日本財団 図書館


日本の年中行事 − シリーズ(2)
正月の風習
 元日は日本では最も伝統的な祝日です。これを祝うことは一方で米穀農業に従事していた古代の人々が来る年の五穀豊穣を祈る気持ちと他方で家族の幸運と健康をもたらす縁起物に係わるしきたりに由来しています。その信仰の起源の多くは古代中国の陰陽道に遡りますが、大半は仏教、儒教、神道それに上着信仰の影響を受け、時には異教との習合の形で様ざまな変遷をたどって来ました。
 また、多くのことが言葉の語呂合わせにも由来しています。
 正月の風習の謂われについては僅かな紙数では書き尽くせませんが、みなさんがよく見かけるものの幾つかを挙げて見ましょう。
 
(1) 「明けましておめでとうございます」という挨拶−もともとは旧年の物忌みが明けて、新年の年神から新たな霊で活力をもらい受けたことへの祝福を意味していました。
(2) お年玉−本来は神への供え物のお返しとして年神から家長に下された新たな霊のことでしたが、今では元日に親や主人から子供や使用人にあたえられるお金に変りました。
(3) おもち−これは新年の年神に供えられたもので、「もち」は「長持ち」に通じます。ここにも縁起をかつぐ語呂合わせが見られます。
(4) 鏡餅−丸い餅を2つ重ねて三宝という小さな木製の台に乗せ、神に供えられたもので、色々な飾りをつけます。鏡は日本の古代においては御神体を表しました(神道)。飾りつけには次のようなものがあります。
 
橙(ダイダイ)−オレンジに似た果物で、その名前の読みが「代々」に通じ、家系の繁栄を意味しています。
羊歯(シダ)−常緑の羊歯はやはり自分の家系の末永い繁栄を意味します。歯は長寿を表します。
昆布(コブ)−いわれは神道の神話にありますが、俗には「よろこぶ」に通じるものとして知られています。
四手(シデ)−伝統的な和紙で作った稲穂のシンボルで、豊穣の願いです。
 
(5) 松飾りと門松 − 家の入り口に松飾りをおく風習は平安時代に始まりました。松の木は元旦に年神の降臨を待つ聖なる樹と信じられていました。松は待つに通じ、常緑樹は繁栄の持続を連想させます。門松をつくるには竹も使い、これも常緑で、真っ直ぐのところが心の廉直さや健やかな成長を表します。
(6) 初詣で − 三箇日(サンガニチ)の間に神社やお寺に詣で、健康や豊穣を祈願します。ここでも日本人の宗教習合が見られます。同じ人がお寺に詣でながら、他方で神社にもお参りしたりします。
(7) しめ縄 − これは正月に限りませんが、神社などにぶらさげられた神聖な縄飾りで、悪霊を立ち人いらせない為のもので、この縄にも前述のシデが吊り下げられます。
 
 正月の典型的食べ物については多くのしきたりがありますが、その多くも色々な語呂合わせがあります。ほとんどの日本人は三箇日の間に「黒まめ」(マメには豆と健康の2つの意味があります)、「かずのこ」(鰊の卵)−これは子供や子孫に恵まれるという願いが込められています−etc.etc.
 
 あなたはこのうち幾つくらい見たことがありますか?
 
中西 格
 
 
 
RITOS ANUALES DEL JAPN − Serie 2
 
(拡大画面:183KB)
 
(拡大画面:180KB)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION