日本財団 図書館


デモクラティックスクール“まっくろくろすけ”
 朝10時、誰かの「朝の会始めるよ」との声に子ども達が集まってきます。それぞれがサイコロを振って司会と書記の係りを選びます。
 「今日の予定何かありますか?予算は使いたいことがありますか?知らせはありますか?その他何かありますか?」
 司会の子がみんなに聞いて打ち合わせていきます。「その他」ではクイズや変わった質問などで盛り上がる時もあります。みんなが顔を合わす時間を楽しんでいます。
 朝の会が終わると、書記の子は記録ノートを台の上に置いておきます。遅れてきた子や会に出なかった子が見るためです。そしてそれぞれの一日が始まります。
 
 “まっくろくろすけ”は1997年4月に始まったSVSと同じ理念にたつデモクラティックスクールです。日常的なことだけでなく、会費の額や使い方、週何回どこで集まるか、スタッフは誰にするかなどあらゆることを当事者であるメンバーが民主的に話し合って決めています。初めから設定されていることは何もないので、すべてゼロからメンバーで築きあげてきました。
 “まっくろくろすけ”という名前もみんなで付けました。子ども達は「スクール」というより「自分達の場(共同体)」といったふうに感じているのかもしれません。「デモクラティックコミュニティとしての成長・学びの場」を基盤としているからです。
 当初は5才から9才までの子ども8人でしたが、5年を迎えようとしている今では7才から16才の15人へと広がっています。活動場所も兵庫県高砂市に置いていましたが、メンバーが兵庫県の神戸市から神崎郡までと広い範囲に渡るので、2年前から曜日毎に違った3つの町(明石市・高砂市・神崎郡)でそれぞれ場所を借りて集まるようになりました。それでもやはり自前の場所がほしいと、今年は神崎郡市川町に皆のベースとなる「基地」を作ることにしました。借りている場所ではそこの使い方を守ることを学びましたが、自前の場所では他の人に決められた制約は何もなく、自分達が決めたことに基づいて行動し、白紙から自分達の価値観やマナーを作っていけます。それも自前の場所を持ちたい理由の一つです。
 
 さて、“まっくろくろすけ”で子ども達は日々どんなことをしているのでしょう。
 大きい男の子達はゲームやカード対戦、パソコンなど。ギターにはまっている子もいます。小さい男の子達はごっこ遊びや工作などが大好き。頭も体も思いっきり使って空想の世界を楽しんでいます。女の子達は絵を描いたり買い物に行ったり、ピアノを弾いたりします。
 みんなが入り混じって、かくれんぼや追いかけっこをすることもあります。プロレスや相撲トーナメントもあったっけ。泳ぐのが大好きな子が多いので、6月になるともう川にくりだします。もちろん一人で本を読んだり、虫を観察したり、のんびりしていることもあります。
 クラスを作ってやりたいという希望が出ると、地域でボランティアの先生を探します。そして希望者と先生が話し合って、どんなやり方でいつやるかなどを打ち合わせます。現在週1回の英会話のクラスなどが持たれています。
 サーカスやスケートに行くために特別にお金が必要な時はフリーマーケットにお店を出したりして自分達で稼ぎました。4周年記念旅行は何ヶ月も予算を貯めて鳥取県に行きました。そして鳥取のホームスクーリングネットの子ども達と交流しました。
 まあ、こんなふうに思いついた様々なことをしているので、これ以上とても書き切れません。
 
 SVSは創立して30年余り、一つの完成したデモクラティックスクールでしょう。一方、“まっくろくろすけ”はまだまだよちよち歩きのスクールかもしれません。でも、だからこそ一歩一歩成長していく過程も味わえます。
 一緒にデモクラティックスクールを作っていきたい仲間(メンバー)を求めています。
 メンバーである家族は「家庭が子どもの成長にとって最も基盤となる場所」と考えています。まず家庭において「子どもと親が互いに尊重し合う人間関係をつくる」「生活の中で子どもの中から出てくる好奇心・関心から学んでいく」「家庭でも可能な限り子どもの自己決定や自律を大切にする」ということを理解し、大事にしようとしています。
 このような意味での「ホーム・ベイスド・エデュケイション(家庭を基盤にした教育)」という考えを各家庭で実践しています。その上で子どもが家庭から離れ、「子ども同士の集団の中で過ごしたい、家族とは別の自分の世界を持ちたい」という自分の意志で“まっくろくろすけ”に参加しています。
 そしてそこで家庭ではできない経験、つまりいろんな家庭から集まった子どもと大人が、完全に対等な人間関係の中で「民主的に治めていくコミュニティ」の経験を楽しみながら積んで身に付けているのです。
 ですから“まっくろくろすけ”だけが子ども達にとって自由にできる、自分らしくいられる場になるのではなく、“まっくろくろすけ”以外の時間だって子どもは家族や周りの人にいつもありのままの自分を受け入れられ、自分の力で自己実現をしながらハッピーな気持ちで日常を過ごすことが大切です。
 このように家庭の役割はとても大きく、保護者も“まっくろくろすけ”コミュニティのメンバーの一員として子どもやスタッフと共に“まっくろくろすけ”に責任を持ち協力し合っています。
 興味をもたれた方は是非一度見学、体験入会に来てください。スタッフも募集しています。研修生も受け入れています。
 







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION