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<地方公共団体における取組事例>
事例1 宮城県
〜NPOプフザを中心とした協働へ向けた取組〜
1. これまでの取組み
■「宮城県の民間非営利活動を促進するための条例」の制定
 宮城県では、平成10年4月に県議会議員と知事部局の担当課の職員で、NPO活動の促進条例を議員立法で制定するための検討作業に入り、同年6月には、さらにNPO関係者も加え、宮城県NPO活動促進検討委員会を設置した。
 宮城県NPO活動促進検討委員会は、活動実態調査(同年5〜6月実施)やフォーラム(同年6〜10月に県内7地域で開催)等のあと、提言をまとめ、県では、同年12月に「宮城県の民間非営利活動を促進するための条例」を制定した。
 
■「宮城県民間非営利活動促進基本計画」の策定
 県は、平成11年9月から、NPOの活動を促進するための基本計画づくりを開始し、平成12年7月に、全体で6章からなる「宮城県民間非営利活動促進基本計画」を策定した。
 
<宮城県民間非営利活動促進基本計画の概要>
〜真に豊かな、安心とゆとりの地域づくり〜
 誰もが参加・参画でき、多様な主体が協働する社会の実現
【NPOとのパートナーシップによる社会】
・方向性
 NPO活動の支援・促進
 NPOと行政のパートナーシップの確立
・基本方針
 NPO活動の支援・促進
 NPOと行政のパートナーシップの確立、多様な主体との連携
 
■具体的な施策
 基本計画において、県は、NPO活動促進中核機能拠点の設置をはじめ、財政的支援、情報提供、各種審議会等への参加促進、NPOへの業務委託等の推進などの施策や事業を展開するとしている。庁内にNPO活動促進庁内連絡調整会議を設置するとともに、職員への研修の実施などを掲げている。
 
2. 宮城県における協働
■「みやぎNPOプラザ」の開設
 宮城県では、旧宮城県立図書館を改修整備し、平成13年4月に民間非営利活動促進のための中核機能をもつ拠点施設として「宮城県民間非営利活動プラザ」(みやぎNPOプラザ)を開設した。受付・相談コーナーをはじめ、簡単な打ち合わせに利用できる交流サロン、コピー機などを有する共同作業室、ロッカールーム、研修室、NPOルーム(貸事務室)などが設けられている。
 県とみやぎNPOプラザを協働して運営するのは、「NPO法人シニアのための市民ネットワーク仙台」(シニアネット仙台)である。NPOプラザの運営に関する企画提案コンペで選ばれた。
 シニアネット仙台は、窓口対応をはじめ、会議室の運用管理などの基本的な管理業務を県と協力して担当するほか、NPOや市民の交流の場となるような企画・演出に当たっているが、他方、事務室には県職員7名が勤務(うち1名はNPO活動促進室兼務)し、プラザの運営事業やNPO法施行関連事務、NPO活動促進事業などに関する事務を行っている。
 みやぎNPOプラザは、(1)高度・専門サービス機能として、インターネットによる情報提供、福祉やコミュニティビジネス等に関する調査研究、(2)参加・創造・ふれあい機能として、インキュベート(育成)機能を持ち合わせた「NPOルーム」の設置(大、中、小合わせて10の事務ブース、現在10団体が利用)、(3)県事業の実施として、助成金を出すための企画コンペ、NPOフォーラム等、という3つの機能を持っている。
 また、インターネットを通じた情報提供では、現在、市民活動やボランティア活動の情報誌「社の伝書板ゆるる」を編集するNPO法人「杜の伝言板ゆるる」に委託して行っている。情報誌の作成で培ったNPOとしてのノウハウや人的ネットワークを活かした、きめの細かい対応が評価されている。
 
■NPO推進事業発注ガイドライン
 県は、NPOへの業務委託を推進しているが、業務委託の制度上の問題等からなかなかNPOへの委託が進まないため、総務部行政管理課が主体となり、庁内でワーキンググループを組織して、NPOへの業務委託を推進するための「NPO推進事業発注ガイドライン」を平成13年3月に策定した。
 ガイドラインでは、本来事業(当該NPOの本来の社会的・公益的な目的を実現するための事業)と収益事業(その収益を本来事業の資金に充当することを目的とする事業)の2つに分け、収益事業の場合は、一般企業と同様な発注制度により取り扱うが、本来事業では、多くのNPOが、とりわけ委託事業に関していまだ十分な実績をもたないということを考慮し、優遇策が講じられている。
 NPO推進事業の発注については、NPO活動促進庁内連絡調整会議が各部局から提出された要望書に基づいて選定する。事前にNPOから業務企画提案書等の提出を受け、業務内容等に応じて次の方法により発注する仕組みになっている。
(1)業務内容からNPO間の価格競争が可能な場合(サービスの提供等)
 事業内容に関する基本仕様を示して公募し、提出された業務執行計画書により施行可能なNPOを選考し、見積り合わせにより決定する。
(2)業務内容から特定1団体を選定する必要がある場合(施策や事業の立案、実施等)
 業務企画提案書を広く公募し、プロポーザル方式により選定する。選定に当たっては、第三者を加えた審査機関を設置するなど透明性の確保に配慮する。
(3)当該業務を履行できるNPOが特定1団体に限られている場合
 事業内容に関する基本仕様を示して企画提案書の提出を求め、施行能力等について十分審査する。なお、実施可能なNPOは特定1団体であることを明確にする。
 また、NPOに対して、次のような優遇策も設けている。
(1)契約保証金の免除
 500万円未満のNPO推進事業の契約については、契約保証金を免除できる。
(2)前金払制度、概算払制度の活用の推進
 円滑な業務の履行を確保できるよう、前金払制度(債務額が確定している事業)、概算払制度(債務額が確定していない事業)の活用を図る。
 NPO推進事業発注ガイドラインは平成13年度に導入され、初年度は4事業がNPO推進事業として選定された(平成14年度は16事業)。企画部情報政策課が、まちづくり活動をしている県民を対象に、NPO等によるホームページ作成講習会を実施したのをはじめ、環境生活部、産業経済部、土木部、教育庁などがNPOに事業を発注している。
 
NPO推進事業の選定基準
1 対象領域
 NPO推進事業として選考の対象とするのは、特定非営利活動促進法の別表に定める活動に該当するものとする。
(1)保健、医療又は福祉の増進を図る活動
(2)社会教育の推進を図る活動
(3)まちづくりの推進を図る活動
(4)文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
(5)環境の保全を図る活動
(6)災害救援活動
(7)地域安全活動
(8)人権の擁護又は平和の推進を図る活動
(9)国際協力の活動
(10)男女協働参画社会の形成の促進を図る活動
(11)子供の健全育成を図る活動
(12)前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言若しくは援助の活動
 
2 選定基準
 次の要素を総合的に勘案し、NPOの特質である自主性・個別性・先駆性が必要とされ、特にNPOが実施することが適切であると認められた事業を選定する。
(1)地域に根ざした活動が必要な事業
(2)コミュニティビジネスの展開や地域の雇用創出等の効果が期待できる事業
(3)NPO支援・促進のための象徴的・モデル的に実施することが望ましいと認められる事業
 
NPOとの協働事業調査の概要
 宮城県では、さらなるNPOとの協働事業の推進を目的として、平成14年3月中旬に、総務部、企画部、環境生活部、保健福祉部などの各課・室を対象に、「民間非営利団体(NPO)との協働実態及び意向調査」を実施した。(調査におけるNPOの範囲は、NPO法人と公益的な社会貢献活動を行っている市民活動団体・ボランティア団体まで含むとした。)
 その結果、平成11年度から13年度にかけてのNPOへの業務委託実績については、全体の21.3%の課・室があると答えた。また、どのような効果を期待しているかという問いには「業務委託実績がある」と答えた課・室の70%が「市民ニーズにより合ったきめの細かいサービスが提供できる」とした。以下、「行政だけではできないサービスがある」(45%)、「費用が比較的安価にできる」(30%)と続いた。NPOに発注した際に生じた問題点を問う質問では、「事務処理能力」(35%)、「事業遂行能力」(30%)が指摘されたものの、「意志疎通を図るのに苦労した」は0%であった。
 また、業務委託実績については、ないと答えた課・室は78.8%で、このうちの14.9%が「平成14年度以降、NPOへの業務委託を検討している」が、大多数の85.1%は「今後も予定はない」としている。業務委託を行っていない理由としては、「委託が可能な事務事業を所管していない」(62.7%)が最も多く、以下「業務委託可能なNPOを知らない」(31.3%)、「実績のある公益法人や社会福祉法人、関係団体が存在する」(19.4%)と続いた。
 なお、業務委託を除くNPOとの協働(施策の形成過程や結果の評価においてNPOの意見を聞く、あるいは審議会へのNPOの参加やNPOとの協働事業の実施など)については、「行っている」が13.8%で、「行っていない」が85.1%となっている。
 
3. 課題と今後の展望
■NPOとの協働を通じて、課題が浮き彫りに
 NPOプラザが宮城県とNPOとのパートナーシップ運営という具体的な協働モデルを実践するなかで、これまで隠れて見えなかった課題として、(1)「違い」を理解し合うこと、(2)すべてをNPOに委託してしまうと逆に接点がなくなってしまうおそれなどが明らかになった。
 また、県事業委託では、県の大半の課・室は委託可能な事務事業を所管していないと考えているか、あるいは委託可能なNPOを知らないまま、現状のままで業務を発注している。NPO推進事業でNPOに優遇策を講じているが、なぜNPOのみが優遇されるのか、といった問題も生じてきている。
 
■職員の意識変化を期待
 パートナーシップについては、県もまだ着手したばかりと考えている。議論しながらNPOを理解し事業を進めている現状では、時間がかかって効率は良くないが、NPOとともに県の各部に出向いて、県では職員にNPOについて学んでもらおうという事業をNPOプラザが立ち上げている。実際にNPOスタッフと接点をもつことで、職員のNPOに対する意識が変化しており、県では職員の意識の変化によりNPOとの協働事業が増えていくことを望んでいる。
 
シニアネット仙台
 シニアネット仙台は、「高齢化」をテーマに活動するNPOで、平成11年には、シニアセンター「サロンわい・わい一番町」を開設し、全国から注目を集めている。
 宮城県は、シニアネット仙台がシニアセンターの運営等を通じて蓄積したノウハウやネットワークを活かすことでで、プラザが多くのNPO関係者や市民に活用される施設になることを期待している。







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