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山形県小国町では、合併の是非を村民に判断してもらうために地域を17カ所に分け、集落座談会を行った。そこでの議論に加え、アンケート調査を実施し、いろいろな意見を聞いている。
 
小野委員:山形県小国町では、ほぼ1年間かけ、できるだけ公平に偏りのないように行政としての資料をまとめまして、一旦、住民にその資料をお配りしました。その結果、しばらく考えてくださいということで時間を置いて、地域を17カ所に分けまして集落座談会をやりまして、いろいろな意見を聞かせていただきました。それでも不十分なものですから、18歳以上の皆さん方に改めて、設問はできるだけ集約した形で、その合併についての是非のアンケートをとらせていただいております。間もなくまとまる予定でございます。
 先ほどのお話にもございましたが、小国は山形県の西南端の端にございまして、県が示したパターンによれば、長井市まで44キロ、米沢市まで50キロという距離にございまして、いずれも最末端集落ということになるわけで、これは中心には絶対になり得ない町でございまして、そういう面から非常に私も合併による過疎化の急激な進行というものを心配しています。
 具体的に申し上げまして、まず交通手段、非常に豪雪地帯でございますので、小国町は非常にそういう面では機械整備といいますか、除雪機械もきちんと整備をいたしまして、国・県にもそれなりのお願いをしまして、県下一除排雪のきれいな町と言われております。これは、過去40年間のいろいろな住民と行政の信頼関係といいますか、協力関係といいますか、そういうものが構築されて初めてそういう姿になるのだろうと思います。まず交通手段である道路交通を、果たして将来ともこういう形で集落の末端まで確保できるかという心配が一つございます。
 それから、町内には小中学校あわせまして8校ございます。738平方キロという非常に広大な町でございまして、東京23区より広いというような地理的な条件から、学校区というものについても通学距離の問題もあってそういうふうなことになっております。そういう中で果たして合併によってこの教育環境がどう変わるのだろうかというふうにまず憂慮されております。
 それから、病院を含めた医療福祉施設、一通り小国町には整備をしてございますし、ほぼ新たな施設でもって改築がなされております。それが果たして合併によって今の形で小国町に残るのかということになりますと、まず病院は一番先に恐らく診療所化するのではないかというような心配もございます。
 そういう面で、いろいろな点から考えて判断をしなければならないというふうに思っていますが、私としては、そのアンケート調査の結果を踏まえまして、最大でも合併をするという方向づけをした場合には22ヵ月かかるなんて物の本にはありますけれども、それが20ヵ月に短縮できるにしても、やはり住民にはそれなりに方向づけというものを早く示す必要があるのだろうというふうに考えています。5月ごろまで十分検討した上で判断をしたいというふうに思います。
 現在の心境としては、合併のメリットという面では私どもとしては判断はちょっと難しいなというふうに今思っているところでございます。非常に悩んでいる毎日でございます。
 
山口課長(代理):いま、私どもはアンケート調査を実施しております。今、集計作業をしているところですが、アンケートは、各世帯というか家族で、それぞれお話をしていただいて記入していただく方法をとっており、18歳以上を対象にしています。18歳以上人口で約8,500人おります。世帯数は、約3,200世帯でございます。約5,900人強からの回収になっておりまして、率にして70%ぐらいでしょうか。
 集計途中ですが、28%程度の人が合併すべきという数字になっているようです。
 これから、アンケートの結果、それから、18会場で座談会をやっておりますが、それらを含めて合併の方向性を考えていきたいと思っております。昭和28年に小国町は1町2村が合併しておりまして、35年に1村を編入して今の町になりました。そうした経緯をご存知の方が、旧町村ごとにおり、合併に慎重な発言をしております。
 それからもう一つ。農協が広域合併しておりますが、合併後のサービスが非常に落ちていること。それから、農業共済組合が合併によって広域化し、手続きの距離が遠くなったこと。さらには国の機関の統合がありまして、法務省がいわゆる地方の中核市に一本化されました。広い面積があるものですから、それらの手続についても非常に住民は難儀をしているというような部分がありまして、合併賛成という声がなかなか上がってこないのかなというふうに見ております。
 アンケートについては、男女別、それから世代別にそれぞれ今集計をしておりますが、恐らく20代、30代の若い世代については合併推進の声が高いだろうというふうに予測しておりますが、まだ、そこまで集計していない状況でございます。まとまり次第、町民に知らせたいと考えております。
 
市町村合併によって、集落の今後の展望については、一層の集落の衰退が考えられるが、それを防ぐためには、あえてもっと小さい単位で、集落とは言わないまでも、現行の旧村単位でそういった自治の基盤をつくり上げることが必要。
 
赤川地域振興課長:合併についていろいろな意見といいますか議論が、まさに現在行われているところでございますけれども、基本的に現在の合併の推進というのは、経済団体あるいは経営体としての足腰を強くするということが基本的な考え方かと思いますので、逆に言うと、行政サービスの主体、あるいは単位としては、必ずしも経営体としての規模と一致している必要はないというところから、基礎的自治体内の自治行政組織といいますか、そういったものを考えなければいけないという議論が一方で当然出てきている。それは、もちろん合併後の旧町村単位ということももちろんあるわけですが、制度として考える場合には、それに限られる必要はない。旧町村の前の町村、あるいは自然集落というか、そこの地域的な単位のとり方があるのではないかと、地方制度調査会の中で議論されていました。
 
赤川地域振興課長:また、先般11月の初めに西尾試案という地方で反響を呼んでいる考え方が示されておりますけれども、基本的な考え方は交付税にしましても全体の3分の1ぐらいは最終的に借金で賄わなければいけないという状況でございますので、制度そのものは維持されるとして、先ほどの金額的にはかなり厳しいことにならざるを得ないのではないかと。21億が13億になるようなレベルの金額の変更というのは免れないのではないかというのが西尾先生的な考え方のバックにあるということかと思います。
 その合併によっていわば行政が行き届かなくなるじゃないかという点については、西尾先生の考え方でいけば、今のままだと財政的にいわば人件費倒れをする可能性があるわけで、そういう点で実際の施策を支える足腰を強くするためには合併が必要なのだということをおっしゃっていたということを一応紹介だけさせていただきたいと思います。
 
池田委員:おっしゃるとおりで、合併をすれば確かに経済効率はよくなりますね。よくなりますけれども、それと反比例で、やはり住民参加というのは薄れていきますね、間違いなく。だから、合併はむしろ自治権という意味ではマイナスに働くのではないかと私は思っています。特にそれがきわどく出るのは住民参加でしょうね。
 
小田切委員:合併をめぐってですが、多分合併をめぐっては、広域と狭域の二つの論点がそれぞれあるのだろうと思っております。今回の合併は、広域連合を否定したところから始まっているわけですから、そういう意味で、広域連合を制度改正してより使いやすいものとするならば、それではだめなのかという議論が一つあるのだろうと思います。今回はそういう議論ではないので、それは問わないとして、もう一つ、狭域については、御存じのように日本都市センターが近隣政府、ネイバーフッドガバメントという言い方をされておりますが、合併した後も、人の見える範囲内でそういうふうな近隣政府を市町村内部につくっていくのだという、そういうふうな提案をされて、一種の合併するときの一つのてことなっている動きだろうというふうに思っています。
 ただ、私どもがこの近隣政府をめぐってやや気になるところは、そこで言われている近隣政府というのは、現行の市町村単位に近隣政府をつくることがどうも想定されている。つまり合併特例法で言われているところの地域審議会そのものなのです。ところが、今、我々が農山村で議論している地域政府というのは、むしろ現行市町村の中の旧市町村、それに近隣政府としての位置づけを持たせるべきではないか、あるいはそういう機能があるのではないかということを議論しておりまして、単位が1段階ずれているのだろうと思っております。
 このたび、地方制度調査会も広島の高宮町に視察に行って、あそこの地域振興協議会の例をごらんになって、西尾副会長を初め、ここの松本理事長さんも大変感銘したような報道があったわけですが、あれはまさに現行市町村の中の旧市町村ということで、人口にしても500〜600人ということですから、まさに顔の見える範囲内での団体だということで、今、構想されているような現行市町村に、つまり何千という単位で近隣政府を置くのと随分差があるなというふうに思っています。
 したがって、私どもが考えるのは、ちょうど小国町でおやりになったような、あくまでも集落をベースにして、しかし、その集落の連合として議論できるような、そういう範囲内での近隣政府の可能性がどこまであるのかどうか。それで、そこがもし事業を行うとするならば、果たしてその能力があるのかどうかという、そういう議論をするべきではないかというふうに思っておりまして、そこで、最後に質問になるのですが、先ほど御指摘いただきました小国町での拠点集落、あそこを範囲とした単位で近隣政府を置いて、市町村の事業を一部肩がわりするということが可能なのかどうか、その辺のところの感触はいかがでしょうか。
 
小田切委員:例えば、長野県の南信州広域連合、飯田市を中心とした広域連合ですけれど、そこで合併後の姿として地域自治政府という形で、やはり旧市町村単位、あるいは飯田市については幾つか分割する、公民館単位に分割するという発想が出ているのですが、その中でも、先ほど課長がおっしゃったように行政サービスという発想はあるのですが、大変欠けているのが自治の発想といいましょうか、住民参加の発想だろうと思っているのです。つまりどういう単位だと住民が参加して、参加しているという意識をみずから持てるかという、そういうレベルの議論になると思うのですが、やはりそうであれば、現行市町村、特に市はもちろんのことですけれど、現行の町村でも住民が参加をするという意識を持ち得る単位を既に超えているというふうな認識が私はございまして、そういう意味で、地制調でいろいろな単位が議論されているというのは大変ありがたい話ですけれど、あえてもっと小さい単位で、集落とは言わないまでも、現行の旧村単位でそういった自治の基盤といいましょうか、それをつくり上げるようないわば方向づけが必要なのかなというふうに思っています。
 そう考えると、実はこの研究会で国土保全というふうに議論していることは大変重要な意味を持っておりまして、地域資源管理として今は集落が行っているのですが、それをどこまで広げることができるのか。もちろん主役としての集落は外せないにしても、例えば、旧村単位でどれだけの調整ができるとか、あるいは人の融通でどういうことができるのかとか、そういうふうな参加を最初から意識したような近隣政府といいましょうか、地域自治政府づくりといいましょうか、そういうものがひょっとしたらこの研究会の先に行って出てくるのかなというふうに思っておりまして、合併論議というのはまさに直接リンクする議論だというふうに思っております。







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