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■代表者に訊く
竹内 實さん
●やすづか自由学園代表
●団体の特徴
 やすづか自由学園では「自然文化」「自学自習」「個性尊重」「社会生活」の4つの柱からなる全人格的教育を理念としています。
 「自然文化教育」とは豊かな自然や地域社会と一体となった文化的実践の教育で、自分たちが食べて生きるために稲を作ったり、畑を耕したり、鶏を飼ったりしたりする中山間地の自然と農業文化の中で、教科書では得られない「生きた学力」「役に立つ知恵」を身につけます。
 自分探しとしての「学び」を目標とするのが「自学自習教育」です。自分から課題を発見し、根気良く探求していく活動をしながら、興味関心に留まらないライフワークとしての「学び」の楽しさを知るほか、自力で問題解決する意欲と態度を身につけます。
 「個性尊重教育」とは一人ひとりの意思と個性を尊重することです。「一人ひとり違っていることが尊い」を人間観の基本にして、かけがえのない存在としての人間の意思・気持ちを大切に、文化、科学、芸術などに没頭しつつ「学び」の楽しさを味わっていきます。
 最後に無学年チームによる活動を通じて社会性を育てるのが「社会生活教育」です。縦社会の人間関係の中で助け合い、いたわり合う心情を深めていきます。また地域社会の人々との交流を通じて、より豊かな人間関係の体験をして社会人としての自覚を身につけます。
 これらの教育理念に基づいて、子供たちには「自立自歩」「自尊互尊」「報恩感謝」を持った人間に育ってほしいという願いを込めて活動に取り組んでいます。
 「自立自歩」とは、どんな苦しい状況でも、どんなに厳しい環境でも、負けずにたくましく生き続けるということ。自分の意思と目標をしっかりと持ち、自分の足で立って、自分の道を歩いて行けることを目指しています。
 「自尊互尊」とは、かけがえのない存在としての自分自身を大切にしてほしい。また、共に生きている仲間の存在にも、同じ人間への敬意と愛情を持ってほしい。お互いを認め、支えあう人間関係作りを目指しています。
 さらに、「報恩感謝」とは、自分は一人で生きているのではない。親や家族、師、地域の人々、支援くださった方々、さらには自然やすべての生物によって生かされていることに感謝し、それに報いる心をもつことを目指しています。このような人づくりに励んでいる場所が「やすづか自由学園」です。
●卒設の基準
 基本的には入るのも出て行くのも自由です。いたければ中学3年生の終りまではいられます。途中で地域の学校に通いたくなった時は籍を移すため里親を紹介します。本人が自分の学校へ戻りたいという気持ちになったら、親と本人とスタッフで話し合って決めます。
●年代別目標
 [10代]一言で言えば「元気になる」ということ。極言すれば自分らしさを取り戻すことです。[20・30代]受け入れていません。
●施設における自立の定義
・掃除、洗濯など自分のことは自分ですること。
・親元を離れた生活を通して将来は自分で自立しなければならないことに気付くこと。
・共同生活を通して良い人間関係を築き、その大切さに気付くこと。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 修学した後ほとんどの子供が高校に進学しています。時々その修学生(卒業生)とも連絡を取り、励ましています。
●在籍生のアルバイトの可否 その状況と支援体制
 アルバイトは禁止しています。
●作業(有償/無償)の有無 その内容と状況
 午後の活動の時間に労作(=作業)の時間があります。学園外に出て行う作業はありません。労作は自分たちの生活の場である学園をみんなで守るという意味で、自分たちのできる範囲で全員が関わっています。地域の道路の美化活動などもやっています。
●教科学習の必要性とサポート体制
 毎週月曜日の朝に一週間の予定を立てます。ただしやりたくないときは自分の好きなことをするのも可能です。午前中は学習の時間となっていて、国語、社会、数学、理科、英語が選択できます。カウンセリング室も開いています。自分なりの興味を持って自分なりのやり方で学ぶ自学自習を基本的に支援しています。教師は生徒と一対一の関係で関わります。
●在籍生の心理的サポート体制
 常に一人に対しスタッフの誰かがついているので、生徒の状況は良く見える体制になっています。日常の活動や学習の時間の中での触れ合いを通して、自然に生徒の悩みや問題の相談に気軽に乗っています。
●外部医療機関との連携
 今までに外部医療機関との連携が必要だったケースはありません。しかし、週に4回心理カウンセラーに来てもらい、相談を進めてもらっています。日頃、子供たちとスタッフとは密接なコンタクトをとりながら、子供たちの「心の安定」を図っています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 会報を年3回発行し、学園の様子を伝えています。寮閉鎖(休み)を各学期ごとに実施し、その期間中の家庭での様子を聞いたり、学園での子供の活動ぶりを分析しています。そして、常に親に子供の変化の様子、成長の姿を見てもらっています。また、寮生活を知ってもらうため、保護者にも寮に宿泊してもらったりもしています。
※原籍校との連携・・・毎月末に生徒の出席状況と学習や活動の様子を原籍校に報告し、校長先生や担任の先生のこ意見、ご指導を得るようにしています。
 
◆スタッフに訊く・・・1
大塚 啓二さん
●39歳 男性 正規スタッフ 勤続年数7年
●施設と関わるようになった理由
 亡くなられた初代学園長が紹介されていた開学の記事を読んで応募しました。いじめやひきこもりに悩む子供たちに関わりたかったからです。また、中山間地農村での様々な体験活動を通じた交流にも魅力を感じました。
 丁度その頃に、自分自身も自分探しの最中でした。そういう所ならば、自分も子供たちと共に成長していけるのではないかと思いここに来ました。
●施設について
 廃校利用と聞いて、古めかしい木造校舎のイメージを持ってやって来ましたが、まだ築後12年しか経っていない鉄筋コンクリートのきれいな校舎でしたので、イメージとは全然違いました。
 自然に囲まれた3階建ての校舎と体育館を少人数で存分に活用しており、大変恵まれた教育環境にあります。その中で、子供たちは「ゆったりと大らかにやさしく」「自尊互尊」をモットーに、自分作りに励んでいます。
●在籍生の変化に気付くとき
 生徒は入学したときは自分のことで精一杯です。人のことまで気が回らない。また、距離の取り方も分からない。特に女の子はべったりし過ぎたりします。それが上手に距離が取れるようになったときに、変わったなと感じます。それから、人の輪の中に入れるようになったときもそう思います。
●在籍生との関わりで注意している点
 カウンセリング的対応を心がけています。その子どもをそのまま、まず受け止めてあげるようにしています。その上で、その子供の言動のわけを聞くように努めています。それから、短所や欠点を指摘しないで、その子の良いところを見てあげるようにして、その良いところが伸びるように言葉をかけています。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 小さなことでも、子供の変化に気づいたときや、思いがけず子供からちょっとした労わりの言葉をかけてもらったときですね。修学式(卒業式)で、子供たちを見送るときも非常に嬉しいです。苦労が多ければ多いほどジーンときます。子供から電話などが修学後にあって、自由学園がその子にとって第二の故郷になっていると感じるときなども非常に喜びを感じます。
●辛いと感じるとき
 子供の気持ちが分からないときは辛いですね。以前は私も子供から愛されたいと思っていました。今では兎に角、スタッフとしてやるべきことをやり、言うべきことを言っていく姿勢を大事にしています。子供が好いてくれるかどうかは気にならなくなりました。子供がスタッフの誰か一人に自分の気持ちを打ち明けられるようになればそれでいいと思っています。
●施設での自分のポジション(役割)
 校務主任です。学園長の指示により、学園運営の仕事に携わっています。子供たちの指導、管理をはじめ、行事やスケジュール作り、スタッフ間の調整、地域とのコンタクト作りなどが仕事です。
●施設の今後について
 経営面で、社会福祉協議会の支援がないと存続できないのですが、今後は町村合併などがあっても生き残れるように経営基盤を強化できたらと思います。つまり、在校生をもっと増やすにはどうすればいいかを考えています。
●代表・その他のスタッフについて
 今の学園長はこの町の出身で、ずっと公教育に携わってきた方です。退官後はボランティアでこの施設に関わっていました。ですから、この施設のことを良くご存知で、地元の人や地域との関係も良いと思います。きさくで、とても話しやすい方です。若いスタッフも皆、子供が大好きで、全身全霊仕事に打ち込んでいます。







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