしているわけではないので、相談員の方に申し訳ないと思っております。
 しかしながら、私は、以後弁護士として、犯罪被害者の問題を考えるようになりました。今年になって、日弁連の犯罪被害者協議会にも入れていただきました。ここでは全国の弁護士が犯罪被害者基本法の提言など、犯罪被害者の支援のための総合的な施策を提言しており、最先端の議論がされています。
 さらに、今年の夏には、弁護士としてDV(ドメスティックバイオレンス)の事件に携わりました。これまでは二の足を踏んでいたのですが、支援センターでの講演を聴いて私自身この問題を避けてはいけないと思うようになったのがきっかけです。
 そして、この秋には、富山であった中弁連(中部地方の弁護士会の団体)のシンポジウムで、犯罪被害者支援のため弁護士がどう関われるかというテーマで、都民センターの事務局長である大久保美恵子さんと対談させていただき、富山の弁護士の先生方に、富山市でも犯罪被害者支援センターをつくってほしいと、散々檄を飛ばしてきました。大久保さんは、もともと富山の出身で、富山にいたとき、ご自身の子どもさんを飲酒運転の人に轢き逃げされた経験をもっています。無理にお願いしてご自身の話をしていただきました。事実の持つ重みを受けて、私達弁護士がなにができるか、真剣に考える機会をいただきました。
 以上、犯罪被害者のことは、私の弁護士人生の中で、大きな位置を占めるものと思っています。「with you」を読んで下さった方、これからも厚い支援をお願いします。
公開講座が開かれる
 平成14年7月27日(土)、交通事故被害者の立場から井上保孝・郁美夫妻による第2回公開講座「永遠のメモリー」が開かれました。右の朝日新聞の記事をご覧下さい。
第3回は敦賀に会場を移して・・・
 平成14年9月28日(土)、小糠雨が降るなか、参加者は50名近く、敦賀市勤労福祉センターで「シェルターの現状」のテーマで、生野学園の方にお話をしていただきました。
 今までの経緯や日常的な運営方法を淡々と語る反面、今まで住んできたところから、今まで近しくしてきた人々から離れざるをえなかった人に対する思い遣りや心構えの堅固さがうかがえる内容であり、今後福井にシェルターをと考える際に示唆を与えるものでした。
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朝日新聞社提供
賛助会員募集中
 活動は、電話による相談活動から、力を付けていって直接的援助活動までと考えています。ボランティアのお力添えやご協力があって成り立っています。その運営・維持には様々な諸経費を必要とし、その費用は会員の皆様のご支援により賄われています。当センターの活動にご理解をいただき、皆様のご協力を心からお願いいたします。会員には、定期的に会報をお送りし、活動報告を行っていきます。
  正会員   3,000円
  賛助会員 個人1口 2,000円
    法人1口 10,000円
振込先 口座番号 福井銀行文京支店1144104  
  口座名称 福井被害者支援センター 理事長 松原六郎  
 お問い合わせ・ご質問は、福井被害者支援センター TEL(FAX)0776-32-5115にお願いします。
県民公開講座のお知らせ
 開催時間は、13:30〜15:30です。
12/14(土) 大野市 多田記念大野有終会館
「高齢者虐待について」
福原隆子氏(福井県)
在宅痴呆老人の虐待の現状
 
1/25(土) 福井市 福井商工会議所
「支援のあり方について(仮)」
大久保美恵子氏(東京都)
電話相談と直接支援
 11/23(土)大野市の公開講座は、諸般の事情により、12/14(土)に変更になりました。
ちょっと教えて
〜関係機関との連携を考える〜
研修委員長 齊藤荘二
 クライエントの話をなぞりながら、気持ちを汲み、出来事や言い分を聴く意義は二つに大別される。その1は、話の理解。これはクライエントの心理的カタルシスに役立つどころか深刻な孤立感への手当となっている。その2は、解決に向かっての道筋の教示。これには社会的資源や福祉諸制度等の紹介と、心理教育<クライエントヘの心構えの持ちようの提示>がある。
 資源や制度の紹介に際しては、どこが対応機関なのか、どんな制度をどのように利用できるのかを知っているべきである。知らなければ足を運んで教えを請わなければならない。このごろ、知らないのは教えてくれないからだ! と他を責める風潮がありはしないか。自らの責任で学び取っていく主体的な姿勢も忘れてはいけないと思う。
 紹介の際にありがちな失敗は、“でしゃばった紹介”。「・・・してくれるはずですよ」とか「とてもいいところ<いい方>だから何でもお話してね」と伝える。思いどおりに事態が進展しないと「何もしてくれないのか!」などと紹介先を批判する。また、「あの機関は何もできない、してくれない」などと決めつけていたりすることもある。これでは連携は望むべくもない。相談機関の拙い連携のせいで最も被害を受けるのはクライエントであることを思うと心が痛む。
 では、正しい紹介とはどのようにすればよいのだろうか?『○○いう機関がありますから、そちらにお尋ねになってはいかがでしょうか?』であり、『私の信頼する専門家の一人に○○という方がいますが、ご紹介しましょうか』である。これだけでよい。なぜならこれ以上のこと(言い換えると公にされている情報以外のこと)は訊かれてもわからないからである。また、「すでに行った。でも、役に立たなかった」というのであれば、いつ、どのような状況下でどんなやりとりが行われたのか?そしてクライエントはどのような思いを持ったか?となぞって聴けばよい。クライエントに対しても、相談機関に対しても共感できることはずいぶんあることだろう。また、その中で支援の知恵が浮かんでくることも多いと実感している。
 なお、このとき私は、私を含めてクライエントも相談機関も、皆が人間なんだと自分に言い聞かせている。人間だからこそ、今の限界もあるのだと許し合えるし、高め合うための努力も今後していけると信じ合えるのである。クライエントのためになる連携は、関係機関との顔の見える日ごろのお付合いを重ねる中で、理解と信頼を深め合うところから生まれてくると考えている。
正会員の声
 緊張の中での電話のベルの音に敏感に反応する。受ける立場でありながら、問いかけの自分がそこにはいた。いきかう言葉に戸惑いながらもさまざまな状況の中での把握・判断はむずかしく相手の話に耳を傾け充分に引き出す事にさらなるむずかしさを感ずる。
 張りつめた気持ちがきれた時、私の最初の電話相談は終っていた。数分前のお互いの言葉が繰り返し、繰り返し私の中で交差する。言葉の難しさを痛感し少々の後悔もよぎる。私自身の対応の是非さえ見つからない。でも、その中で思う。勇気を出してかけてこられたであろう相談者の電話は私自身にもある意味で勇気を与えてくれた。これから回を重ねながら直面するだろういくつかの相談は逆に私達が指導される貴重な経験として受け止め、相談員としての姿勢を育み心から寄り添える事が出来ればと願っております。
(H.S.)
事務局ニュース
◎当センターは、設立一周年を迎えました。右も左もわからない事だらけの中で出発した事務局ですが、一年を経てようやく事務局としての運営が、軌道に乗り始めたように思います。
 今後とも皆様のご指導・ご協力をお願いします。
勇気をもってお電話を!
TEL 0776−32−5111
FAX 0776−32−5115
相談日 火曜日PM3:00〜PM7:00
土曜日PM1:00〜PM7:00
1年の歩み
2001.11.10. 設立総会
2001.11〜12. 事前研修(全5回)
2002.01.08. センター相談業務開始
2002.03.10. with you 創刊号
2002.04.01. NPO・日本財団
  委託業務開始
2002.05.25. 定期総会
2002.05.25. 県民公開講座(全5回)
  5/25、7/27、9/28
2002.06.17. カウンセリング・セミナー
  (月曜研修:月1回)
  6/17、9/9、10/21、11/18
2002.07.10. with you 第2号
2002.11.30. with you 第3号
編集後記
 明日から師走。あと一月でセンターの活動が開始されてから一カ年を迎えます。相談を受ける回数も相談員によりまちまちで、相談以外にもいろいろな人が、それぞれの持ち味を出しながら、センターが社会的に認められお役に立つよう活動を続けています。例えば、研修・県民公開講座の企画・運営に関わる人や広報誌づくりに関わる人などがいます。活動に参加したい方は、ご一報ください。
 
with you(あなたとともに)第3号
平成14(2002)年11月30日発行
特定非営利活動法人 福井被害者支援センター
TEL(FAX)0776-32-5115
郵送連絡先〒910-0005
福井市大手3丁目11番17号
福井県民会館5階
ふくい県民活動センターメールボックス20番







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